年齢の数え方について

 

                                             

井川 信孝

 

 学校教育の中の同学年でもっとも早く生まれた児童・生徒等の誕生日は、4月2日であることは、意外と知られている。つまり、1学年に存在する児童・生徒等の誕生日は、4月2日から翌年の4月1日だということである。しかし、年度始めである4月1日でなく、4月2日に生まれた者が1学年でもっとも早く生まれた者となる理由については知らない人がほとんどであろうと思われる。

 これから説明を進めていく前提として、年齢については、満年齢で考えていくこととなる根拠として、昭和24年5月24日公布、昭和25年1月1日施行の『年齢のとなえ方に関する法律』を掲げておく。この法律をもって、年齢を数え年によって言い表す従来の慣わしを改め、満年齢をもって、年齢を表すこととしたのである。

 年齢の数え方を規定した法律として、明治35年12月2日公布、明治35年12月22日施行の『年齢の計算に関する法律』があげられる。この法律で、年齢については出生の日から起算し、年齢については、民法第143条の規定を準用することを規定している。民法第143条の規定では、週、月または年によって期間を定めるときは、暦(太陽暦)に従って期間を計算することと週、月または年の始めより期間を起算するときは、その期間は、最後の週、月または年の起算日に相当する日の前日で満了するということを定めている。つまり、年齢の計算については出生の日を起算日とするため、365日目が誕生日の前日となるので、誕生日の前日で満1歳と数えることとなる。

 ほとんどの人が満年齢は誕生日に加齢すると思っているが、法律上は誕生日の前日に加齢すると解釈され、運用されており、常識と法律の間には1日のずれが生じている。

 ちなみに、民法の大原則は、民法第140条に定められているように、週、月または年によって期間を定めるときは、その期間が午前零時より始まる時以外は、その期間の初日は数えずに、翌日から数えることとなる。よって、子どもが生まれた日に1年定期預金を預けると、民法第140条の期間計算法により、翌日から数えて1年(365日)後、すなわち1歳の誕生日に定期預金は満期を迎えることとなる。

 このような矛盾は、『年齢のとなえ方に関する法律』で、「数え年によって言い表す従来のならわしを改めて、『年齢の計算に関する法律』の規定により算定した年数によって言い表す」ことにしたからである。換言すれば、数え年を満年齢に改めたにもかかわらず、その基礎となる日数計算を満にせずに、数えのまま放置したからである。

 法律と常識の矛盾を解消して、誕生日に加齢するように法律を改正してほしいという声もあったようだが、法改正は実現せず、今日に至っている。

 さて、ここで最初に掲げた1学年で最も早く生まれたものの誕生日が4月2日になる理由の説明をしていくこととする。

 学校教育法第22条第1項で、保護者の小学校の就学義務を子どもの満6歳に達した翌日以後における最初の学年の初めから満12歳に達した日の属する学年の終りまでと規定している。

 ここでの『学年』という用語は、「学校で定めた1年間の修学期間」の意であり、「年度」という言葉に置き換えられる。

 子どもが満6歳に達するのが、法律上、誕生日の前日になることは、先に述べたとおりである。つまり、4月1日生まれの子どもが満6歳に達するのは3月31日ということになる。よって、4月1日生まれの子どもが満6歳に達する日(3月31日)の翌日(4月1日)以後における最初の学年の初め(当年4月1日)から満12歳に達した日(3月31日)の属する学年の終りまで小学校に席を置くこととなる。

 一方、4月2日生まれの子どもが満6歳に達するのは4月1日ということになる。よって、4月2日生まれの子どもが満6歳に達する日(4月1日)の翌日(4月2日)以後における最初の学年の初め(翌年4月1日)から満12歳に達した日(4月1日)の属する学年の終りまで小学校に席を置くこととなる。

 このことを言いかえると、小学校に籍を置くためには、4月1日現在6歳の誕生日を迎えておかなければならないことになる。

【参考】

年齢のとなえ方に関する法律

 (昭和24・3・24・法律96号、昭和25・1・1施行)

  @ この法律施行の日以後、国民は、年齢を数え年によって言い表す従来のならわしを改めて、年齢計算に関する法律(明治35年法律第50号)の規定により算定した年数(1年に達しないときは、月数)によってこれを言い表すのを常とするように心がけなければならない。

 

  A この法律施行の日以後、国又は地方公共団体の機関が年齢を言い表す場合においては、当該機関は、前項に規定する年数又は月数によってこれを言い表さなければならない。但し、特にやむを得ない事由により数え年によって年齢を言い表す場合においては、特にその旨を明示しなければならない。

 

 附則(抄)

  A 政府は、国民一般がこの法律の趣旨を理解し、且つ、これを励行するよう特に積極的な指導を行わなければならない。

 

年齢計算に関する法律

 (明治35・12・2・法律50号、明治35・12・22施行)

 @ 年齢は出生の日よりこれを起算す

 A 民法第143条の規定は年齢計算にこれを準用す

 B 明治6年第36号布告(年齢計算方を定む)はこれを廃止す

 

民法第143条

@ 期間を定むるに週、つき又は年をもってしたるときは暦に従ひてこれを算す

  A 週、月又は年の始より期間を起算せざるときは其の期間は最後の週、月又は年に於いて其の起算日に相当する日の前日を以って満了す

  (以下略)

 

民法第140条

期間を定むるに日、週、月又は年を以ってしたるときは期間の初日は之を算入せず但其期間が午前零時より始まるときはこの限りに在らず

 

学校教育法第22条(昭22・3・31・法律第26号)

@ 保護者(子女に対して親権を行う者、親権を行う者のないときは、後見人をいう。以下同じ。)は、子女の満6才に達した日の翌日以後における最初の学年の初から、満12才に達した日の属する学年の終りまで、これを小学校又は盲学校、聾学校若しくは養護学校の小学部に就学させる義務を負う。(以下略)


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