カヤック製作 Building wood kayak


1.図面


参考図書は「シーカヤック自作バイブル」(八木牧夫 著: 舫社)
標準全長の5mは運搬も製作も大変と考えて、3m(10フィート)程度に決めた。釣りが目的なので走行性能は要らない。車の中に何とか積み込めるサイズも考えたが、3mより小さいと足が入らなくなりそうだった。結局この大きさは入手できる材料の大きさの都合で決まった。サイドパネルに貼る角材(シアー材)が一番長い材料だが、10フィートの角材をホームセンターで見つけたのでこれを使うことにした。シアー材はスカーフ接続でいくらでも継ぎ足して長いものが作れるのだが、接続なしで作れるのならその分作業工程が省ける。
船体後端は切り落としてリバーススターンとし、全長を短縮する。先端も丸く落とす。



2.1/10スケールモデル試作




上の2つは厚さ1/32インチ(約1mm)のbass wood材で作った。(bass woodは朴の木だと思うが、バルサよりも緻密でやわらかくてこのような工作にぴったり) 下の3つ目のモデルはボール紙製。製作工程のシミュレーションを行い、材料の板取寸法もこれでしっかり把握することができた。


3.部品図


   
      



4.材料調達
名称 品名 サイズ・数量 調達先 メモ
船体用の合板 Birch plywood 1/8"x 5' x 2.5'
4枚
Woodcraft 厚さ1/8インチはちょうど3mm程度。耐水ベニアかどうかはわからないが3層の厚みが均等で品質は良さそう。一枚 $15。
シアー用の角材 Pine moulding 11/16"x1/2 x 10'
2本'
Lowe's home center なるべく長い角材を探していたが、これは10フィートのモール材。ホームセンターにあった。この長さならそのまま車に積んで持って帰ることができる。
コーミングとバルクヘッド用の合板 Lauan Plywoo 1/4"x2' x 4' 2枚
1/4"x2' x 2' 1枚
Lowe's home center 厚さ約5mm。ホームセンターで入手
コーティング用エポキシ樹脂 Silver Tip Laminating 1qt + 1pt System Three システムスリーは日本にも代理店があって、グライダー製作のときに使った。Web注文で入手した。
エポキシパテ EZ filet 1.5 pt set System Three エポキシ樹脂におがくずがあらかじめ混ぜてある。ステッチ&グルー工法のカヌー製作に最適とのこと。
エポキシ接着剤 T-88 1/2 pt set System Three 硬化時間が長い(1〜2時間で硬化開始、1〜1.5日で完全硬化)ので大物の組み立て接着に向く。
ガラスクロス Fiber glass cloth 4oz- 50" x 5yard System Three これもシステムスリーのサイトで注文した。
クロステープ Fiber glass tape 2" x 5 yard System Three これもシステムスリーのサイトで注文した。
針金(銅線) Copper wire φ1mm Lowe's home center さびない銅製の針金。やわらかいのでねじりやすい。

←システムスリーから届いたエポキシと関連材料。




5.船体の製作

(1) 合板の切り出し

電動ジグソーは直線カットが難しいが、なるべくまっすぐに切断する。



(2) 合板接続部のスカ−フカット
合板を継ぎ足して接着するために接続部表面を斜めに削る。
合板の厚さは1/8インチなので、斜めに削る幅は厚みの8倍でちょうど1インチとなる。切削にはかんなを使った。ただし刃を良く研いでおかないとうまく削れない。合板の層がきれいな縞模様になって削れていれば平らになっている証拠なのだがなかなか難しい。ベルトサンダーを使うと良いらしいが、ここはかんなとサンドペーパーでがんばった。
 


(3) パネル接合

斜めに削った面を合わせてエポキシ接着剤で接合する。接合ラップを1インチにすると段ができてしまうので少し離したほうが良い。エポキシが硬化するまでタッカーを打って固定しておく。



(4) ボトムパネルにキ−ルライン曲線のマ−キング    



(5)サイドパネル・ボトムパネルの裁断

電動ジグソーでマーキング線の1ミリくらい外をカットしたあと、かんなでマーキング線まで削って仕上げるとぴったりサイズに裁断できる。



(6) サイドパネルにシア−材を接着

エポキシ接着剤T-88は硬化時間がとても遅いのでゆっくりと作業ができる。硬化するまでタッカーを打って固定しておく。ボール紙をはさんでおき、あとからタッカーの針を取り除きやすいようにした。
 

