パラオ共和国運用記 パートW (T88DX)

(2001年1月)
                               



初めての海外ひとり旅

 21世紀の始まりをパラオからの無線運用で楽しんできました。実質4日間の運用で、
交信総数は延べ3千局を超えました。この中には大好きな50MHzのオープンも含まれ
ています。

 今回は宿泊したVIPゲストホテルのオーナー(ジョージさん)の無線室をお借りしての
運用でしたが、1KW+ビームアンテナという恵まれた設備のおかげで、北アメリカやヨー
ロッパからのパイルアップを楽しむことができました。

 少々長文ですが、運用記を記します。
  



■ 出発まで
 パラオへの渡航の方法はグァム経由が一般的ですが、数年前よ
り関西空港や名古屋空港からJALチャーター直行便が頻繁に飛
ぶようになり、関西からは大変手軽に渡航することができるように
なりました。もちろん私もこの直行便を利用したのは言うまでもなく
、2000年9月上旬旅行社にコンタクトを取りました。日程はフライ
トスケジュールに合わせて1月1日出発〜6日帰国です。宿泊は
一昨年7月に運用した、VIPゲストホテルです。オーナーのジョー
ジさんはT88GNのコールサインを持つアマチュアで、自らの無線
室を宿泊者に開放して下さっています。今回は私もジョージさんの
無線室をお借りして運用することに決め、ジョージさん宛に無線室
をお借りしたい旨を書いた手紙を出しました。


VIPゲストホテルのアンテナ群



インターネットカフェで
パラオ到着!
 2001年1月2日。深夜の1時20分、パラオ国際空港の滑走路にJAL直行便(B767)の
車輪がタッチダウンしました。これで私にとって4度目のパラオです。
 2時25分、ホテルに到着しました。部屋はシングルの301号室です。荷物もほどかずに
ベッドに潜り込みますが、エアコンの音が「ガラガラ…」と耳障りでなかなか寝付くことができ
ません。いや、これからの4日間のことが頭の中を巡って目がさえてしまったのが正直なとこ
ろです。ようやく眠りについたのは、4時前だったと思います。

 6時45分、早くも目が覚め荷物をほどきにかかりました。そして本来ならば早速無線機の
前に座りたいところなのですが、ここはグッと我慢して朝食と買い物に出かけることにしまし
た。朝食はホテル前に新しくできた、インターネットカフェです。このカフェでは30分間3ドル
でインターネットを使用することができますが、通信回線が細いようで時間帯によってはメー
ルを4〜5通読むだけで30分が過ぎてしまうことがありました。これじゃぁ、パケット通信の方
が早いくらいです。しかしながらパラオに居ながらにしてメールチェックできるのは、一人旅の
身としては心強いものです。


ニッコウパラオから




建設中のK−Bブリッジ
■ 運用開始 そして6mオープン!
 朝食後WCTCマーケットで飲み物や食べ物を買い込んで、いよいよ運用開始です。9時
15分、21MHzSSBでCQを出すと、JAからすぐに応答がありました。さすがにキロワット
の威力はスゴイです。この後JAとWが入り交じったパイルを心地よくさばきました。
 適当に散歩に出たり、食事をしながら運用を続けました。主に18MHzと21MHzを行った
り来たりでしたが、いつもながらヨーロッパの指定無視には閉口です。イライラしながらも時
々ビールでノドを潤しながら、19時までの間に550QSOをログインしました。初日の運用で
800交信を数えました。

 明くる1月3日。この日は6時前に目が覚め、日本から持参したインスタントみそ汁にお餅
を浮かべて、しばしお正月気分を味わいました。
 10時を過ぎた頃、またまたお散歩。この日はホテルニッコウパラオに向かいました。ここ
には時期を同じくして運用されていたT88HA・T88MY/山崎ご夫妻が宿泊されていまし
た。しかしこの炎天下に散歩しているのは私ぐらい。途中あまりにも暑いので帽子と着替え
のポロシャツを買い物しながらのお散歩でした。ニッコウパラオには以前タクシーで行ったこ
とがあったので道も覚えているはずだったのですが、油断は禁物。しっかり途中道に迷って
しまい、気付いたときには知らない村の奥深くまで入り込んでいました。これで40分ほど時
間をロスしてしまいました。ニッコウパラオでは、パラオ独特の果物シャシャップのジュース
でノドを潤しました。
 その後はタクシーを呼んでK−Bブリッジに向かいました。K−Bブリッジは首都のあるコロ
ール島と空港のあるバベルダオブ島を結ぶ橋ですが、96年5月にコンクリート橋が落橋し、
現在日本のゼネコンの手により新しい吊り橋の建設工事が急ピッチで行われています。今
年の11〜12月の完成を目指しているということでした。

