事の発端はあたしの好きな人が楽屋を訪れた事。
みんな帰る準備や。おのおののことをしていた。そんなときだった。

「やっほー。美貴たん帰ろー」
「あ、アヤッペごめん。この後仕事あるんだ」
「えー、そうなのー?じゃーほかの誰かと一緒に帰ろーっと………えっとー誰か居るかな」
松浦さんは藤本さんに断られて楽屋の中で人を探す。

「なっちと矢口は無理だぞ!今日は二人でデートだからな!」
「誰も二人には頼みませんー」
楽屋から出て行く二人の背中に松浦さんはあっかんべーってしてまた楽屋の中を眺める。

「あ、松浦。カオリも無理だよ。これからパラディノメのレコーディングだから」
飯田さんは安倍さんや矢口さんと違って丁寧に断ってから楽屋を出て行った。

「よっちゃんさん一緒に帰りません?」
「あ〜、ごめん。今日は梨華ちゃんと約束してんだわ。」
「よっすぃー、帰ろー」
「オッケー梨華ちゃん」
吉澤さんと石川さんが二人そろって楽屋を出て行く。


「あいぼんはー?」
「え?あ。あ、あの、さっきミニモニメンバーでどこか行っちゃいましたよ」
松浦さんにいきなり話しかけられてしどろもどろになりながら答える。

「じゃあ紺ちゃんとかまこちゃんとか新垣ちゃんは?」
「なんかさっきかぼちゃの話して、もうどこか行っちゃいました」

「じゃあ道重ちゃんとか田中ちゃんは?」
「さゆはいつも帰るの早いんですよ。れいなは多分あぁ!の仕事の何かだと思います。」

「ふぅーん……これから何か用事ある?」
「いえ、特に何も………」

「………じゃあ亀井ちゃんで良いや!!一緒に帰ろ!!」
「………へ?わ!私ですか?!」

手を繋いで………。


「………ねぇ、亀井ちゃんなんでそんなに離れて歩くの?」
「いえ、別に………」

一緒に帰ろうと言われて駅までの道を一緒に歩いていた。
でも隣を歩く松浦さんとの距離は2mぐらい離れたまま。
指摘されても答えられない。『好きな人だからなんとなく恥ずかしくて近寄れない』なんて。

「じゃあもっと近づこーっと」
「ええっ?!」
松浦さんは近づいてくるやいなやあたしの右手に腕を絡めてきた。
あの、近いんですけど………。

「ほーら。こうすれば暖かいよ」
いや、それは暖かいんですけど。その、なんか恥ずかしいって言うか………。

「亀井ちゃん顔赤いよ。大丈夫?」
「だ、大丈夫です………」

顔を覗き込まれてなんか余計に顔が熱くなる。
目の前に松浦さんの顔が来て、なんか小悪魔的な感じな松浦さん。
そんな子悪魔モードの松浦さんは駅まで来てもっと悪魔の言葉をささやいた。

「どうしよー。亀井ちゃんの家泊まろうかな。」
「ええっ?!」
「ダメ?」
う………そんな可愛い顔でこっちを見ないでください。
断れなくなるじゃないですか。と言うか確信犯?
「ダメじゃ、無いです。」
「やったー。じゃあ泊めて。」
急に泊めてと言い出す松浦さん。なんか嬉しい様な複雑な心境。

「じゃあ、どうぞ。散らかってますけど」
「おじゃましまーす。」

マンションの一室。
モーニング娘で活動し始める時に用意してもらったマンション。
部屋に入ってとりあえず上着を脱いだ。

「きれいにしてるね。」
「まぁ、はい………」

会話が続かなくて。何か喋ろうとする。
「あ、何か食べますか?」
「うん。食べる。」

二人とも晩御飯がまだだったので何かを作る事にした。
特にたいした物は作れなかったけど。
極普通にチキンライス。

「美味しいですか?」
「うん、おいしーよー」
松浦さんのお口にも合ったらしく良かったよかった。
あたしも自分で作った晩御飯を食べた。

「でねー。たんったらおかしいのー。トイレットペーパーが買えないんだよー。」

松浦さんと言う人はどこかドライと言うか誰にでも同じ付き合いをする人に見える。
特定の付き合ってる人がいたとしてもキットほかの人への態度は変わったりしないように見える。
あたしは松浦さんのことは好きだ。でも松浦さんはあたしの事をなんとも思ってないはず。
たとえ松浦さんに現在特定の人がいないとしても恋人でもないあたしの家にいきなり泊まりに来るのは、やっぱりドライに感じた。

「もうねよっか?明日もハローのリハがあるし。」
「あ、そうですね。」
気が付くと結構遅い時間。
松浦さんが言ったのでもうねる事にした。

「えっと。どこで寝ます?」
お客が来る用の布団はあいにく置いていなかった。
でも、そんなことを言う前に松浦さんは前から決めていたかのように。
「いっしょに寝よ!!」
って言った。

断れるわけも無かった。

ちょっと広めのシングルベッドに二人はちょっと狭めだった。
でも松浦さんは「暖かーい」とか言いながら抱きついてくる。

よくよく考えたらこんな子供っぽい松浦さんを見るのは初めてじゃないだろうか?
いつもはプロのアイドルとしてかっこいいイメージがあるけど。
普段はこんなに子供っぽいところもあるんだ。

「あれ?」

気が付くともう松浦さんはスースーと寝息を立てて眠っていた。
眠るの早っ。

はじめてみた寝顔を眺めてみる。
松浦さんがドライっぽいとは言ったけど。
それはあたしにだけって。自惚れてもいいのかな。

「松浦さん好きです。」

眠ってるのをいいことに告白してみた。
眠っているから聞こえないのは当たり前。

「おやすみなさい。」

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「えっりちゃん!!起きないと遅刻するぞーー」
「ふぁい?」

次の日の朝。
松浦さんがとまっていたことも忘れて爆睡。
思いっ切り肩を揺さぶられて起こされた。

「ほら。遅刻遅刻。」

時計を見ると本当に時間がヤバ目だったので朝食も食べずに松浦さんと駅まで急いだ。


「おはよーございまーす。」
「おはようございます」
スタジオについて。スタッフさんに挨拶しながら楽屋へ向かった。

その道のりで考えていたのは、
隣を歩く松浦さんのこと。

なんとなく気が付いた。
昨日まで「亀井ちゃん」だったのが朝になって「えりちゃん」と呼び方が変わっていた事。

昨日も寝る前に聞いた気がした。『あたしも好きだよ』って。

空耳かもしれないけど。
自惚れかも知れないけど。
でもちょっとくらい幸せな夢を見てもいいよね?

昨日腕を組んで歩いた。

いつか自分から、
腕を組むまで行かなくても。手を繋いで歩けるくらい。
そんな風に仲良くなりたい。

「おっす。まっつー。おはよー。」
「あぁー、ごっちーん。」

急に後ろから出てきた後藤さんと抱き合ってる松浦さん………。

「あ、亀井もおはよー。」

手を繋いで歩くには………。強力なライバルがいるみたいです。

でも負けません。

END









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リクエスト短編でした。
とーくに甘いシーンは無いですが。もともと絡みの少ないCPと言う事で
これぐらいで勘弁してください。m(_ _)m