(7) ボトムパネル左右をステッチ(銅線で結ぶ)

板の端から6mm離れたところに1/16インチ(約1.5mm)のドリルで穴を開け、その穴に銅線を通して捩る。


(8) サイドパネルの先端と後端のシアー材に木ねじを立てて針金の輪をかけつつ、サイドパネルのセンターに横木を入れて広げる。



(9) サイドパネルの先端と後端をステッチして閉じる。



(10) サイドにボトムをのせてセンタ−位置と前後端をステッチ

広げたサイドは若干ながら前後端が反り上がるので、サイドをさかさまにしたときにセンター位置にかさ上げの板を敷く。板の高さは2インチぐらいがちょうど良かった。


(11)サイドとボトムの接着位置を決めながら要所をステッチ

上の写真のように、ボトムの幅が若干不足しているところがあるが、サイドを少し絞ってステッチしてしまえば何とかなった。大事なのは接合位置を左右対称に決めることだ。ボトムの内側にセンターラインに垂直な線をいくつも引いておき、この直線の左右の長さをそろえるようにする。
※オリジナルの作り方では、ここでサイドの位置にあわせてボトムの上にケガキ線をひいて、いったんボトムをはずしてそのケガキ線に沿って左右対称にカットしてから再組み立てを行うが、本当はそのほうが確実に左右対称にできる。

右下のイラストは、ボトムとサイドのステッチの例(赤線が銅線)
 

(12)ボトムのセンターのつなぎ目と、サイドとボトムのつなぎ目に内側からエポキシパテを流してフィレットをきったあと、補強のグラステープをコーティング用エポキシ樹脂で貼る。硬化剤はFastタイプにしたので、30分くらいで硬化が始まる。ちょっと気温が低いので部屋の暖房をつけておいたら翌朝には完全に硬化していた。 (エポキシ樹脂を使うときの注意事項メモ




(13) コックピット部分にグラスクロスを貼る。 ついでに船体内側全体もエポキシでコーティングする。
グラスは中央から端に向かって張っていくのが鉄則。引っ張りすぎると別のところが弛んで浮いて空気が入ってしまうので注意。



(14) はみ出したボトムをカット
のこぎりで大まかに切り、かんなで削ってサイド面とあわせる。

(15) コーミング(乗り込み口のフレーム)の切り出し
コーミングを切り出した残りの材料でバルクヘッド(隔壁)をつくるので、ここでコーミング材の板取をする。コーミングの大きさに適当な大きさのベニヤ板が見つからないので、継ぎ足すことにした。コーミングは4枚積層でつくるので継ぎ足しは問題ないはずだ。


4まいの部材を重ねてタッカーでとめる。 下右の写真は、大きな円を書くために作成したコンパス。


コーミングの内側の線を4枚まとめてジグソーで切り抜く。


(14) バルクへッド(隔壁))板を作る


合板の切れ端を内側から当ててバルクヘッドの型取りをする。






(15)デッキビームの製作

デッキビームがはまる場所の幅とその部分での底からの高さを決めてデッキビームを作る。底からの高さは290mmとした。大まかに切り出した3枚の合板をエポキシ接着剤で張り合わせる。 接着剤が硬化したあとに寸法どおりに切り出す。



(16) 後端に補強を入れてカットし、ふたを接着



(17) 船首先端の加工

角材をサイド板の傾きにあわせて切断しブロックを作り、エポキシで接着する。


先端を斜めに切り落とし、楔形に切断した角材を接着する。接着部の継ぎ目には船体内側からエポキシパテを盛っておく(下写真左)。
かんなで削って丸くする(下写真右)。



(18) シアー材をデッキパネルのカーブに合うように削る。



バルクヘッドを作ったときと同じ円弧のゲージをつくり、それを当てて削る傾きを確かめる。(上写真右)

(19) バルクヘッドとデッキビームを船体に接着する。

接着したあとには、エポキシパテを盛ってフィレットをきる。


(20) デッキパネル

1/8"(3mm)合板を仮釘で固定し、裏から船体にあわせて切り出し線を入れる。船体よりすこし大きめにした。


 

