Happy Birthday Dear  Eiji 2






おかしい・・・絶対におかしい・・・ 俺は最近ある事に気付いた・・・


それは大石の事。



俺達はこの夏から晴れて付き合う事になった。

それはもう清水の舞台から飛び降りるぐらいの気持ちで・・・

清水であってっかな?

まぁいいや・・・

それぐらいの気持ちで告白したのに、俺達って付き合ってんだよな?



最初の一ヶ月間は、想いが通じた事で舞い上がって何も気付かなかった。

二ヶ月目には、アレッ?何かおかしい・・・と思った。

そして三ヶ月目、絶対におかしい・・・



大石はいつもと変らず優しい。

俺の体調の変化や気分の乗り具合やそんな事は、大石が一番わかってるし、すぐに気付いてくれる。

三年が引退して、二年と一年だけの部活になってから、ダブルスの練習も格段と増えて、 だからなのか、俺達のコンビネーションは日増しに良くなってる。

そして最近はゴールデンペアなんて名前まで定着しつつあって・・・

そうなんだよ。ダブルスはホントうまく行ってんだよ。

テニスに関しては問題ないんだよな。

コートに入れば大石の事が手に取る様にわかるし、大石もそうだと思う。

なのにコートを一歩出れば、よくわからない。



俺の事好きなんだよな?

なんでいつもと同じなの?

笑顔も仕草も優しさも・・・

付き合ってるなら、もっとこう手繋いだり、キスしたり、抱き合ったり・・・

いろいろあるじゃん!

なんでなんもないの?

これじゃあ俺が告白する前と何にも変ってないんだけど・・・・・・・んっ!?



「ああっっ!!!」



そういえば・・・

今にして思えば告白した時に、俺の事好きかって聞いた時も大石の奴『ああ』しか言ってなかったような・・・


そうだ!絶対そうだ!!!

俺、大石の口から好きって聞いてない!!

最初に言ってくれた『好き』は友達としての好きだから、言って貰った事になんないし・・・

俺、なんでこんな大切な事気付かなかったんだろ・・・

もうすぐ俺の誕生日だっていうのに・・・

こうなったら意地だ!また実力行使してやる!

俺はこの日、興奮しすぎてあまりよく寝れなかった。
















次の日

まだ空はうっすらと明るいぐらいで、なんだか少し肌寒ったけど、大石より 早く着きたかったから、頑張って眠い目を擦りながら家を出て、部室の前で待っていた。


大石まだかなぁ〜


大石は三年が引退した後、手塚のサポート役から、晴れて副部長に格上げされて、それまでも何かと忙しかったのに、副部長になってから更に忙しくなった。


その1つが鍵当番。

こんな面倒な事、誰が引き受けんの?と思うことを大石は律儀にやっている。

先輩も大石のそういう性格をわかってて、任せたんだろうけどさ・・・

朝は早いし・・・帰るのは一番最後になるし・・・大石嫌じゃないのかな?

まぁそのおかげ今日みたいに、二人っきりで話がしたいと思った時は助かるんだけどね。

ていうか・・・本当は毎日早く起きれればいいんだけど・・・

俺にはさすがに無理だな・・・

そんな事を考えてたら、ようやく大石が現れた。



「英二っ! おはよう。どうしたんだ?」

「おはよう大石。俺だってたまには早く来る事だってあんだぞ」



『どうしたんだ?』って、まぁこんなに早く来たの初めてだけどさ、他に言う事はないのか?



