一実の道

 第三十二之御諭し

 成佛は保つにあるなり。
 己が心の苦悩許され、此の世浄土と化さしめられしは、
 何方様の御慈悲なるかや。
 苦悩の無くば精進怠るとは、
 其の心根、己に倦怠の悪魔のものなり。
 成佛とは申されぬなり。

 成佛とは、無垢清浄の心、常に持ち続けゆくにあるなり。
 己が心に苦悩の無く、常に空となり、其の中には
 只精進の努力、慈悲の心のみ存在致すべきなり。
 精進を忘れて何の成佛と申さるるべきかや。

 只一心に佛に縋り、命の続く限り肉体の没する日まで、
 一筋に粉骨砕心勤め励むべきこそ成佛を保つと申すなり。
 如何に此の世の浄土と化すも 
 倦怠の悪魔に魅入られしならば、哀れ其の身は地獄に落ちゆく、
 佛と雖(いえど)も。
 日々刻々精進の無き佛は、御一方もいらせられぬぞや。
 汝が此の日頃、よくよく反省致しみるべし。

 己が心の欲するままに、否、倦怠の悪魔が命ずるままに
 己が心身を倦怠の悪魔に捧げおるには非ざるかや。
 汝、日々精進無き者に如何に正しき神佛の
 勿体無き慈悲の手配、尊き指導のあるべきかや。

 心に緩みの生じなば、
 成佛の綱、取り落とせしと悟りゆくべし。
 心ゆるめるでないぞや。ゆるめるでないぞや。
 心の綱はしっかと片方、大慈大悲の御佛握り給ふなるぞや。
 此の綱、手繰りたぐり寄せられて、御佛救い給ふなるぞや。

 されど如何に御佛、御力入れらるるも
 汝の縋りおらねば、如何にせん。
 其の御甲斐もあらせられぬなり。
 愚かなリ。愚かなリ。
 斯くも尊き救いの御綱、自ら離し倦怠の淵に陥るとは愚かなり。

 今にして反省致し、かへり参らずば、
 如何に悔ゆるとも引き返す道は無きぞや。
 折角賜し成佛の道、努々(ゆめゆめ)怠りたがえるでないぞや。

 己が心に誓ひし事は、夢背くべからず。
 此れ精進への第一歩なり。

 合掌

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