初めてあの人を見た時、それは2年前の事だった
『愛という字を思い出す時』
ブラウン管を通してみる彼女の第一印象は『カワイイ』だった
憧れのあの人は、「モーニング娘。」でも「プッチモニ」でも大ブレイクし、学校でも話題の中心にいた
「ねぇ見た?昨日のMステ、「ちょこっとLOVE」一位になってたじゃん?」
「うん、見た、すごいよねぇ?あの三人あたしCD買ったよ〜ん」
「あたしだって買ったよ」
「愛も買ったの?じゃあこのクラスのほとんどが買ったんじゃん」
でも憧れだったそのひとへの思いはいつしか変わってしまった
憧れの「好き」じゃなくなった、でも恋愛で好きかどうかはその時は分からなかった

一年前に4期メンバー募集の番組がやっていた
あたしは応募しなかった、憧れのまま気持ちを置いておきたかった
でもあたしは合格者が四人出てその中の最年少「加護亜依」が、あたしより年下だった事と後藤さんが教育係に付く事にショックを受けた
あの年で受かるのならあたしでも受かったかもしれない
憧れが少し近づいた感じがした
次は応募しようと心に決めて近くの先生にボイストレーニングもしてもらって
体力もつけて応募までの期間を待った
でも3期メンバー募集から4期メンバー募集までの期間と比べると
5期メンバー募集は遅かった
でもやっとその時が来たと思って応募した
そしてあたしは最終審査に残る事が出来た

メイクをしてもらった後モニターでモーニング娘。が9人最後のLOVEマシーンを歌っているのを見た
もしかしたらあの中に入れるかもしれない
あたしの心は浮き足立っていた
大きな大画面が開いて、モーニング娘。と初対面した
「ザ☆ピース」の黄色い衣装に包まれた「ゴトウマキ」を初めてみた
その印象は「カワイイ」じゃなく「カッコイイ」だった
「小川麻琴」
「新垣里沙」
「高橋愛」
3人の名前が挙げられた
一瞬、失格者の名前を言ってるんじゃないかと「つんく♂」さんを疑った
でも憧れの人が拍手をしてくれて合格したとわかった
その後、赤点合格と言って「紺野あさ美」ちゃんも合格になった
これであたし達四人はモーニング娘。になった
憧れの人と同じに……

それからダンスレッスン、ボイストレーニングと覚える事はいっぱいあった
私達5期メンバーの初シングル「Mr.moonlight」に向けてそれらのレッスンもプロとして厳しくなってきた
そう、あれはあたしがダンスレッスン中にひどく怒られたときの事
あたしがレッスンが終わった後1人楽屋の隅で泣いていた時
「高橋、一緒に帰ろ」
と、後藤さんが声をかけてくれた
しゃくりあげてるあたしを家の近くまで送ってくれて
家の近くにあった公園で話していた
「気にしなくていい事はないけど、気にしすぎないほうがいいよ、
 まだ一ヶ月であたし達と同じ事やれっていわれても出来る訳ないし
 だからって甘えるのも駄目だけど」
その時の後藤さんの言葉はあたしを優しく包み込んでくれた
「今はただできる事を頑張るだけ、それだけで今あたし達がいるところまで来れる、ね、高橋」
泣いてるあたしをなぐさめてくれた後藤さん
その時に気づいた、これは恋だと
ずっと憧れだった人が今目の前にいて、その事がすごく嬉しかった
憧れの「好き」じゃなく恋愛としての「好き」
あたしはこの時からずっと後藤さんが好きなんだ
そして、ずっと告白も何もできずにいたあたしだけど転機はいきなり訪れたんだ……


LOVEマシーン外伝―高橋編・支配されない感情―





あたしはいつもと同じぐらいの時間
入り時間の40分ぐらい前に楽屋入りした
仕事が始まるまでの間に荷物整理をしていたら
何故か『おっとっと』が出てきた
「おはよ」
「おはよごっちん」
「ごっつぁん、おはよ」
『おっとっと』に気を取られていると後藤さんがやってきたので
「おはようございます後藤さん」
と、挨拶した
あたしは何か話すきっかけをと、さっきの『おっとっと』を持って後藤さんに話しかけた
「あの…後藤さん『おっとっと』いりませんか?」
「え…何で?」
「えっと、家から間違えて持ってきちゃって、じゃなくて気づいたら入ってて…えっとその…」
「もらって良いの?」
「はい!差し上げます」
「ありがとう、休憩時間にでも食べるよ」
後藤さんは笑ってそれをもらってくれた
笑った顔が見れて少しうれしかった

