「お前は余計なことを知りすぎた」

そんな一言で養父に刃を向けられた黒い青年。

 

「ふん、失敗作か・・・」

無理やり連れ去られ、体を弄り倒された上に侮蔑の視線と共に投げ捨てられた白い青年。

 

そんな二人が出会ったのは、黒でも白でもない・・・。

緋が支配する世界だった・・・。

 

 

狂った歯車が動き出す。

 





死者の徘徊する世界。

そこで金の瞳と銀の瞳が交差する。

 

互いの瞳の中に宿る、孤独・虚無・そして強い復讐心を感じ取った二人は、フッと分かり合った笑みを浮かべる。

「始めまして、私はエデュアルド・ヒンギス。」

「ああ・・・。私は、カート・リンドン・・・」

『だったもの』

二人の言葉が重なる。

 

「この世界に送り込まれたということは、私達は死んだもの、もしくは犯罪者として指名手配されているだろう。」

「それについては、どうでもいいのです。名前等には未練などありませんから。それよりも、今生きているということのほうが重要です。」

「同感だ」

きっぱりと言い切るエデュアルドにカートも頷く。

その顔には喜んでいる表情以外何もなく、本当に未練がないことが伺われる。

「これで、この胸に燻る復讐心を消化することができる」

くっ、と口元を歪めて笑うカート。

それに笑みを浮かべたエデュアルドは、カートを抱きしめる。

「今は、復讐をする為だけに生きましょう・・・。しかし、終えた後は別の人間として生きれる事を願って名前を付けませんか?」

貴方に付けて欲しいと、耳元で囁く。

「名は縛るもの。・・・私でいいのか?」

「ええ、貴方だからこそ付けてほしいのです。」

「・・・わかった。では、私の名前はお前がつけろ」

「お許しがいただけたのなら、勿論」

二人は瞳を合わせる。

一瞬の沈黙の後、クスクスと笑いあう。

そして、相手の耳元で囁いた。

「いつか、普通の人生を送る時には、この名前で・・・」

「ああ・・」

緋い月の元で見つめい誓うその姿は、妖しくも神聖な雰囲気をかもし出していた。

 

 

 

「では、私は独自で調査します」

しばらく見詰め合った二人は、体を離すとそれまでの雰囲気をがらりと変えて話し合う。

「私はブルロンをまとめよう。」

「ご無事で」

「お前もな」

 

来るべき日に備えて、それぞれの道を歩き出した二人。

 

再び道が交わるのはこの数年後・・・。

ライデス達が新大陸にやってきた時である。