夢を見ていた。

思えば、運命の始まりは目覚めたときに忘れてしまった夢だった。

金髪メッシュの少女は懐かしい公園を歩いてその場所にたどり着いた。

急に少女の目の前の空間に光が集まりだして光がふっと消えると、そこにはもう一人少女が立っていた。


「ただいま」

「おかえり」


少女らは一言づつ言葉を掛け合って、抱き合った。

彼女たちの再会"した"場所は、彼女たちの初めて"会う"場所になる。

それは定められたこと。

定められたことに見えるもの。

それは少女たちが切り開いた道で。少女たちが自分で決めたもの。

運命の終焉は、少女たちの再会。

運命はこの場所に向かってスタートを切る。

運命の交錯するこの場所にいけるように。

自分たちの幸せで終わるように。

物語はここから始まる。



FATE`S CROSS POINT-リプレイ-







「よっすぃ、急がないと遅刻だよ!」
「そうだぞよっすぃ、急がないとヤグチ遅刻しちゃうじゃんか」
「二人とも楽してるくせにちょっと黙っててよ!!」

あたしは3人乗り自転車をこぎながら後ろの二人に文句を言った。
学校へ向かうにはちゃんと間に合う時間に起きたし間に合う時間に出発した。
それでも遅刻しそうなのは一番後ろに乗ってる金髪チビのせい。

「ん?いまよっすぃ失礼なこと考えなかった?」
「考えてないっすよ!ってか黙っててください!!」

そう、こんなに猛ダッシュしてる理由。それは10分前にさかのぼる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ふあぁ、」
きちんと学校へ間に合う時間、いつもの時間に起きたあたしは1階に降りてパンをトースターにセットして。そのまま顔を洗いに向かった。
一緒に歯も磨いて、リビングに戻るとパンが焼けていた。
一人暮らしにはもう慣れて、こんな風に流れ作業みたいな一日を始めようとしていた。

だからもうすぐ、あの子が来ることも分かっていた。

「よっすぃーー!」

家の外から聞こえるアニメ声。
あたしも何か言葉を返す。

「鍵開いてるーーー!」

それだけ叫ぶと案の定彼女は玄関の扉を開けて勝手に入ってきた。
髪の毛を黒っぽい茶髪に染めて色黒な彼女。小学校の頃からの幼馴染だ。
「おはよーよっすぃー。」
「おはよ梨華ちゃん。」
適当に朝の挨拶をした。彼女はもう制服に身を包んでいて学校へ行く準備はできてる。

「これ食べ終わったら着替えるからちょっと待ってて」
「うん、いいよ」

何故彼女がココに来るかというと学校まで自転車で二人乗りをしていくからだ。
あたしは大体ギリギリの時間までのんびりしてるけど自転車で飛ばせば間に合う。
それぐらいギリギリに出発していた。それが問題だった。

「よし、OK」
二階の自分の部屋で鏡を見て大丈夫な格好であることを確認した。
寝癖も直ったし制服大丈夫。
1階に降りて「梨華ちゃん行こう」と声を掛けた。

二人で外にでてちゃんと戸締りをした。
傍においてある自転車の鍵を外して門柱の間を通って道に出た。
あたしが前に乗って梨華ちゃんが後ろのタイヤに取り付けてある六角に乗った。
そのまま学校へ行けば"あたし達は"遅刻をせずに済んだはずだった。

「ちょっとー!!よっすぃ待ってーー!!」
見知った甲高い声に振り向くとそこには先輩のヤグチさんが全力疾走しながらこっちに近づいてきていた。
「遅刻しそうだから乗せろ!!」
そういって矢口さんは勝手に自転車の荷台に飛び乗った。
こっちの都合も聞かずに。
「早く!遅刻しちゃうじゃんか!」
こうしてあたしは慣れない二人分の重さを抱えながら自転車を漕ぎ出した。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「よっすぃ急げ!!遅刻するぞ!!」
「誰かさんがいなければもっとスピード出せますよ!!」
「なんだよそれ!矢口の事言ってるのか!!」
「矢口さん以外に誰がいるんですか!!」
「二人ともあたし挟んで喧嘩しないでほしいな………」

