オンリーワンを!
『かなくら山報』第91号 2000/09/08
「私たちがこれから目指す人間像は、従来のようにナンバーワン
ではなく、オンリーワンである。」
このことばを聞いた時、私ははっとしました。8月18日日、加美町
交流会館での「21世紀へのまちづくり講演会」でのことです。講師は、
吉本興業株式会社常務取締役の木村政雄さんという方でした。演題
は「元気なまちづくりは、人づくりから」ということで、吉本興業のタレ
ントの例を出しながら、軽妙な語り口の中にきらりと光ることばがあ
り、笑いと驚きの連続でした。
「第3次加美町総合計画づくりに向けて」という副題を持つこの講
演会に、吉本興業の方が来て講演をされるのを知ったのは7月下旬
のこと。8月18日の夜ということを知らされて、金蔵寺の盆・施餓鬼の
行事が一段落するする日でもあるので、まあ、お笑いもいいだろう、
というような野次馬根性丸出しで参加した私でしたが、終始考えさせ
られることが多い講演会でした。
何事においても、ナンバーワンを目指すなら必ず競争が起こり、
一人を除いて全員が希望を達成できません。
ところが、オンリーワンを目指すなら、それぞれが個性を持った
一個の人間として認められるわけですから、全ての人に必ず希望が
あるわけです。
どちらが、人権を尊重する人間像であるかは明らかですね。
ところで、釈尊が、この世に生を受けられたとき、六歩半お歩きに
なって、右手を上げて天を指さし、左手を下ろして地を指して、「天上
天下唯我独尊」(てんじょうてんが、ゆいがどくそん」とお叫びになった
という話をご存じの方も多いと思います。
このことばを、「この世の中で自分だけが尊く、また、自分ほどえら
いものはいない。」との独りよがりのことばとして解釈をする人が今で
もいますが、その誤った解釈は、ナンバーワンを目指す考え方からく
るのではないか、とも思います。
釈尊のことばは、「天上天下、ただ我一人にして尊い」、すなわち、
全宇宙のいのちと恵みを一身に受けて、一人の人間として生まれて
きた素晴らしさを、尊さをお叫びになったことを意味します。このことば
は、釈尊はオンリーワンを目指されたのだ、と考えるとより理解しやす
いのではないでしょうか。
この夏、ある酒の席で、私の同級生の消息をしきりに聞いてきた人
がありました。そして、その話の最後に、「その中で、一番の出世頭は
誰ですか。」と聞かれましたので、私は、木村さんの講演を持ち出して、
自分がオンリーワンになることの大切さ、ある一人だけが浮かばれる
のではなく、一人一人が浮かばれる話をしようといったものです。
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