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遠い空   −完結編−

あの空の向こうには、何がある。
私達の未来、過去、そして現実
青い海と白い砂浜、ツンドラの大地に舞う粉雪。時をとめる安息の地。
希望と堕落、賞賛と殴打、やがて訪れる心の平安。
あの空の向こうには何がある。
忘れがたい思い出、過ぎ去った人達、運命というまやかし。
あの空の向こうには、悲しみしかない。喜びに満ちている。
それでも私達は、遠い空をながめる。

待つことの悦び
待たせることの優しさ
待ち人来たらず  それが私達の人生

この言葉と挿入曲「新世界より」だけが物語に受け継がれる四季新作公演「遠い空」は、おいらが仲間達と今年で結成10年目を迎える劇団・北近江夢幻塾の新たな制作方式を見つけ出そうとした作品群です。物語のコンセプトは、待ち続けること。「待つ」「待たされる」・・ある時は主体的に、あるいは客観的状況の中で、それぞれの内面に去来する悲観と楽観、喜びと怒り、諦念と期待。かつて日常的だった「待つこと」「待たせる」ことが必要でない時代は、優しさだけでは生きてゆけない時代なのかも? だから、この作品群には、おいら達が今まで描き続けた「美しい日本人」は登場しませんが、「優しい日本人」の姿がチラホラ??
物語を紡ぐのは、観客と真正面から向かい合う使命を与えられた役者です。だから彼らと物語の状況設定を行い、彼ら自身が稽古場で紡ぎだす<旬>の言葉(台詞)や表現方法(演技力)を最大限に取り入れながら物語を紡ぐ共同作業を行う。それは、海図のない航海、レシピのない料理のようなもので、演出家の仕事は殆どありません。過去公演では稽古は辛くて? 楽しくて? 先が見えない? やっていれない! との陰口や、思い違い、行き違いなども多々あったような気がしますが・・もう忘れました。
今回は劇団公演ではありません。北近江の才能が、「遠い空」の制作に携わってくれました。おいら達の活動拠点・びわ町文化学習センターの主催事業の看板も頂きました。と言う訳で、この初夏、片田舎の町営ホールに懲りない奴等が集まります。新たな物語を紡ぐ同志達によって、昨年の早春公演・演劇実験室から始まった「遠い空」は、ここに完結を迎えるのです。


                          かぜ わたる
【物語の状況設定】

初夏の昼下がり。
ホテルのロビーで、隣り合わせ男と女。
来くるかもしれない女を待つ男と、来ないかもしれない男を待つ女。
何も話したくない男と、何かを話したい女。
現実を受け入れようとする男と、現実から逃げようとする女。
6月の花嫁に逃げられた男と、6月の花嫁に憧れた女。
外科医・藤堂雄一郎と、職業不詳・片桐優。

過去と現実と、二人の未来??
やがて、意味もなく、罪もなく、
交わることのない会話が始まる。



 開演日時   6月19日(土)     午後7時
            6月20日(日)  午後2時30分   両日とも開場は30分前
 
 会 場     びわ町文化学習センター・ホール(リュート・プラザ)

 主 催     びわ町文化学習センター 遠い空制作チーム

 入場料    1500円(当日は200円増)  中学生以下は無料

 脚本・演出    かぜ わたる

 出演      丸山 和彦  片桐 優  北川雄一郎
            橘  博之  杉田 夏樹

 歌唱      桂木 遙 
 演奏      宅間 司   伊藤かをり
 音楽      野崎 稔
 舞台監督    中嶌 正人
 照明      尾崎 耕介  辻本 長
 音響      中島 佳昭
 表紙絵     林 則夫

 協力      NPO音楽村  北近江夢幻塾  


人様に自慢できるような立派な大人にはなれなかったけど

この湖畔の片田舎で 懲りない奴等と物語を紡ぎつづけたいと思う

雨上がりの爽やかなひと時を愛しい人と過ごすように

「遠い空」は四季新作公演です。冬は断念しましたが、まだ完結編が残っています。今時の流行で、「遠い空・完結編制作委員会」を立ち上げ、来春にはリュート・プラザに帰ってきます。多分??

