2020年5月1日 第256話
             
終息・収束

       宝鏡に臨んで、形と影と相見るが如く、
      汝(形)は是れ彼(影)にあらず、
      彼は正に是れ汝である。
 
  宝鏡三昧
   ものが二つ向かい合っている。
   一方があるから他方があり、一方が働いて他方となる。
   両者は不離のものである。形があるから影がうつる。影が映るから形がよく分かる。
   影と形と寸分違わぬから両者は不異不二であるが、形は影でなく、影は形でない。
   両者は不同不一ということです。



WHOは新型コロナウイルス感染症を「COVID-19」 と名付けた


 新型コロナウイルスの感染拡大が続いている中、カミュの小説「ペスト」に注目が集まっています。「ペスト」はフランスのノーベル文学賞作家、アルベール・カミュが1947年に発表した長編小説です。ペストの感染が広がる社会で、感染症という見えない敵と闘う市民の姿を描いています。
 感染症が蔓延する世情では、行政への国民の不満、人々の不安心、愛する人との別離、医療崩壊という深刻な事態など、人々は精神的にも経済的にも大きな不安をかかえた生活をよぎなくされる。ペストが蔓延した時代と、現代の新型コロナウイルスの感染拡大での出来事とは瓜二つです。

 「ペスト」は世界的大流行を起こした致死率の高い感染症・ペストの猛威にさらされた北アフリカの当時フランス領であったアルジェリアの港町、オランを舞台にした小説です。感染拡大を防ぐためにロックダウン(都市封鎖)された都市で、ウイルスという見えない敵と闘う様々な市民の姿を通して、不条理(ものごとの筋道がたたないこと)に直面した時に示される人々の姿を描いています。
 突然降りかかった災厄や大きな困難に直面したときに、人間はどう振るまい、いかに生きるべきかを問いかけているのです。
新型コロナウイルスの蔓延によって外出自粛が続く世相と重なることから注目が集まっているのでしょう。

 中世ヨーロッパでは人口の3分の1が伝染病のペストで死亡した。また1918年から始まったスペイン風邪の大流行では、世界中で5億人以上の人が感染し、死亡者数が2000万人とも 4000万人ともいわれています。スペイン風邪は、記録にある限り、人類が遭遇した最初のインフルエンザの大流行です。
 エボラ出血熱、AIDS、SARSもウイルスによる病気です。このたび中国武漢で発生した新型コロナウイルスの感染は世界中に猛威をふるい、大勢の死者が発生しました。人類の歴史においては、ウイルスとの闘いは幾度もあったのです。

 中国の武漢で発生して全世界に広がった新型コロナウイルスを、世界保健機関WHOは「COVID-19」と名付けました。
 オーストリア政府は、国内の新型コロナウイルスの感染者の数を推定するために無作為に選んだ0歳から94歳までの1500人余りにウイルス検査を行ったところ、全体のおよそ0.3%が陽性となった。このことから、実際の感染者は公表された数の二倍以上に上るとする調査結果を発表しました。またニューヨークでは抗体検査を実施した結果、公表数の10倍の感染者がいると推測している。日本においても実際は公表された感染者の何倍もの人々が感染しているのではないかと推測されます。

ワクチンが開発され治療法が確立されることを待ち望んでいる

 今、地球上に二つのものが大量に発生しています。一つは昆虫のサバクトビバッタという生物であり、もう一つは新型コロナウイルスという非生物です。
 農作物に大被害をもたらすサバクトビバッタが大量に発生している背景には、この昆虫の生息する地域において、湿度と温度がバッタの繁殖に適しており、数年間この状況が続いているため大量の繁殖につながったということですが、無限大に増殖するというものでなく、大量繁殖する条件が変われば自然に消滅します。

 一方、非生物である新型コロナウイルスは自力で増殖できないから、他生物の体内に侵入して、その生物の細胞を利用して自己のコピーを作っていくことで繁殖します。ウイルスの大きさは100ナノメートル、1センチの10万分の1ですが、この微小なものに人類は翻弄され続けてきました。
 
新型コロナウイルスは人に寄生して増殖します。したがって人が近距離に存在していれば侵入します。ところが人の体内に侵入しても、抗体が強ければ増殖できないから消滅していきます。したがって人から人へ感染しない条件は感染しない距離を保つことと、免疫力を発揮する抗体をもつことです。

 地球に存在している微生物から多細胞の生物まで、生命は全てがつながりのもとに
生まれ死んでいきます。そしてざまな生命は、有機物のみならず水や土、塩分等のミネラルなどの無機物ともつながっています。さらに湿度や温度、太陽光が関係して、縁起(条件と原因)のもとに生き死にしています。
 しかしどの生物も無限大に増殖することなく、自然界は絶妙なバランスの上になりたっています。老化や病弱な生物、死んだ生物は他の生物の命のもとになる。ただ人間はこの自然の絶妙なバランスを壊すことによって増殖してきました。非生物であるウイルスのような存在は、自然の絶妙なバランスを壊すものを調整する役割を担っているのかもしれません。

 人類は様々なウイルスと遭遇してきた。近年でも毎年のようにインフルエンザが猛威をふるい、広域な感染により多くの人々が死亡している。新種のウイルスの出現の都度、人類は抗体をつくり有効なワクチンを開発してきました。
 新型コロナウイルスに効くワクチンと治療薬の開発までにはまだ時間がかかるから現在ある治療薬の実用化ができないだろうかと、新型インフルエンザ治療薬のアビガンなど、日本人が開発した薬の応用を含むいくつかの薬についての臨床実験が進められています。予防のためのワクチンが開発され、有効な治療法が確立されることを人々は待ち望んでいます。

