塔婆は故人への便り
『かなくら山報』第57号 1996/06/15
お墓には、板塔婆や角塔婆がたくさん建っていますが、これは亡くなっ
た人を供養する心をこめた便りと言えるのではないでしょうか。
塔婆のことを卒塔婆(そとうば)とも言うように、これは、インドの「ストゥー
パ」という音を漢字にあてたもので、塔と略されています。
お釈迦さまがお亡くなりになった時、火葬にされた遺骨(仏舎利)は当時
勢力のあった8つの王国に分骨され、それぞれの王は自分の王国に仏舎
利塔を建てて盛大に供養したといわれます。また、お釈迦さまが入滅され
て200年後、インド全土を統一したアショーカ王は、8つの塔の仏舎利を
出して、八万四千の塔をインド全土に建てて仏教を広めたと伝えられま
す。
これが次第に宇宙を構成する5つの要素(五大)、すなわち、地(固い性
質)・水(湿った性質)・火(熱の性質)・風(動の性質)・空(それらを互いに
存在させているもの)をあらわす梵字を書き、それに相応する方・円・三角
・半月・宝珠の五輪を重ねた五輪塔に発展しました。
この五輪塔が、石造りから次第に角塔婆、板塔婆となり、現在では、
それに故人の戒名や経文を書いて追善供養(ついぜんくよう=善事を修
し、供養を施して死者の冥福を祈ること)のためにお墓に建てるようになり
ました。
「ご先祖さま、あなたの子孫は達者に暮らしていますよ。おかげさまで供
養させていただくことができました。ありがとうございました。」
ご先祖さまへ心をこめた便りを出してあげてください。
|