一実の道

 第五十一之御諭し

 汝は奈良に遊びしことありや。
 されば、大佛像をば見物致せしであろう。
 汝、其の折、汝が肉眼に映りし佛像と、
 只今汝が思ひみる佛像との其の差、如何。
 されば、汝に理解し難き事もなかるべし。

 大佛が其の形、他に類無く大なる理由、如何。
 此の像にこもれる真意、汝悟らるるかや。
 神力無量なるを示しあり。

 神力、神通力、即ち佛力とは、人智をもちて尚測り難くして、
 其の威力の前に、人力如何に微少なるかを
 赤子に幼子に、絵本にして諭し示すが如く、
 此の佛像にて、汝等が知恵にて判別致さるる範囲に於いて、
 示せしものなり。

 されば又、千変万化の消長あり。
 小なること粟粒の如く、大なること此の大佛の如き、諸々の形現はしあるは、
 人意識せずして、此れ彫り作るとも、此れ皆、天意の然らしむるところ。
 其れ、佛が威力、如何なる微細のものにもわたり、天地宇宙に充満なすなり。

 天に口無し、人をして言はしむるのたとへ、此れなり。
 天に双手(もろて)無し、人をして現はさしむるなり。

 無為に見過ごせし諸々の物体、斯く悟り得て眺める時、
 神霊自らこもれるを知るべし。
 されば如何に拙き虫けらの業にても、一度佛意の象徴と現はるる時、
 敬虔自ら頭を下ぐべし。
 此れ、其の物体そのもの何物にも非るとも、汝自身の内にこもれる佛情、
 自ら呼び覚まするものなり。
 此れ、眠れる己が本来の魂、呼び覚まさんの一つの術なり。
 されば像法時代の人情、此れにて悟られしなり。

 現世人心を眺むる時、此の像法時代の人身を顧みて、
 其の素直さに見比べし時、現世悪世末法とは頷かるるべし。

 されば 徒なる外道の論議捨て去りて、
 先ず心、直(なほ)く持ち、
 相にあらはるる陰の佛意を悟りとるべし。
 此れ、佛道への曙光なり。

 眼に具はりし教養は、正しき分別己れに諭し、
 現世浄化に貢献いたすべく、
 己が身に具はりし功徳と知るべし。

 合掌

 一実の道目次


TOP