その日は、あたしが告白を決意した日だった
今の関係を壊したくない…今のままじゃ嫌だ
これまでずっとその2つの思いがあたしの中にはあった
それでもあたしはこのままの関係より一歩前進したかった
もしかしたら振られるかもしれないけど
今のままでいるよりは完全燃焼になる、そう思った

「あの後藤さん、よければ今日一緒に帰りませんか?」
「んぁ、良いよ別に、今日誰とも約束してないし」
「良いですか?じゃあ帰る準備をするのでちょっと待っててください」
すぐにOKの返事をもらえた、あたしはすぐに準備をした
「用意できた?じゃあ帰ろっか」
「はい」
前に二人で通った道をあたし達は歩いて行った

でも、告白を決意したものの、あたしは何も話せないでいた
駅も近くなってきて、“今日は諦めようか”と思ったその時
「高橋ってさぁ…」
後藤さんが話しかけてきた、あたしはそれに返事をする
「はい、なんですか?」
「あたしに気があるの?」
「え?」
後藤さんはあたしの心の中心、あたしの気持ちの確信をつく質問をした
まさか、今から告白しようって時に、本人の口から「あたしが好き?」って聞かれるとは思わない
すこし驚いたが、あたしは意を決して答えた
「ハイ…」
ただその時後藤さんの表情が変わった気がした
「じゃあ、あたしに抱かれたいとかも思うわけ?」
「え?」
「どうなの?」
その時少し後藤さんが恐く見えた
「あの…えっと」
「答えにくい?」
「あ…ハイ」
すると後藤さんはニっと微笑んで言った
「じゃあ…躰に聞いてみるよ」
「え、今なんて?」
すると腕をぐっと引っ張られ、うすぐらい裏路地に連れ込まれた
「あ…あの」
言葉になっていない言葉を口にしたときふいにキスをされた
「ん…ん…」
あたしは驚いて、一瞬後藤さんを突き飛ばそうとしたが
後藤さんにぎゅっと抱きしめられてそれを防がれた
「んんん……ん」
そして後藤さんはあたしの首筋の辺りを後ろに廻している手で撫でた
一瞬身体がビクッとなって次の瞬間、口の中に後藤さんの舌が入ってきた
口内を蠢いて舌をからませられる、そのはじめて味わった感触が気持ちよかったりして何もできずにいた
2里文の唾液が一気に口の中に流れ込んできて息苦しくなった
すると一度後藤さんは唇を離した
「ぷは…はぁ……はぁ…ごほっ…ごと…さん…何を…?」
聞いても後藤さんはただただ笑うだけで「だから、躰に聞いてるだけだよ」と言うと再びキスした
両手を後ろに廻され掴まれた、全然振りほどく事が出来ない
その後後藤さんは唇を離して今度は首筋にくちづけて舌をはわせてきた
「ん…あ………はぁ…」
つい気持ちよくて声が出てしまった、ただあたしはこんな無理矢理のような物は望んでいなかった
いつの間にかあたしは服の上から胸をを触られていた
だんだんと欲望と理性が葛藤を始める、このまま最後までと思う自分と
こんなのは嫌だと思う自分
「ん…いや……あぁ…」
そして段々と後藤さんの手が下のほうに伸びてきているのを感じた、
……こんなの嫌だ……
理性が欲望に勝った、あたしはこの状況を脱出しようと手に力をこめた
すると片手が掴まれている手から離れた
あたしはさっきよりも力をこめて後藤さんを突き飛ばした、正直……後藤さんが恐かった
「後藤さん…あたしが思っていた人と…全然違ったみたいです…今日はもう1人で帰ります!」
あたしは全速力で逃げた、時々後ろを振り返って後藤さんが追ってこないかを見ながら
駅に入った後すぐに切符を買い、丁度来ていた電車に飛び乗った
恐かった……
あたしは周りを見て後藤さんが同じ電車に乗っていないかを確認した
後藤さんらしき人はいなかったので安心した
でも、どうして後藤さん急に……
あたしは「ゴトウマキ」を理解できなくなっていた


ピンポーン
自宅に帰った後、家の呼び鈴がなった
あたしの家は事務所に用意してもらったマンションだ
この住所を知っている人は少ないはずだからまた勧誘かなんかだろうか?
あたしは覗き窓から外を見たが誰もいない