まぁ、そう云う経緯で今3人乗りの自転車をこいでるわけ。

あたしはいつも使わない裏道にまで入り込んで学校までの近道をする。
ガタガタの道だけど少しは時間の短縮ができそうだ。
後ろで矢口さんが「なんだよこの道!ガタガタゆれて怖いよ!!」とか言ってるけど無視。

急いで道を抜けて通学路へと戻る。
途中裏道を通ったおかげでどうにか間に合いそうだ。


キキー!!
校門の前でブレーキを掛けて自転車を急停止させた。
「サンキュ!よっすぃ。」
自転車と止めるやいなや矢口さんはさっさと降りて校舎へと向かっていった。
「梨華ちゃん降りて。」
「うん、」
「んじゃ、あたし自転車置いてくるから。」
梨華ちゃんを下ろしてあたしは自転車置き場へと向かった。ギリギリの時間だったから人は全然いない。
でも自転車を止めるときに何か後ろで気配を感じた。

「おい、」
とても女子高には似つかないヒクーイ声。
後ろを見るとやっぱりと思えるようなパンク系の学ラン着た高校生が数人いた。
いったいどうやってここまで入ってきたのかが疑問だけど、

「お前がこの頃この辺荒らしてるって奴だな?」
一番前にいたモヒカンの後ろにいた金髪が聞いてきた。
荒らした覚えは無いけどね。ちょっと生理的にむかつく奴がいたらぶっ飛ばすことは在るけど。

「さぁ、人違いじゃないの?」
あたしが自転車置き場から出ようとするとそちらからも同じ学ラン着た男子高校生が出てくる。
なんか、囲まれてるみたいね。

「もう調べは付いてる。吉澤ひとみという女子高生が俺の舎弟8人のしたって事もな」
今度はリーダー格っぽいモヒカンがしゃべった。
この頃のした8人なんて顔も覚えてないよ。誰の事言ってるんだか。

「黙って付いて来い。出なきゃ。この場で恥ずかしい目にあわせるぞ。」
その言葉があたしのスイッチを入れた。
口ばっかりの男には興味が無い。
あたしを誘うなら、それなりの力で来い。

「遭わせられるモンなら、遭わして見ろ!!」
カバンを地面に落として、
モヒカンの顔面に後ろ回し蹴り。
ほんの何秒だろう?2秒も掛からないうちにモヒカンが地面に倒れた。

「………!」
明らかに周りの空気が変わった。
モヒカンの舎弟供が怯えだした。

「もうこないの?」
一応聞いてあたしは地面に落としたカバンを拾った。さっとブレザーのスカートに付いた埃を払う。
「う、うぁーー!!」
以外だったかもしれない。みんな尻尾巻いて逃げると思ってたけど、モヒカンのすぐ後ろにいた金髪が殴りかかってきた。
またカバンを地面に落として殴りかかってきた右手を右によけて、相手に背中を向けて金髪の右手をつかんだ。

「よっ。」
そんなに大きな声を出さずとも金髪の体が大きく宙に揺らいだ。
もう次の瞬間には金髪は地面に背中を強く打ち付けていた。受身を取らなかったからかなりダメージは大きいはずだ。
技名「一本背負い」

「逃げろ!!」
どこかの誰かが叫んだ。
そのきっかけで周りを囲っていた学ラン供が逃げていく。二人のごみを残して。

キーンコーンカーンコーン。

「あーあ、チャイム鳴っちゃった。」
あたしはもう一回カバンを拾ってつぶやいた。
せっかく学校まで急いできたのに。

ポケットから携帯を取り出して時間を確認した。
やっぱりもう間に合わない。

「サボっちゃえ。」

あたしは今日の授業をサボることに決めてもう一回自転車のスタンドを上げた。

To Be continued
Fate`s Cross Point〜リプレイ〜


一人自転車をこいであたしはいつも行く喫茶店へ向かっていた。
学校のすぐ傍にあるその喫茶店には鬼のようなマスターといつも居りびたっている天使が居る。

キキー!