「それより早く開けてよ。すっげー冷えた」

「あっごめん。すぐに開けるから」



そう言って大石は部室のドアを開けて、俺を先に入れてくれた。

俺は自分のロッカーに荷物を置いて、大石は部室の窓を開けている。


『少し寒いけど我慢しろよ』とか言いながら・・・


う〜早く閉めて・・・ホント待ってる間に体冷えちゃったよ。


部室の空気を入れ替えが終わって、大石がジャージに着替え始めたから、俺も合わせるように着替え始めた。



「英二いつから待ってたの?」

「う〜ん・・・大石が来る30分前位からかな」

「えっそんなに早く?」

「だって大石が何時に来てるか、わかんなかったし」

「言ってくれれば、時間合わせたのに」

「だって急に思いついたんだから、仕方ないじゃん」

「仕方ないって・・・まぁ別にかまわないけど・・・あれ?英二目の下にクマが出来てない?」

「そっそう?」



そりゃ昨日、大石の事考えてて、殆んど寝てないもんな〜

まぁ寝てないから、早く来れたんだけどね・・・と本題忘れるとこだった。

今日はその為に早く来たのに・・・



「英二 ホントに大丈夫?」

「だからだい・・・うわっ!!」



不意打ち・・・だ。


大石の手が俺の顔を掴んだと思ったら、グイっと無理矢理大石の方に向けられて、至近距離でまじまじと顔を覗きこんでくる。

いつもそうなんだよ。

心配してくれてるんだって事はわかってるけど、何も考えてないその行動に俺はいつもドキドキしてんだぞ。


う〜〜〜もう!ホント大石の奴は・・・


うれしいけど、今は赤くなってる場合じゃないんだった。

俺は大石の胸を押して距離をとった。



「そっそれより大石。俺大石にお願いがあるんだけど・・」

「えっ?どんな?」


大石は俺のお願いの言葉に反応して、首をかしげた。


「もうすぐ俺の誕生日じゃん。だからお祝いしてほしいんだけど」

「あぁ。それなら言われなくても、もちろんちゃんとお祝いするつもりだよ。またみんなで誕生日会するんだろ?」



やっぱり・・・大石は今年もみんなで過すつもりだったんだ。

確かに去年は付き合ってなかったし、二人で過すなんて無理って思って・・・

だけどどうしても大石に祝って貰いたかったから、色々考えたすえに、みんなを巻き込んで、不二の家で誕生日会を開いて貰ったんだけど・・・

だけど今年はそんなのイヤなんだ。



「去年はそうだったけど、今年は二人でしたいの。大石の家で」

「えっ?」

「駄目?」



俺は思いっきり甘えた顔をして、大石を見つめた。

大石は少し考えてたけど、『わかった』って肩をすくめている。

よしっ!

俺は心の中でガッツポーズをして、続けて加えた。



「その日は大石の家でお泊りするからよろしく!」

「ええっ!!」

「駄目?」

「イヤ・・・だけど・・・」



何だよ?駄目なの?だけど俺は絶対に泊まって行くから。

ここはなんとしてもOKしてもらうんだ。



「大石ぃ〜〜 お願い!」



俺はマイ○ロを超えるぐらい、可愛く首をかしげてみた。

こんなに可愛くお願いしてんだから、断れるわけないよな大石。



「・・・わかった。ていうかひょっとして、この事を言う為に早く来たのか?」

「そうだよ。大石にしてはよくわかったじゃん」



ニシシッと笑う俺の顔を見て『まったく・・・』と言いながら、大石も顔が笑っている。

まんざらじゃないって事だよな?

俺はそんな大石の顔を見て、もう一度心の中でガッツポーズをした。

よしっ!!

後は誕生日を待つだけ。


そして大石に好きって言って貰って、キスして貰うんだ。

















誕生日当日

部活も終わって、大石が部誌を書いている。



「あともう少しで終わるから」

「うん」



俺はそれを眺めながら、気持ちは既に大石の家に着いた後の事ばかり考えていた。



大石の事だから、おばさんに俺の誕生日の事言って、料理作って貰ってるんだろな〜

大石の妹ちゃんもホントかわいいしさぁ〜

あ〜ワクワクしてきた。

そんでもって、料理を食べた後は大石の部屋で二人でお祝いして・・・

ムード盛り上げて・・・

後は・・・

ニャハハハハ



「英二・・・部誌終わったけど・・」

「へっ?」



あっ不味い不味い。今思いっきりにやけてた。大石変に思ったかな?



「じゃあ 早速大石の家に行こうぜ!」



俺はにやけ顔を誤魔化すように、勢いよく立ち上がって、大石を見た。大石は少し不思議そうに俺を見てたけど



「そうだな」



と相槌をうって、立ち上がる。

そして二人で部室の戸締りを確認して、いそいそと大石の家に向かった。
















大石の家に着いたら、妹ちゃんが俺達を出迎えてくれた。

大石の家には何度も来てるからか、妹ちゃんもだいぶ俺に懐いて来てくれている。

ホント、カワイイんだよな〜。

ニコニコしてて、素直で、俺もこんな妹ちゃんがほしいよな〜と見てるとつくづく思う。

そんな妹ちゃんと少しじゃれあってから、俺達は取り敢えず大石の部屋に荷物をおいて、二人でリビングに向かった。

俺の心はそれはもうウキウキで、いつも兄ちゃん達や姉ちゃん達に祝って貰うのも嬉しいんだけど、大石の家族に祝って貰うのが、何だか新鮮ですごく興奮する。

それに予想通りたくさんの料理があって、どれもむちゃくちゃうまい!

