一実の道

 第三十八之御諭し

 汝、一日に夜昼、暗黒と陽日の明暗二様のあるは、
 如何なる悟りなるかや。
 「暗」あればこそ、「明」有り難きなり。
 「明」感謝致さんが為には「暗」いとも尊し。

 日々に指導受け、身の毛もよだつ悪因縁の諸々、
 此れ佛の慈悲なりと、感謝感謝の中に大慈大悲を悟るところ、
 汝は展かれゆくなり。
 此れ暗中に「明」を得るなり。

 此の諸々の悪因縁無く、知らず悟らずして、
 日々を意の侭に五欲煩悩の虜となりて、おくりゆきなば、
 此れ暗黒の世に、まっしぐらに落つるのみなれども、
 暗黒を知らざる身には、己れ為すべき業も悟らず、
 如何なるものの手先に踊らされて、
 只一瞬の照明に照らされ居るを知らず、
 舞台にて跳ね踊る役者、一歩足をば踏み外すならば、
 奈落の底、暗渠(あんきょ)の口を開きて、
 待ち居る定めを知らず。

 此れ明中に「暗」あり。
 法華経行者、暗中に投げ込まれ、
 永遠不滅の光の綱、 
 しっかと握りて引き上げらるるは、御佛なり。
 身は暗夜地獄の中に転々と蝕まれて、
 此の一筋の光明の綱、
 如何に得難く尊くも亦、有り難きものなるかを
 衷心より悟りて、随喜の涙、流れ出づるところ
 此処、陽日の下光り輝く寂光の世なり。

 されば、苦難は救済の一歩なりと悟るべし。
 進めよ、進め。
 励めよ、励めよ。

 合掌

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