生死を分けた閃き
雨の路面

 私は二十歳過ぎに観音様の御教えに巡り合い、
 以来観音様を信じて日々を過ごしておりました。

 数年後、結婚してお腹に子供を授かり、
 もうすぐ臨月に入ろうかという10月中旬の夕方でした。
 その日、用事を済ませ、知人の女性を車の後部座席に乗せ、
 近くの駅に向かって運転しているときのことです。

 走ってしばらくすると、雪混じりの雨が降りはじめました。
 片側一車線の田舎道で、少し混み始めた対向車線で、右折ランプを点けて、
 脇道に入ろうとしている車を目にし、先に通そうと速度を落としました。
 その対向車が私の車の前を横切ろうとしたとき、ふと気配を感じ、
 バックミラーを見ると、だいぶ離れて走っていた後続車が
 まったくスピードを落とさず迫ってきたのです。
 後部座席の女性に「ぶつかる!!」と身構えるように注意して、
 私はブレーキペダルを思いっきり踏みました。

 次の瞬間、「グシャ」という音と同時に体に衝撃が伝わってきました。
 ただ、車はほとんど前に動くことなく、前方の車にぶつかることはありませんでした。
 体に感じた衝撃はそれほど大きなものでなかったので、ほっとして車の外に出てみると、
 追突してきた後続車のバンのフロントと、私の車のトランクが大破していて、
 この事故が相当大きかったことを知りました。
 一つ間違えば、前の車との間に挟まれて大事故になっていたのです。

 今思うと本当に不思議なのは、後ろから車が迫ってくるわずか数秒の出来事が、
 バックミラーの中でまるでスローモーションのようにゆっくり見え、
 それで,追突されることが察知でき、しっかりブレーキを踏まねばと
 咄嗟に判断できたことです。
 そのおかげで、まったく怪我することなく、お腹の子供にも何の影響もなく済みました。

 これは、観音様のご加護あればこそと心から感謝しております。


TOP