『大石の母ちゃんは料理の天才だなぁ』って思わず言ってしまうぐらいうまかった。

大石はフォローのつもりか、『英二のお母さんだって料理うまいじゃないか』って言ってたけど、うちのはなんていうか兄弟が多いから、大皿にドーンっていっぱい入っててさ、なんか大雑把なんだよね。確かに味は不味くはないんだけど、見た目が違う。

あっ母ちゃんごめん。








和やかで楽しい宴が一通り終わって、俺達は交代で風呂に入って、大石の部屋に戻ることにした。



「英二。何か飲み物入れてくるから待ってて」



そう言って、大石が部屋を出て行く。

一人残された俺は、大石のベットに寄りかかりながら、濡れた髪をタオルで拭いて、 ボーとアクアリウムを眺めていた。



これからだ・・・今から二人だけの誕生日会

今年は大石何くれるのかな?

去年は歯磨きセットとグリップテープだったよな。

まぁ付き合ってなかったし・・・


イヤ・・・大石に不二のようなプレゼントセンスを求めてるわけじゃないんだ。

だからプレゼントを期待するなんて事はない。

それよりもっと、俺を愛してるっていう確かなものがほしい。

大石は今日の事をどう思っているんだろう?

そういえば大石んちに泊まるのも、付き合ってからは初めてだし。

なんかちょっと、緊張してきた。



「おまたせ英二」

「おっサンキュー」



大石がトレーの上にジュース二つとお菓子を乗せて戻ってきた。

それを俺の座ってる前のテーブルの上に並べた後、机の引き出しから袋を取り出して、向かい合わせに座る。

そして、大石は照れくさそうに、その袋を差し出した。



「英二。改めてお誕生日おめでとう。はいコレ」

「へへっあんがと。開けていい?」

「あんまり期待するなよ。俺、こういうの苦手だから・・・」

「そんなのいいよ。大石から貰えればなんだってうれしい」



俺は大石から受け取ったプレゼントを袋から出した。

えっと・・・



〈リストバンドと救急セット〉



しかもリストバンドは白。真っ白。

真っ白って・・・他の奴もしてなかったっけ?

いやいや・・・これでも大石は俺の為に一生懸命考えてくれたに違いないんだ・・・

なんとな〜く微妙な空気が流れて、大石が申し訳なさそうな顔をしている。



「英二 ごめん。もっと気の利いたものにすればよかったよな」

「そんな事ない!すっごくうれしい!」



俺は慌てて否定した。



「ホント?」

「うん。ホント!ホント!」



俺の言葉に大石が『そっか良かった』って小さく言って、胸をなでおろしている。



「本当は、英二の好きな赤色にしようと思ったんだけど・・・」



・・・赤って・・・リストバンドは決定なんだ・・・



いやいや・・・だから大石に不二のようなプレゼントセンスは求めてないんだ。

大石が俺の事を考えて選んでくれるのが、うれしいんだから。



「大石!ホントにあんがと!大切にするね」



俺は満面の笑みで大石に答えた。



「そっか英二が喜んでくれて、俺もうれしいよ。実はさ俺もお揃いでリストバンド買ったんだ。白だったら、同じのをつけてても違和感無いだろ?」



そう言いながら、大石は机の引き出しから、もう1つリストバンドを出して来た。


えっ?それで白なんだ。俺とお揃いにする為に?

