敬弔の文

  教界の重鎮、修験の長老、金蔵寺名誉住職傳戒正大先達大僧正學明舜雄大和尚
去る七月二十九日突如化を他界に遷さる。驚愕措を失ひ哀悼曷ぞ任へん。大和尚資性
聡叡、豪快にして恬淡而も情誼に厚く東西の智識に就て最極秘義の相傳を受け事教二相
に通じて其の蘊奥を極め、特に愛宗護法の念に充ち名利を求めず栄達を欲せず己を虚し
うして人を侍つこと重厚高潔清廉夙に高僧碩徳の風格を備う。
 当山を薫ぜしより寺門興隆、檀信徒教化殊に密門験門の行者に傳授・教養に勗め常に
熱誠事に當り何日も我ら愚弟に「管長・門跡に成ろうと想うな、管長・門跡に教へる者に
成れ」と学ぶことの楽しさと、法を傳へることの大切さを教へて下さり口癖の様に「やれ
やれ何でもやってみろ勉強ややってみろ」と経験の場を與へて下さり「求むれば得ず求
むる無ければこれを得」と警め育て下さった恩情は実に宗内其の比を見ず。寔に密門の
法将、験門の頭領、一宗の依止師と謂べし。
 豈図らんや明燈忽ちに滅し舟筏俄に没せんとは、悲痛何物か之に如かん。嗚呼観行
瑜伽の蓮池は澄なり凝念名吟の淨窓は郎らかなり而かも大和尚其の人なし。
 仰願くは八葉蓮台の尊霊、更に慈愍の悲手を垂れて密教紹隆・祖徳宣揚の本誓を全
うし給わんことを。
 爰に百ヶ日の法会に列し恭しく敬弔の意を表す。
    平成十三年十一月四日
                 受法の門弟 二實塾塾頭宥範敬白