ハイブリッドDCパワーアンプの製作

2008/7/5
最近の記事は初段に真空管を使ったパワーアンプが多い。良さそうなので作ってみる。No.186 + No.188を改造して作ろう。
5702WBを通販で手に入れた。ペアマッチングを一応とるために一本多く5本買った。Raython製。1984年のパッケージと書いてある。


プレート電流5mAの時のVgを測る。

#1: 0.773V
#2: 1.183V
#3: 0.946V
#4: 1.261V
#5: 0.989V

結構ばらつきがあるものだ。#2&#4 と #3&#5 のペア組で良いだろう。

2008/7/23
ケースの製作を開始した。記事どおりタカチのHYシリーズを使用。ただし電源は別ケースとするので70mm高のものを選別した。
フロントとリアパネル(3mm厚)の穴あけにはステップドリル工具を使用してみた。これで8mm径の穴はきれいに空いた。但し刃に切りくずがまとわり付いて、それが穴の周りの表面を擦って傷がつく。目立つほどではないが裏から開けたほうが良いかも。。切り口の面取り(皿もみ)がきれいにできるのでこの工具は優れものだ。
キャノンコネクタの穴はφ20あるのでドリルでは大変だ。この際ホールソーを買った。3個の穴がすぐにできた。

2008/7/26
基盤は底板に固定せず、フロントとリアパネルに渡したLアングル材に固定する方法とする。基盤は上からつるすようにした。このほうが基盤裏の配線が楽だ。但し5702WBの高さが40mmほどあるので長いサポートが必要だ。3x25mmビスで延長した。


パワーTrの固定には工夫が要る。Lアングル材をうまく切って固定金具を作り、放熱器をサイドパネルにねじ止めする。サイドパネルへは2.5mmの下穴をあけて3mmのタップを切った。アルミなのでタップは簡単に切れる。

回路図。初段のFETとTr.を真空管に置き換えた。プレート抵抗は6.8kのままとする。定電流回路の定数もそのまま。+100Vにはレギュレータを使うのでツェナーDi.は一個省略した。終段Tr.のPdリミッタの定数はTr一個用に控えめの値にしておく。

基盤配線図。終段Tr.のPdリミッタは回路図とは違うが、定数が妥当であることを確認してから回路図どおりに変更しよう。

2008/9/15
左Chのみ完成し動作確認した。しかしどうも不安定だ。ドライブ段Tr.が壊れた。2段目定電流のTr.がまた壊れた。すると終段Tr.まで壊れるので困ったものだ。直して一応音出しはできたがどうも不安定のようだ。電源を入れなおしたらやっぱり飛んだ。こんどは終段の電源の遮断MOS-FETまで壊れた。

電源の遮断保護回路の見直しを考えた。終段電源の±35Vは外部からもらってくるのだが、いまの回路だと保護回路の電源がOFFの時に+35Vは遮断されるのだが、-35Vは遮断されないのだ。-側MOS-FETのゲート電圧は-35Vの供給電圧とGNDの間におかれたツェナーDで発生するからである。保護回路の電源が生きてツェナーDの両端をTr.がバイパスすることではじめて-35Vは遮断される。保護回路の電源がOFFのときは±35Vの電源が生きていても遮断する回路が欲しい。そうでないと、保護回路の電源を入れる前に外部電源の±35Vを入れた時に事故がおきる恐れがある。考えた回路がこれ(回路図)。 ツェナーDを使わずに抵抗に電流を流してゲート電圧を作る。オリジナル回路よりTr.が一個増えるが対称で美しい(?)回路だ。+35V側のスイッチ回路のTr.は2SC1775Aでは+120Vに対して耐圧不足なので2SC2230Aを使った。PNPの2N5401はたまたまジャンク屋で手に入れたものだが耐圧が150Vなので使ってみた。基盤配線図もなるべく対照配置にして作った。