一応チェーンロックをかけて扉を開いた
ガン!
見るとドアの開いた隙間に靴が挟まっていた
『やっほ〜、高橋、何?チェーンなんか掛けちゃって、せっかく来たんだから中入れてよ』
あたしはブンブンと首を振った
『嫌ですよ!昨日あんな事しておいて!』
『あっそ、じゃあ仕方ない』
すると後藤さんはどこからか大バサミのような物を取り出してチェーンをちょん切った
『嘘……』
『あー、やっと入れた』
後藤さんは中にはってくるとドアと鍵を閉めた
『さぁ高橋、今日は最後まで楽しもうよ』
『い、いや!』
あたしは部屋の中を逃げ回ったが2LDKのマンションを逃げ回ってもすぐに限界が来る
ドン!
あたしはリビングの床に押し倒された
『いいじゃん、あたしと高橋の仲じゃんか』
『い、いやぁ……いやあぁぁぁぁぁ!!』

現実
「うわあぁぁぁ!」
バッと起きあがって気づいた場所は自分の部屋だった
まだ窓の外も暗くて、時計を見ると夜2時だった
あたしはベッドから降りて周りの物を確認する
ちゃんとチェーンも繋がってる……夢か……最悪…よりにもよって昨日のリプレイみたいな……
あたしはもう一度眠ろうとベッドに入ったがへんな汗をかいたせいか眠れなかった
一度寝汗を流そうとシャワーを浴びた、だけど再び眠りについたのは5時ごろだった

「あの、次後藤さんと吉澤さんです」
あさ美ちゃんと一緒にインタビューから帰ってきたあたし達は楽屋でそう言った
吉澤さんはすぐに「OK」と返事をしたが後藤さんは反応しなかった
「ごっちん!次ごっちんとよっすぃだべ!雑誌のインタビュー」
「あ、ごめんごめん、ちょっと考え事してた」
「考え事ぉ?」
「いや、大したことじゃないんだ、行こ、よっすぃ」
後藤さんが吉澤さんと一緒に楽屋を出て行ってようやく落ち着いた
「はぁ……」
ため息が出た
「どうしたの愛ちゃん?ため息なんかついて」
あさ美ちゃんか……
「昨日眠れなくて……ハハ……」
力なく笑った
「明日からダンスレッスンだから今日はゆっくり寝たほうが良いよ」
「うん、そうする」

その次の日からダンスレッスンが始まり1週間が経った
あたしはその間も一日に3時間程度しか眠れなかった
理由は、毎晩後藤さんが夢に出てあたしの事を襲うからだ
二日前なんか夜が恐くてまこっちゃんちに泊まりに行ったくらいだ
でもあたしのの都合に合わせて「モーニング娘。」のスケジュールが決まる訳じゃない
「高橋!なんかい言えば分かんの?!あなたもうすぐ加入して一年たつんでしょ!しっかりしなさい!しっかり!」
また叱られた、本当に今日何回目だろう、でも頑張って踊らないとみんなに迷惑かかるし……
『今はただできる事を頑張るだけ、それだけで今あたし達がいるところまで来れる、ね、高橋』
あれ?なんで今後藤さんの言った事なんか頭に浮かんだんだろう?
そう思った瞬間、目の前の景色が歪んで行った
あれ?なんだろうこれ?
そしてその次の瞬間、世界が回転した、あたしは……気を失った

気づいた場所は病院で、病院までついてきてくれた矢口さんに、あたしがレッスン中に倒れた事を聞いた
「あんまり無理しちゃ駄目だよ、身体は1つしかないんだから」
矢口さんにそう言われた、それから「『薬飲んで寝てろ』だってさ、先生がそう言ってたよ」
とも聞いたので、あたしは薬を飲んでもう一度な眠る事にした
気絶している間はあの夢は見なかった、けどもう一度寝た時にはまたあの夢を見てしまった
どう言うわけかその夢は覚めずに何度もリピートされた
後から考えた事だけど、
多分、薬の中に「睡眠薬」に近い物が入っていたからだと思う


『高橋、こんなチェーン何回直しても無駄だよ』
以前見た夢と同じ様に、後藤さんは大バサミでチェーンをちょん切った
『後藤さん……もう…嫌だ……』
何度も何度もあたしを襲うその場面があたしの中に流れる
『もう……やめてください……』
『いいじゃん、別に減るもんでもないし』

「高橋……」

…誰?
誰かがあたしを呼んだ…?

