「愛ちゃーん。帰りにカラオケ行こーよ」
「あ、ごめん。今日は用事あるんだ。また今度誘ってね」

学校が終わってすぐ………。

「ばいばーい」

今日は特別な日だった。

あたしの大好き『だった』人の誕生日。いや、今でも忘れられない大好きな人の誕生日。

ブオォォオン!!

でも………、

「あ、ヘルメット忘れた………。ま、いっか」

今日はその人と誕生日を祝う事が出来ない。

ブオォォオン!!

でも、その場所に行くために私は友達の誘いを断って愛車にまたがった。

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高いエキゾーストの音。
うなる様なエンジンの鼓動を体全体に受けてノーヘルのまま峠の道を登っていった。
間違っても事故は起こさないように軽く流す程度。
この場所は絶対。特にこの先数百m先からの何連続かのカーブは絶対スピードは出さない。

それは自分じゃなく自分の大切な人がその場所で事故を起こしたから。

ヘルメットをかぶらないせいで髪の毛が向かい風にたたきつけられてボサボサになる。
それでも髪の毛は気にしないでその場所に向かっていた。


ブオォォォ………。

二重になったガードレールの傍に単車を止めた。この場所へ来るのは一年ぶり。初めてこの場所へ来てからはもう2年以上がたった。

「マキちゃん。誕生日おめでとう。」

既に先客が居たのだろう。ガードレールのポールの足元には大きな花束や缶飲料などが置かれていた。
ただそれは誕生日のお祝いではなく。追悼の為の物だということを私は知っていた。

今日は。ゴトウマキの誕生日。
私の大好きな真希ちゃんの誕生日だけど。

同時に大好きな真希ちゃんの命日だった。

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行きがけに自動販売機で買った真希ちゃんの好きな甘いカフォオレをポケットから二本取り出して軽く振った。
二本ともプルタブを開けてしゃがみこんで一本は置かれていた花束のそばに置いた。
そして私はもう一本を乾杯するようにその缶に軽くぶつけた。

制服のままココまで来て、ガードレールの傍にしゃがみこんでカフォオレを口に含んだ。

初めて真希ちゃんに会ったのもココ。最後に真希ちゃんに会ったのもココ。
病院であった真希ちゃんはもう真希ちゃんじゃなかった。

あの時は本当にびっくりした。
誕生日を祝うために真希ちゃんの家で準備していたのに。

急に電話がかかってきた。
『愛ちゃん。真希が……真希が事故った………』

嘘だと思った。

あんなに単車のうまかった真希ちゃんが事故にあうわけが無いと。
でも、場所を聞いてすぐに単車を飛ばして向かったら。

現実を思い知らされた。


真希ちゃんは峠で走るときはメットを被らなかった。
助からなかったのはそのせいかもしれない。

その場所に着いたらちょうど救急車が付いたところで、
真希ちゃんの愛車はガードレールにめり込んでて炎に包まれていた。
そのすぐ傍に倒れていた真希ちゃんは頭から血を流していて、ストレッチャーに乗せられるとき空耳だったかもしれないけど。

『ごめん』

って言ったんだ。


真希ちゃんは何も悪くないよ。
私に謝る事なんか無い。

真希ちゃんは私の大好きな真希ちゃんだった。
ただそれだけ。
今も。そしてこれからもずっと私は真希ちゃん大好きだよ。

「ふぅ………」
立ち上がって飲み干したカフォオレの空き缶を後ろから走ってきて今目の前のカーブを曲がっていった軽トラの荷台に放ってやった。
カランって小気味いい音がした。

「真希ちゃん。また来年。“誕生日お祝い”に来るね。」


あたしは最後にそれだけ言って自分の愛車にまたがった。

ブオォォオン!!

来たときと同じエンジン音が響かせてあたしはそのカーブを引き返して行った。
あたしが来た道を引き返していったあと。。

そのガードレールの傍にあったプルタブの開いたカフォオレの缶を。
たれ目がちで髪の毛の長い少女が持ち上げたのをあたしは知らなかった。








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いやー。訳分かりませんねw。
最後にカフォオレもって行ったのは幽霊かも(マテ
本当に落ちも何も無いww
とりあえず謝っとけ(激違
m(_ _)m