喫茶店の前でブレーキターンして自転車を止めた。
スタンドを下げて後ろのタイヤの鍵を掛けて喫茶店に入る。

カランコロン。

カウベルの音がして扉が開く。
喫茶店とは思えないほどの殺風景な内装。
隅っこに置かれたラジオから聞こえる漫談はまるで昭和の匂いがする。

「ん、いらっしゃい。さぼったんか?」
マスターがあたしに気がついたようでカウンターの向こうでコップを拭きながらあたしに声を掛けた。
「ちょっと。不良に絡まれてたせいで間に合わなくなっちゃって」
あたしは別に喧嘩好きなわけじゃない。
これでも中学生まではある程度成績もよかったし学校もサボらずに行ってた。
ただどこかから喧嘩が強いってことが流れちゃって、不良に絡まれだした。
ただ誰かに勝つと気持ちよかったり、勉強なんかより全然良い取り柄だと思った。

カウンターに座って、「裕ちゃん、コーヒー頂戴」とマスターに声を掛けた。
そのとき、また喫茶店に人が入ってきたことを示すカウベルが鳴った。

「ただいま、裕ちゃん」
「ん、なっちか。おかえり。」
扉の方を振り向くと店に入り浸っている童顔天使。安倍なつみさんが立っていた。
「今、ただいま。って言った?」
「あぁ、よっすぃいらっしゃい。言ったけどなに?」
「ここ安倍さんの家じゃないですよね?」
「あはは、そんな事?気にしない気にしない」

あたしが聞いたことに安倍さんは笑って返した。
別にココ住んでようとどうでもいいけど。

「で、よっすぃはまたサボり?」
安倍さんは持っていたスーパーの袋を裕ちゃんに渡してあたしの隣に座った。
「今日は行っても遅刻なんで、だから休みで。」
安倍さんにもここに居る理由を説明してあたしは裕ちゃんの淹れたコーヒーがいつの間にかおいてあったので一口口に含んだ。

「ねぇ、よっすぃこの前言ってたよね?」
「え?何をですか?」
急に安倍さんが話を振ってきた。でもあたしには「言ってた」ことが何か分からない。

「こんな日常ツマラナイ。もっと映画みたいな波乱万丈な世界に棲みたいって」
あぁ、そんな事言った。
こんな機械的な毎日を送るだけじゃつまらない。もっと楽しい世界に棲みたい。世界が変わって欲しいって思った。

「なっちね。思うんだ。きっと世界がそんな風に変わっちゃったら、元の世界に戻りたくなるだろうなって。よっすぃはもし世界が映画みたいな世界になったら。元に戻りたいって思う?」

安倍さんは初めて話したとき空想の世界が好きだって言ってたな。
あたしも空想の世界は嫌いじゃないけど。それは現実がいやで空想に逃げているだけに思われるのが嫌だ。
それなら。世界が変わって欲しいって思う。

「戻りたいとは思わないと思います。たとえばターミネーターみたいな世界。マトリックスな世界。きっとこんなつまらない日常よりもそんな世界で一生を終えた方が幸せだと思いますね。」

急に安倍さんがそんな話を振ってきたから真剣に考えたけど、あたしの真剣な意見を聞いてもやっぱり安倍さんはゆる〜い顔していて。冗談で聞いてきたのかと思って真剣に答えた自分が恥ずかしくなる。
でも安倍さんは急に真剣な顔して。
「きっと世界が変わって欲しいと思えば。真剣にそんな事を願えば。きっと世界は向こうからよっすぃに違う世界を与えてくれるのかもしれないよ。」

あたしは運命という言葉を信じない。

「自分から歩き出せば、きっと自分の望んだ道に進んでいける、」

きっと"運命"は、自分でしか決めることのできない道、だから。

真剣な安倍さんの話を聞いてると、いつの間にか裕ちゃん特製コーヒーは冷めてしまっていた。
この話を聴いたのは偶然。不良に絡まれたから喫茶店に来たんだから。
でも話を聴いたのは必然。それはきっとあたしが世界に変わって欲しいと真剣に思ったから。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ヴーン!!