「高橋……」
ふと見ると、誰かがあたしの手を握ってくれていた
『誰…?』
なんだかその人のおかげであたしの心が落着いてきている感じがした
目の前にいた後藤さんを見ると、何故かノイズがかかったように後藤さんの映像がぐらつき始めた
『た……かは…し…』
すると、ヒュっと音をたててその後藤さんが消えた
その空間に溶ける様に……

現実
再び目が覚めた
病室は矢口さんがいない事以外何も変わった事はなかった
なんだったんだろう?今の夢……
考えているとどこからか矢口さんが戻ってきた
「あ、起きてたの?高橋」
「いえ、今起きたところです」
すると矢口さんは不思議そうに首をかしげた
「あの、矢口さんですか、あたしの手をずっと握ってくれていたのは」
あたしの手には温もりが残っていて、誰かが手を握ってくれていたのは夢じゃないと思った
「え?矢口じゃないよ、ごっつぁんじゃないの?今までいたんだけど、起きたら顔見せてやれって言ったのに、その様子じゃ会ってないんだね」
「後藤さん来てたんですか?」
「うん……来てたよ」
矢口さんはそばにあった椅子に座った
「高橋、聞いていいかな?言いたくなかったら言わなくてもいいんだけど」
「はい、いいですよ」
「ごっつぁんとなんかあった?」
図星をさされた
「え……なんで?」
「いや、言いたくなかったらいいんだけどさ、今部屋入ろうとしたときにさ、ごっつぁんの声が聞えてきて」
あたしは黙って矢口さんの言うことを聞いていた
「『高橋…もう…あたしのせいで苦しまないでよ』とか言ってたの……だから、なんかあったのかなって」
「いえ、あの、大した事じゃないんですよ」
あたしは話をはぐらかした、本当の事は、言わないほうがいいと思った

あたしは次の日の早朝、家に戻った
「じゃあもう矢口行って大丈夫?」
「ハイ、いろいろありがとうございました」
「なーに、いいっていいって」
家に戻ってからも病院にいるのとほとんど一緒
結局は薬を飲んで寝ていなくちゃならない
あたしは矢口さんに作ってもらった朝ご飯を食べると、薬を飲んで眠った
そしてどう言うわけか、今日はあの悪夢を見なかった、おかげでぐっすり眠れた

起きたのは8時ごろでリビングのソファに座りながら、三角座りでインスタントラーメンを食べながらTVを見ていた
その時間にやっていたのは歌番組の「名曲集」とかいうやつ、でもたいした「名曲」は流れていなかった
でも、
「あ…」
あたしの視線はTVに釘づけになった
『恋という字を〜辞書でひいたぞ〜』
後藤さん……
プッチモニのちょこっとLOVEが流れていた
プッチモニの部分が流れ終わっても
あたしはTVを見つめてぼーっとしていた
〜♪
着信メロディの音で我に返った
あたしは持っていたインスタントラーメンを置いて
ベッドの横にある携帯電話を取りに行きディスプレイを見た、後藤さんだった
無視しようとも思った
でも無視してもしょうがないので出る事にした
「もしもし」
『もしもし、あたし、後藤』
「なんですか?」
いつもと違うトーンの声で言った、自分でもかなり棘のある言葉だと思った
『あの、話しがあるんだ、9時、前に一緒に行った公園で待ってる、来て、ずっと、あなたが来るまで待ってるから』
そういうと電話は一方的に切れた
行くもんか、あんな静かな公園に言ったら何されるか分からない、絶対に行くもんか

