始まりの時
どうしょっかな〜〜 やっぱりやめようかな〜〜
俺は入部届けを手に持って、テニス部の部室前まで来ていた。
最初は職員室に行って顧問の竜崎先生とやらに、渡そうって思ったんだけどさ・・・
なんかテニス部は直接、部長に渡すんだって・・・めんどくせ〜〜
誰が部長かなんてわかんね〜つうの!!
ハァ〜なんていうか・・・本音を言えば、別にテニス部じゃなくてもいいんだよな
俺運動神経にだけは自身があるし、そこそこなんでもこなせるんだよね〜
噂によれば、なんかテニス部の練習って厳しいので有名らしいし・・・
俺厳しいの苦手・・・楽しくないと絶対長続きしない・・・
それがわかってるから、なかなか決心がつかなくて今日になってしまった。
もう大体他の奴はどこかに所属して、クラブ活動を開始しているっていうのに・・・
確か同じクラスの竹本が、もうテニス部に入部届をだしたって言ってたな。
テニス部に入ったら、女の子にモテるからとか言って・・・ホントにモテんのかな?
あっそういえば、いつもニコニコしてるアイツ・・・不二っていったかな・・・
アイツもテニス部って言ってたよな・・・やっぱりテニスって楽しいのかな?
俺の場合は特にテニスには興味なかったんだけど、あの時・・・入学式の時に誰だかわかんないけど
テニス部に入部しなよ
その言葉が心にスーッと入ってきちゃってさ・・・
なぜだかテニス部に入らないといけない気がして・・・
すごくやさしい声だったんだよな・・・
一体あれは誰だったんだろう・・・
やっぱ気になる・・・
「そこで何してるの?」
「うわっ!」
急に声をかけられて、ビックリしながら振り向くとそこには俺と同じ一年らしき奴が、テニスボールがたくさん入ったかごを持って立っていた。
「なっなにって・・・入部届をだそうかな・・・って」
「テニス部に入部するの?」
「いや・・・まだちょっと悩み中・・・お前はテニス部?」
「うん。そうだけど」
「テニス部って厳しいんだろ?」
「そうだね。だけどやりがいはあるよ。それにすごく楽しいんだ」
そいつはそういうと、満面の笑顔を俺に見せた。
うわぁ・・・なんか照れる・・・
「だからさ、テニス部に入部しなよ」
「・・・へっ?」
今のって・・・入学式の時の感じに似てるよな・・・
まさか・・・こいつなのか?
そう思った時にテニスコートの方から先輩らしき人が出てきた。
「こら〜大石!!何やってんだ!早くボール持ってこい!」
「あっはい!すみません!今持って行きます!」
大きな声で先輩に返事をして、また俺の方に振り向くと
「じゃあ、俺いくけど・・・テニス・・・絶対楽しいよ!俺が保証する!」
そう言ってまた満面の笑顔を俺に見せて、テニスコートへと走っていった。
あいつ・・・大石っていうのか・・・
よっし・・・
俺は入部届を握りしめて、テニスコートへ歩き出した。
あいつを信じてみるか・・・
入学式の時の奴も気になるけど、もっと気になる奴を見つけた。
あいつの優しい笑顔・・・もっと見てみたい。
「すみませ〜ん!部長って何処にいますか?」
英二はこの時が大石との出会いだとしばらく思ってます。もう出会ってるんですけどね〜。気付くのはもう少し後の話。