暗闇からの脱出
光明
 
 私は20代の中頃に結婚して、4人の子宝に恵まれました。
 結婚当初は、主人とも仲良く暮らしていましたが、
 いつの頃からか、主人からDVを受けるようになりました。

 10年過ぎたころには、日増しに激しくなってきました。
 ある時は、頭骸骨が折れんばかりに蹴られたことがありました。
 それをきっかけに、逃げるように3歳になる末っ子だけを連れて、
 いったん実家に帰りました。
 すぐに戻るつもりだったのですが、そこから上の3人の息子たちと
 6年間も離れて暮らすことになりました。

 3人の子供たちも主人から暴力を受けたり、
 まともに食事をさせてもらえなかったりしていたので、
 主人のいない時を見計らい夕食を作って持って行ったり、
 中学に進級した子供のお弁当を学校に運んだりしていました。

 初めは、主人が憎くてたまらず、よその幸せそうな家族を見ては、
 なぜ自分だけこんな苦しい思いをしなければならないのかと悲しんでばかりいました。
 離婚の調停もしましたが、なかなか話は進みません。
 もう自分の力ではどうしようもないと大きな壁にぶち当たった思いでした。
 何とか助けて頂きたい思いで道場に通い、必死に観音様におすがりしていましたが、
 その頃の私は、本当に自分のことばかり祈願していました。

 光海先生からは、私の心が変わらない限り事態は一切進展しないと言われました。
 自分の気持ちをなかなか変えることはできなかったのですが、
 私以上に苦しんでいるのは、子供たちだということに次第に気づくようになっていきました。
 子供たちの学校の先生方や周りの方々にもいろいろと助けて頂いて、
 その真心に心から感謝できるようになりました。

 そして、主人も苦しんでいるのだということがやっと分かってきたのでした。
 自分も主人に対してひどいことをしてきたのだと思うと、
 涙が止まらないほど申し訳ない気持ちがわいてきたりして、
 少しずつ自分の心が変わっていくのを感じました。

 そんなある日、光海先生から『在家僧となって修行する覚悟はあるか』と聞かれました。
 以前からずっと懇願していて、やっと観音様のお許しが頂けたのだと思いました。
 苦しかった気持ちは楽になり、道場にお参りに行き、
 観音様の御教えに触れる事が本当に有難いと心の底から思えるようになってきました。
 すると不思議なことですが身の回りの環境が少しずつ変わってきたのです。

 体調も段々と良くなり、何よりも3人の息子たちが、自分たちの意志で主人の元を離れ、
 私のところへ帰ってきたいと言って戻ってきてくれたのでした。
 4人の息子たちが一緒になって寝ている姿を見て、
 親の身勝手で兄弟離ればなれにさせてしまった申し訳なさと、
 再び4人が一緒に暮らせるようになった喜びで涙が止まりませんでした。

 苦しみから逃れたい思いで必死に祈願していましたが、
 観音様は、私にいろいろな体験を通じて何事に対しても
 感謝する心を教えて下さったのだと思いました。
 上の息子たちも成人して、家業を手伝ってくれるようになり、
 お店も繁盛してきました。

 今は、一緒に道場に通って観音様の御教えにしたがった生活をして、
 日々に感謝いっぱいに過ごさせていただいています。



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