2008/9/20
アンプの動作が不安定なのは2段目の定電流回路に原因がありそうだ。電源が-120Vと低すぎるのが原因なのか定電流の2SC4578の耐圧は十分であるはずだが、こいつにちょっとでも異常が生じるとドライブ段以降に大電流が流れて壊れるようなのだ。特に電源を切るときには不安定になる。そこで2段目の定電流回路は廃止して、2SA606からドライブTr.を直接駆動しよう。2段目定電流回路が良いところは、温度補償だ。サーミスタの働きも手伝ってTr. の温度が上昇するほどドライブ段に流れる電流の吸い込み量が多くなり、温度補償がうまいくいくことだ。温度補償をどうするか悩んでいるときにふとひらめいた。AOCの定電流回路にサーミスタをいれてここで温度補償すればよいのでは?
AOCも結局は差動型の電流吸い込み回路であり、定電流回路の抵抗が変われば同相で吸い込み電流値が変わるはずだ。考えた回路がこれ(回路図 No.197mod)。ドライブTr.のベース抵抗は手持ちの330Ωとし、バイアス電流を4mA程度とする。ちょうどAOCの吸い込み電流も同じく4mA程度である。2段目にはカスコードをつけたいところだが、無しでも音は出るだろう。

2008/9/27
左Chのみだが変更した回路で音が出るようになった。心配なのは温度補償だ。サーミスタにパラに入れている抵抗は75Ωでは小さすぎることがわかった。温度補償が追いつかないのだ。300Ωまで増やしてなんとか落ち着く。それでも長時間の運転ではじわじわとアイドリング電流は増加気味なので、追加の補償が必要だ。そこでAOCの定電流回路のTr.を終段Tr.の放熱器に熱結合してみた。この効果で長時間運転してもアイドリングの増加は頭打ちになっているようなのでこれでしばらく様子を見よう。室温27℃で長時間運転時の終段Trの温度は55℃程度まで上昇する。アイドリング電流は200mAくらいである。

2008/10/4
右Chも完成した。ただしメタルCANトランジスタは代替品だ。2SC11612N1893 (120V/0.7A/0.7W)に、2N30552SC681(200V/6A/50W)に変更。アイドリング電流はだんだんと増加し頭打ちになって少し下がる傾向を示す。熱伝達の速さが遅いのだろう。サーミスタはオリジナルどおりTr.の表にくっつけるのがベストなのかも知れない。音は真空管の良さが出ているような気がする。ベールがかかったように高弦の音がやわらかくなり、響きもよくなる。低音がボン気味なのが気になる。MFBを入れたら良くなるだろうか。Tr.に代替品をつかった右Chの音は悪くない。いい加減な部品でもそれなりの音がでるのは回路が良いから? 銘石を使えばさらに良い音が望めるということか。

2008/10/13
基盤中吊り構造は基盤をはずさなくても部品の付け替えができるので改造時や修理時の作業性がとても良い。
アイドリング電流の安定性はなんとか実用範囲のようだ。 バイアンプにして使ってみようと本機を高音用スピーカにつなぐと保護回路が動作しっぱなしとなってしまう。終段に電圧がかかる前に出力に異常なオフセットが発生するのだ。低音用スピーカにつなぐと問題ないので不可解な現象だ。高音用スピーカの端子間抵抗を測ると1MΩ近い。クロスオーバネットワークによって直流抵抗がかなり高いのだがこれが原因か?


2008/12/7
だいぶ寒くなってきた。動作中の終段Tr.の温度上昇はわずかだ。アイドリング電流は150mAに落ち着くように調整しているが、動作開始の電流はかなり低くて、だんだんと上昇して落ち着く。一応安心して聴けるようになったが、ちょっと大音量になるの保護回路が動作してしまう。アイドリング電流の暴走を懸念して定数を設定していたが、「DCアンプ製作のすべて下巻」どおりの設定に見直した(回路図)。これで少々のことでは保護は作動しなくなった。エミッタ抵抗の0.1Ωをバイパスしたほうが音質が良くなると思っていたが、あまり変わらないようなので、記事どおりの保護回路としておこう。これでこのアンプは一応の完成。これから一年間、暑い夏を乗り越えて安定運転を続けられるか?

2009/1/13
正月休みに天板の穴あけを完了し、天板を乗せて音出ししているが、問題なく鳴っている。気温が低いので温度上昇も気にならない。
初段の真空管の良さがよく出ていると思う。高音の刺激が少なく分解能も高い。


2009/10/17
暑い夏を問題なく乗り切った。終段Tr.を2SD218に、ドライブ段Tr.を2SD297(150V/3A/25W)に交換した。アイドリングは200mA程度に設定した。今まで使っていた2SC681は音の立体感が無く、悪い石であることがわかった。