「ん?」
昼近く。裕ちゃんに作ってもらったサラダとパスタを食べながら安倍さんや裕ちゃんと雑談してる携帯が鳴った。
鳴ったといってもバイブレータしか使ってないから音は鳴らなかったけど。

トマトを刺してたフォークを置いてポケットから携帯を取り出し。
『よっすぃどこ?また喫茶店?一人の食事はさびしいよーー byチャーミー』

そういえば梨華ちゃんに連絡するの忘れてた。
今頃一人でお弁当食べてるんだろうな。

一応数十文字のメールを返す。
『ごめんごめん、自転車置きに行ったら不良に絡まれてさ 相手してたら遅刻になっちゃってだから今喫茶店にいる。今日は学校行かないからw』

返信をして食べてる途中だったサラダに手を伸ばす。
さぁ、これ食べたらどこに行こうかな。

あたしはこの後のことを考えてトマトを口に放り込んだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「はぁ、」

財布を見てあたしはため息をついた。
喫茶店を後にして、すぐに繁華街に来たのは良いんだけど。
財布の中身はさびしくて夏目漱石が4人。
とてもじゃないが女子高生の遊びには足りなさ過ぎる。

「はぁ、」
再度ため息。
どうしようかな。

財布をポケットにしまってまた自転車を漕ぎ出す。
人ごみを掻き分けるように自転車を漕ぐと何処からか声が聞こえた。
聴いた覚えのある声はとても不快な声で朝聴いたばかりの声だった。

「おら、お前がこの頃この辺荒らしてんだろ?」
「何とか言ったらどうなんだよ!」

朝見たモヒカンと金髪。もう復活してるらしい。
どちらにしろ暇な奴らだね。

「なんとか………」

その二人を目の前にしている女の子も何か度胸がある。
『何とか言ったらどうなんだよ!』に対して『なんとか………』とヒッソリ答えた。
相手の感情を逆撫でするのが上手だと思った。

「お前フザケてんのか!!」
「あんまり調子こいてっと犯すぞコラ!!」

嘆かわしいね。見てられないよ本当に。
自転車を適当に止めて3人の対峙するストリートの真ん中に歩み寄った。

「久しぶりじゃん二人とも4時間ぶり?」
男二人の後ろから声を掛けた。でも二人は「外野は黙ってろ!!」だって。
ちょっとあたし無視されるのとか嫌いなんだよね。

「また回し蹴りでも喰らいたいわけ?」
「さっきからごちゃごちゃうっせぇぞ!!」
金髪が振り返る。瞬時に金髪の表情が変わった。

「あ、あ、あ、あ、兄貴!!!」
「五月蝿いぞ。どうかしたのか。」
金髪の声に引かれてモヒカンも振り返る。同じく表情が一変。

「あ、な、な、なんでお前がここにいるんだ!!」
「誰かさんが遊んでくれたおかげで遅刻なんだよ。この憂さ晴らししたいと思ってたところなんだよね。ちょうどよかったよ」
「や、や、や、や、止めろ!!」
「聴く耳持たないね。」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ヒデブ………」

顔が変形した二人は放って置いて絡まれてた女の子に声を掛けた。
「大丈夫?なんかされてない?」
できるだけ優しくというか。なんとなく掛けた言葉。
でもその言葉の返りはめちゃくちゃ予想外なものだった。

「助けてなんていった覚えは無いよ?」

たった17文字の言葉。
その言葉がせっかく助けてあげたあたしに向かって言う言葉なのか?
なんだそれ?

「馬鹿みたい。こんな人目につく場所で喧嘩なんて。」
ふっと長い髪を揺らして彼女は振り返る。
妙に残るその言葉に惑わされて。
なぜかあたしはその言葉を、表情を、後姿を、
何故か心に刻み込んでいた。

これが彼女との初めてのコンタクト。

いや、これがこのFATEでの初めてのコンタクト。

To Be continued
Fate`s Cross Point〜リプレイ〜