新型コロナウイルス後、何が変わるだろうか

 これまでに流行したインフルエンザや感染病は、国民生活や経済活動に大きな影響をあたえてきただけに、新型のウイルスとなれば、よりいっそうの不安要因とみなされます。感染がさらに広がらないかという不安が大きくなっています。
 新型コロナウイルスの感染が終息しないことから、人々は精神的にも経済的にも大きな不安を抱えて、ひたすら堪え忍ぶという生活をよぎなくされています。
 日本政府は感染を押さえ込むということだけでなく、重症者・死者を最小化することと、令和の恐慌を回避するための予算措置を講じて、倒産防止、失業者、自殺者などを含めた社会的経済的損失の最小化を模索してきました。

 IMF国際通貨基金は今年の世界全体の経済成長について、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でマイナス3%にまで落ち込むという見通しを発表していますが、1929年に始まった世界恐慌以降で最悪になるという認識による発表です。これは大幅な落ち込み予想であり、2009年のリーマンショックを大きく下回る水準です。

 新型コロナウイルスが収束した後の世界と日本経済がどのように変わるだろうかということについて、人々の関心が向かい始めています。
1、生産性と効率性の重視、テレワークの増加
 より生産性と効率性を重視人工知能の活用が拡大する。今回の感染拡大防止で初めてテレワークを経験した人が急激に増加しました。今後はテレワーク化が業種によってはかなり進む可能性がある。
2、生産拠点の多元化とサプライチエーンの日本回帰
 新型コロナウイルスの感染拡大でサプライチエーン(供給網)が寸断しました。そのことを受けて政府は企業の生産拠点の再配置を支援するようです。国内に工場を移す、生産ラインを日本回帰させる。部品や原材料の供給を中国など特定の国や地域に過度に依存するリスクを減らす。
3、本来必要とする需要と供給にシフト
 エネルギーや食料・資源などの浪費や無駄遣いをなくするために、過剰な需要と供給を見直し、本来必要とする需要と供給にシフトさせ、内需主導型の経済成長を促す政策転換がはかられる。農業においては6次産業化が進展する。

 新型コロナウイルスが収束した後においては人間関係での連帯感が高まる、生産性と効率性の重視、テレワークの増加、AIの利用拡大、印章のデジタル化などにより働き方改革がすすむ。サプライチエーンの日本回帰、生産拠点の多元化。本来必要とする需要と供給にシフト、農業の6次産業化。教育と技術への投資。こういう価値観が社会に広まる可能性があるでしょう。けれども先の見通せない経済情勢下において、消費の伸びは鈍化し、経営破綻する企業も増加するでしょう。したがって、新型コロナウイルスが収束した後において、中小企業と有能な人材が消滅しないために、今、有効な政府の施策が望まれます。


新型コロナウイルスという虚像

 カミュが小説「ペスト」を書いた時代と、国境を越えて世界全体がつながっているグローバルの現代とを比べると、ウイルス感染のスピードも、感染地域の広がりかたも比較になりません。けれども感染病がもたらす弊害は全く同じです。
 新型コロナウイルスの特徴の一つは、感染しても症状が出るまでの時間が長く、また全く症状が出ない人もあるということです。感染しても8割の人が軽症で治る。だが重症化した場合はそのスピードが早い。重症化率を下げること、高齢者や基礎疾患を持っている人の死亡リスクが高いことから、万一感染した場合にはしっかりとした安静と療養が特に重要であるため、医療崩壊をまねかないことが課題です。

 日本政府は情勢を見極めながら、できるだけ穏当な手段を選択して、経済や生活面でのパニックや損害を最小化しながらも、コロナウイルス流行の収束をめざそうという戦法を模索し実行してきました。密閉空間、密集場所、密接会話の3つの密を避けてくださいと呼びかけている。そして感染しやすい業種の事業者には休業要請がなされています。
 
国民一人一人が感染拡大防止のために「感染させない・感染しない」努力をすべきです。そのためには、感染しない条件として人と人との距離をとり、換気をこころがけ、マスク着用、手洗い消毒の徹底をはかり、手で目と口と鼻に触れないように注意して感染を防ぐことです。そして感染が終息するためには多くの人々が、免疫力を発揮する抗体をもつことです。

 

 洞山良价禅師の著した宝鏡三昧に「宝鏡に臨んで、形と影と相見るが如く、汝(形)は是れ彼(影)にあらず、彼は正に是れ汝である」とあります。
 鏡に自分の姿を映してみると、そこには自分と寸分違わぬ自分の姿が映っています。右手をあげれば鏡に映る自分の姿は左手をあげています。自分は自分であって鏡の自分でない。鏡に映るのは自分の姿であるけれど自分でない。人は目に見える実像を虚像に見誤ってしまったり、観念である虚像を実像と思いこむことがある。それは実像の本質を知らずして虚像と見誤るからです。

 新型コロナウイルスの実像は目に見えないから、人は想像である虚像に恐怖を感じてしまうようです。だが善良な民が新型コロナウイルスとともに恐ろしいと感じているのは、中国では共産党の隠蔽体質であり、日本では仮面政治家や出世主義にとりつかれた官僚かもしれません。
 目に見えない新型コロナウイルスは鏡に映らないけれど、その実像は私たちの身近に存在しています。影の如くつきまとい、人の体内に入り込んで感染を広げているのです。見えない敵である新型コロナウイルスの抗体としての免疫体をつくり出し、感染力に打ち勝ち、爆発的感染を終息させるために、京都大学の藤井聡先生は国民一丸となって努力すべきは、ただ外出を自粛せよということでなく、「感染しない・させない努力運動」を提唱されています。国境を越えて人類が共に手を携えて立ち向かっていけば、新型コロナウイルスの感染拡大は収束できるでしょう。


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