ホント大石っていつも不意打ちなんだよな・・・


俺は自分でも顔がどんどん赤くなっていくのがわかった。



「ただ白だから、気を付けないと他の誰かのと間違えそうだよな。やっぱり他の色にすれば良かったかな?」



大石は頭をかきながら、苦笑している。


そんな事ない。

このリストバンドは、大石がちゃんと俺の事を考えて選んだ白なんだから・・・

これは特別な白だ。

だけど・・・



「大石。ソーイングセットある?」

「ソーイングセット?あるにはあるけど何に使うんだ?」

「いいから、かして」



大石は俺に言われて、家庭科で使うお道具箱みたいなのに入った、ちゃんとしたソーイングセットを出してくれた。

俺はベットに腰掛けて、その中から針と赤い糸とはさみを取り出した。



「じゃあ。大石のリストバンドかして」

「えっ?あっハイ」



俺は大石から受け取ったリストバンドを裏返しにして、赤い糸で〈大石〉って刺繍して 自分のリストバンドには〈エイジ〉って刺繍した。

大石も俺の横に座って『へーうまいもんだな』って関心している。



「ハイ出来上がり。これで間違う事ないだろ?」

「ハハッそうだな。ありがとう英二。なんだか俺がプレゼント貰った気分だよ」

「へへっ!うまいもんだろ。裏側に刺繍したから目立たないし」

「うん。ホントにうまく出来てる。でもなんで赤色にしたんだ?」

「そんなの決まってんじゃん。俺達は赤い糸で結ばれてる恋人同士だろ」

「えっ・・・あっうん。そうだな」



大石はそう言ってリストバンドにしばらく目を落としていたかと思うと、次は赤い糸で刺繍された文字の上を指でなぞっていく。

その仕草がとても愛おしそうに優しく見えて、なんだか自分の心をなでられてるような気がして、俺はたまらず大石に抱きついた。



「大石好きだよ」

「えい・・・」



大石が俺の方を向いた瞬間、そのまま大石の唇を奪ってベットの上に押し倒す。



「ッンンンンンン・・・・」



大石の口からくぐもった声が漏れたけど、俺は息をするのも忘れるぐらい何度も大石の唇に吸い付いて、気が付いたらお互い少し息が上がっていた。



「英二・・・」



何度目かのキスをして、唇が離れた時に大石と目を合わせると、大石の目は今までに見た事のない光を放っていて、俺を呼ぶ声は甘く艶を含んでいた。

そして、俺はその声に反応して自分の体の熱が上がるのを感じた。



「おおいしっ・・・」



自分でも信じられないくらい、甘い声が出た時に大石にグッと腕を掴まれて、アッというまに組み敷かれてしまった。


下から大石を眺める形になって、改めて思う。

大石って男前だよな・・・

切れ長の目に、とおった鼻筋に、シャープな顎ライン・・・

端正な顔立ち・・・

男の顔・・・


そう思った時にまた目が合ってドキッと心臓が跳ねた。



「英二・・・」



もう一度艶を含んだ甘い声に呼ばれて、見つめ直した時に、大石の部屋を誰かがノックした。



〈コンコン!!〉



ええっ?!ヤッヤバイ?!

その音に反応して、俺達はバッと起き上がり、ベットを降りて何事も無かったように距離をとって座る。



「秀一郎。英二くんの布団取りに来てくれる?」



大石の母ちゃんだった。



「あっはい。今行くよ」



ドア越しに聞こえてきた声に答えた大石は、いつもと変らない声に戻ってて、『英二ごめん。すぐ戻るから』と言い残して部屋を出て行った。



ビッビビ・・・ビックリした・・・

あそこで大石の母ちゃんが来なかったら、俺達どおなってたんだろ?

俺はもう一度大石のベットにゴロンと寝転がって、さっきまでのやり取りを思い出した。


大石あんな目するんだもんな・・・

声だって・・・あんな声で呼ばれたら・・・

ヤバイ・・・心臓がドキドキしてきて、顔が熱くなってきた。


恥ずかしくなって、布団をかぶったら、自分の体温で布団がポカポカ暖かくなって、なんだか眠くなってくる。


大石の奴遅いな・・・

早く戻らないと、眠っちゃうぞ!


そう思うとますます、眠くなってきた。




ああ〜もう駄目だ・・・


薄れいく意識の中で、ホントはこんなはずじゃなかったのに・・・と当初の俺の予定を思い出していた。


本当は大石に好きって言って貰って、大石からキスして貰うはずだったのに・・・・

また先に俺からキスしてしまった・・・




まっいいか。

だってこんなに気持ちは満たされている。

大石・・・・好き。



俺は大石の匂いに包まれながら、大石が戻るのを待ちきれず、そのまま深い眠りに落ちていく。




 


ああっ・・・・俺の・・・誕生日が・・・過ぎていく・・・・・・・・・



                 


 

                                                                     END






どの辺でエロかどうか悩んでたかわかりました?殆んど自分でも、何処を悩んでいたのか良くわからないんですが・・・


たぶんエロいのは大石と英二の目です☆