 


(21) コックピットとコーミングの製作

コーミング材をデッキパネルの中心に仮止めして、内側にケガキ線をいれてジグソーで切り抜く。


コーミング材4枚をエポキシで張り合わせてデッキパネルに置いて、正しい位置にクランプで固定する。このとき、コーミング材の一番下の一枚とデッキパネルの間にはエポキシを塗らない(接着しない)。コーミングの前と後ろには一箇所ずつ貫通する小さい穴を開けて釘をとおしてズレ防止にする。エポキシが多めに要るようだったので、エポキシ接着剤ではなく、コーティング用のエポキシ樹脂を使った。(小さなカップに半分くらい樹脂を混合したのだが、しばらくして樹脂が熱を持ち始めた。40度C以上あったと思う。小さな容器でたくさん混合してはいけない)
 

↑小型のUクランプは安物工具店で買った一個$1.5のもの。

(22) 船体の整形

デッキとサイドの接着部をRをつけて削る。
かんなで、まず大きく角を落とすように面取りする。面取りする量はあらかじめけがいておく。 それから、新しくできた角をまた面取りしていくことを繰り返して丸くする。
 

(23) コーティング準備

面取りしたところをサンディングして滑らかなRにする。ここからの工程はサンディングと塗装に入っていくので、場所を室内からガレージに移動した。Rがきれいになったら全体をサンディングする。デッキはクリア仕上げにしたいので220番でサンディング。このバーチ合板はそのままエポキシを塗っても木目がきれいに出そうに無かったので、メープル色のオイルステイン(油性)を塗ってみた。塗ってすぐに布でこすって拭く。

 

(24) コーティング

船底をグラスクロスでコーティングする。クロスの幅は1yard(約90cm)なので、サイドまでカバーすることができる。一枚のクロスで全体を覆って一気にエポキシを塗ってコーティングした。サイド面はわずかに凹んでいるので、あまりクロスを引っ張りすぎると空気が入ってしまうので注意。
 
デッキパネル側で折り返したクロスは、エポキシが半硬化のときに、クラフトナイフで切り取った。

 
デッキパネルにはグラスを貼らず、エポキシを刷毛で塗った。厚く塗りすぎたのがいけなかったのか、時間が経つと月のクレーターみたいにボコボコとえくぼができてしまった。

(25) 下地の研磨

デッキのボコボコを均そうと#100サンドペーパーで削っていたら下地が見えてしまったのであまり削るのはやめた。もう一度エポキシを薄く塗ってビニールシートを貼り付けておいたらましになったが空気の泡がどうしても入ってしまうのでその部分はかすかなでこぼこになった。こんどは#320のサンドペーパーで水研ぎにして手で慎重に削った。エポキシコーティングはなかなか大変だ。
 

(26) 下地研磨2
船体の下地にはサンディングシーラーを塗ってみたが、木材用のシーラーだったようで、いくら塗ってもグラスの目がつぶれない。そこで、カー用品店で見つけたプライマリサーフェーサをスプレーして水研ぎを行ったらなんとかきれいな下地ができた。

↑グレーになって残っているのがプライマリサーフェーサ

(27) 塗装
船体は白で塗ることにした。エクステリア用のラッテクスエナメルという水性ペイントをホームセンターでみつけた。乾きが速いが塗膜はやわらかいので研磨しやすい反面、削りすぎるとすぐに下地が見えてしまう。#500のサンドペーパで水研ぎする。


下地ができたら、仕上げにクリア塗装をする。使用したのはシステムスリーの水性ポリウレタンWR-LPU トップコート。
一度に厚く塗るとダレてしまうので、少しだけ水で薄めて広げるように塗る。刷毛で塗るより、ローラーのほうが均等にぬれた。




(28) パドル製作

シャフトはホームセンターで見つけた直径1インチの松材。パドルは3mmベニア。木ねじでパドルを固定してダボ木(ダウエル)を打つ。
 

(29) 完成

重量は約15kg



(30) 進水!
初進水は7.3.2011。あまりにもロール安定性が無いので、次の進水ではサイドにフロートを装着した。まるで補助輪みたいだ。これがないと静止しているときにも常にバランスをとる必要があり、釣りどころではない。進むときの抵抗になってしまうが、これで転覆せずにすむようになった。