9時、10時、11時、さっきはそう思ったものの、高橋は悩んでいた
大丈夫かな…夏って言っても夜にずっと外にいたら風引かないかな……
でも、あたしが行くわけにいかないし
再び着信メロディが流れた、後藤さんだろうか?、ディスプレイを見ると、吉澤さんだった
「もしもし」
『もしもし、高橋?ごめんねこんな時間に』
「いえ…」
『もう身体平気?みんな心配してるけど』
「あ、もう明日からはレッスン参加します、心配かけてすいません」
『いーよい―よ、本当はそんな事聞くために電話したんじゃないから』
「え?なんですか?」
『あたし長い話し苦手だから単刀直入に言うよ』
「はい」
『ごっちんとなんかあったでしょ?』
「え、なんでそれ?!」…しまった、口がすべった
『やっぱり、昨日の高橋が倒れたときのごっちん見れば一目瞭然だよ、他のみんなは高橋に気を取られてたから気づいてないだろうけど、で、何があったの?』
なんだか吉澤さんには話してもいい気がした
「この前無理矢理襲われました……」
『マジ?!ごっちんすごいね無理矢理って……あ、ごめん』
「いえ、いいんです、最後まで行かずに逃げましたから」
『ふーん、それはいいけどさ、高橋って、ごっちんの事どう思ってるの?』
「え?」
『ごっちんの事、好きじゃないの?嫌いなの?』
なんでそんな事聞くんだろう
「分かんないんです、あたし、ずっと後藤さんが好きだったのに……あんなことされて、後藤さんが分かんないんです」
『うん、じゃあ大丈夫』
「え?」
『ごっちんは、次高橋と会う時は高橋の好きなごっちんのはずだよ』
「何で…そんなこと」
『あたしには分かるの、って言うか知ってるの、だからさ、ごっちんと会う機会があるならすぐにでも会ったほうがいいよ、じゃあね』
電話は切れた
あたしの頭の中には吉澤さんの言った事が何度も繰り返されていた
“次高橋と会う時は高橋の好きなごっちんのはずだよ”
吉澤さんの言った事を信用したかった
あたしの好きな後藤さんなら……会いたい
そう思った
あたしは着替えるとすぐに待ち合わせの場所の公園に向った
後藤さんがまだいる事を望んで全速力で走っていた、きっと今までにないほどのスピードを出したいたと思う

公園の入り口についた、辺りを見まわす
すると以前二人で座ったベンチの前に後藤さんは立っていた
後藤さんもこちらに気づいた様で、あたしはもう一度駆け出した
「高橋……」
「すいません……遅れちゃいました」
できるだけ笑顔でそう言った
でも後藤さんは答えず、神妙な顔をして話した
「ごめんねこんな時間に……先ず謝らなきゃこの前無理矢理襲ったりして…ごめん、謝って済む事じゃないけど本当にごめん、もう仕事以外で近づいたりしないから」
え…?それだけ?それじゃああの優しい後藤さんかどうか判断できないよ
「あの…それだけですか?」
「いやもっと大事な話があるんだ」
もう1つの大事な話し…あたしはそれに賭ける事にした
「その前に聞きたいんだ、参考までに…」
「はい」
「前の時、あたしに気があるって言ってたけど…あれっていつのあたしを見たの?」
「ちょこっとLOVEの頃でした」
さっきTVで見たせいか自然に声が出た
「実は…」

「あたし…」

「高橋の事が…」

「好きなんだ……」

驚いた……
後藤さんがあたしの事を好き?本当に?後藤さん?
「話しはそれだけ…ごめんねこんな時間に」
後藤さんが後ろを向いて歩き始めた
別にあの時の優しい後藤さんと判断できたわけじゃないけど
気づいた時にはもう後藤さんを呼びとめていた
「待ってください!!」
後藤さんは立ち止まった
「なに?」
「あたしの気持ちは…返事は聞かないんですか?」
後藤さんが振り返る
「だって…あたし高橋に最低な事したんだよ……返事なんか、聞かなくても分かるよ」
あたしは、思いを全て伝えようとした
「後藤さんは最低な事なんかしてません!“本当の”後藤さんは!
 あたしの知ってる後藤さんは!ずっと素敵な人です!」
あたしの思いを伝えた……
「あたし!後藤さんの事、好きです!大好きです!!」
一瞬自分の中に達成感と言うかそんな感じの感情があった
「ねぇ、本当にあたしなんかで良いの?高橋後悔しない?」
「後悔なんてするわけないですよ、あたし後藤さん以外の人なんて考えられません」
あたしはその場の勢いを借りて後藤さんに抱きついた
そしたら、後藤さんもあたしをきつく抱きしめて……耳元でささやいた
「ねぇ、高橋、キスしていい?」
え?そんなこと聞かなくても……雰囲気とかそういうので……と言おうとして黙った
「そんな事聞くもんじゃないですよぉ」
すると後藤さんは笑って悪びれた
「だって勝手にして、また無理矢理になっても困るじゃない」
あたしは暗い雰囲気になるのが嫌だったから
100%の笑顔で「良いですよぉ」と答えた
後藤さんがあたしにキスをした
この前みたいに乱暴じゃなく、優しい、暖かいキスだった
そして偶然にもあたし達がキスしたのは丁度0時だった
なんだかロマンチック……
後藤さん、今すごく幸せです……

後藤さん……愛してます……


end