−遠い空・秋公演のパンフレットから−

 結局、春には間に合わず、初夏になってしまいましたが、新たな懲りない奴等と一緒に片田舎の町営ホールに帰ってきました。

 昨秋の「遠い空−フローズン・ハウス−」公演前に職場の慰安旅行(尾崎君も一緒)で草津温泉に向かう車中で読んだ本の中で、こんな文章に出会いました。

「劇団を長く続ける秘訣は何ですか?」

「いい芝居をつくり続けることです!」

劇団を大切にするのではなく、劇団公演を大切に守ってきた。それは組織を守ることが至上ではなく、演劇活動を守ることが大事だと思ったから。団体を守ることと宗教活動を守ることを誤解している宗派のようにならないように。

う〜ん、目からウロコ、鼻から牛乳でした。

劇団を主宰する者の中には、劇団(=組織)を守り、大切にすることとに躍起になり、劇団公演には十分なエネルギーを注いでいない者がいるのでは?? そんな問いかけに、少し心が痛くなりました。だって、劇団員(=特に座長・・)にとって居心地が良く魅力的?な劇団であっても、観客の判断材料は劇団公演でしかない。この十年間、おいらは十分なことができていたのかな(??) 

この自省自問自己批判自己弁護の嵐の中で、四季新作公演「遠い空」作品群の完結に向けて、昨秋から充電期間にはいりました。

いろんな所へ出向きました。凪の日本海から都会の雑踏まで、そこで人間観察をしました。

湖国アーツ☆バザールの実行委員の音楽村・宅間君(今年は彼が実行委員長で、8月28、29日に開催!)と交友を深め、音楽が人間生活に与える様々な効果について知りました。

図書館で乱読を繰り返しました。色んな人と暴飲暴食もしました??

やがて、作品の構想が芽生えました。ホテルのロビーで、そこでなされた会話をそのまま芝居として仕上げる。場面転換もなく、身にふりかかる事件も、大袈裟な演出もない。ただ、そこに来ることの必然だけをもった二人のリアルタイムの1時間を物語として紡ぐ。淡々と続く会話の中から二人の背負ったものが染み出してくるような・・漠然とした構想の中、主演の二人のイメージが出来上がりました。そして、片田舎の町で、今、こんな作品をできる人物は彼らしかいない。

交渉!! 

 年末、二人の出演が決まったことを劇団MLで報告すると、遙さんから「是非、協力します!」と返事がありました。

 昨年12月26日の職場忘年会後に、主演二人と長浜ガストで深夜までネタを練りました。

 芝居やりたい! と劇団に飛び込んできた雄一郎に、一匹の修羅になるよう伝えました。

 劇団「もも」の杉田、橘にエキストラでの出演を依頼しました。舞台の勉強になるから・・の甘い誘いで。

 いつものスタッフが参加・協力を承諾してくれました。

 音楽村・宅間君にも出演を強要しました??

 隣の奥さん(=同僚)にもピアノ演奏で声をかけました。

 リュート・ホールに主催事業の前倒しをお願いしました。

 林君(カモン・C)に表紙絵を頼みました。

 野崎・池内コンビにオリジナル曲を頼みました。

 寺月が、いきなり役者をやりたい!!と言い出しました?

 一人ひとりと出会い、その度に頼みまくって、劇団公演ではない、遠い空の完結に向けての準備が整いました。書斎(=自室)をもたない作家は、台所の片隅でキーボードを叩きました。早朝、深夜・・1ヶ月前に台本ができあがりました。

 和、輪、話の三つの「わ」で、稽古は進みました。本番まで胃が痛くならない稽古は初めてで、ヤケ酒用に買い置いたボトルは減りませんでした。

そして、この日を迎えます。アーツ☆バザールの仲間も手伝いに来てくれました。

本日、ご来場いただいた方には、余りの寒々しい客席で落胆されるでしょう。おいら、湖畔の片田舎まで来て下さった恩は忘れません。いま、遠い空作品群の完結によって、拘わり続けた様々なものを完結しますが、それでも、遠い空を眺め・・いつかまた、みなさんに楽しんで頂ける物語を紡ぎます。

 ほんと、今日は有難うございます。

 かぜ わたる