 この日の夕方、念願の6mがオープンしました。現地では昼間のノイズレベルが高く、また
信号が弱いのでなかなかピックアップできなかったのですが、時間を追うにつれて信号が強
力になってきました。約1時間半ほどのオープンでしたが、8〜1エリアの東日本を中心に延
べ83局をログインしました。後日談ですが、ブルガリアの局から次のような電子メールが届
いていました。
      Hr is Mike LZ2DF, Today is 03.01.2001. at.08.00 GMT
      I heard T88DX on 50.115 Khz.CW.
と言うわけで、T88DXの信号は北極圏を飛び越えてヨーロッパまで届いていたようです。

■ パラオ3日目
 1月4日。この日もまた朝からウォーキングに出かけました。目的地はマラカル島の
先端にあるPMDC(パラオ水産試験場)。ホテルから1時間半ほどかかりましたが、
海がエメラルドグリーンやマリンブルーに輝き、とても綺麗なところです。
 PMDCからホテルまで歩いて帰ろうかとも思いましたが、さすがに日射病寸前にな
ってしまったので、途中でタクシーのお世話になりました。ちなみにマラカル島からコロ
ールの街中までの運賃は2ドルです。ホテルに帰る前にロックアイランドカフェでボリュ
ームのあるハンバーガー(5ドル)で空腹を満たしました。ここのハンバーガーは肉厚
のビーフパティに野菜がたっぷり。また付け合わせのフライドポテトが山のようです。パ
ラオに来るたびに、このカフェに来るのが楽しみです。

 お昼前にはホテルに戻り、再び21MHzにQRVしました。しかし昼間のハイバンドは
ノイズが多く、またこの時間帯はコンディションもパッとしません。それでも夕方に28
MHzに上がってみると、途端にヨーロッパからパイルを浴びることになりました。こちら
の信号はかなり強力に届いているようですが、肝心のヨーロッパからの電波がS3〜5
のノイズに見え隠れする信号ばかりなので苦労しました。しかしヨーロッパからは、西
太平洋のパラオは“珍”局のようですね。呼んでくる信号に勢いを感じました。これは
北米東海岸の局も同じようで、帰国後私の手元に届いているSASEに東海岸からの
物が目立つのもその現れでしょう。


PMDC近くの公園
■ パラオ最後の日
 1月5日、いよいよパラオ最後の日となってしまいました。いつもの通り朝6時に起き
て、今朝は10MHzCWからのスタートです。アンテナの地上高のせいか非常に良く
飛んでくれました。

 日課になったこの日のウォーキングは、高級リゾートホテル「パラオパシフィックリゾ
ート」のあるアラカベサン島へ。コロール島とアラカベサン島を結ぶ500m長の連絡橋
を渡り、先ずは大統領官邸へ。大統領官邸の近くには国立病院やPNCCと呼ばれる
国営の電話会社があります。PNCCに隣接して、東京FMと日本航空が協力して開設されたFM局(エコパラダイスFM)や、中波放送局(コールサインT8AA)の局舎もあります。アラカベサン島は島全体が小高い山を形成しており、その山の中腹には景色のいいホテルも散在します。前回パラオに来たとき、ホテルのオーナージョージさんが朝食をご馳走してくださったホテルサンライズビラもコロール島を見渡せるポイントにあり、今回もそのホテルに向かって照りつける陽射しの中を歩いて行きました。

 夕方、パラオ最後の運用は21MHzSSBでした。JAとヨーロッパが入り交じるパイルを楽しみ、19時前に全ての運用を終了しました。この頃になって、パラオへ来てから初めての雨が降ってきました。


301号室の第2シャック

■ 日本へ!
 日本への帰国便JAL3460便は、1月6日朝3時30分の出発。にも関わらず、ホテルのBONさんが部屋に迎えに来てくれたのは、日付も変わって
いない23時30分でした。「ちょっと早いんちゃうん?」って思いながらもクルマも来ていることですから、言われるがままに空港に向かいました。30分弱
で空港に着きましたが、当然のことながら空港ロビーには誰一人いません。まぁ遅くなって不安を感じるよりは良いのですが、だーれもいないロビーは逆
に不安でした。幸いなことにロビーのイスでウトウトしている私を見かねてか、コンチネンタルの女性職員が特別に搭乗手続きをしてくれたので、身軽に
なってお茶できたのは助かりました。
 機上の人となり日本が近づくにつれて実生活に引き戻されるようです。機内食のコンビニおにぎり(こんな機内食初めて!)が余計にその気持ちを助長
します。その上、おにぎりの製造元がうちの会社の系列会社でしたから、旅の余韻に浸る間もありませんでした。JAL3460便は、ほぼ定刻の7時50
分に関西空港に着陸。予約しておいたMKタクシーのスカイゲートシャトルで無事帰宅することができました。



T88DX 交信局数
7 10 14 18 21 24 28 50 TOTAL
SSB CW CW SSB CW SSB CW SSB CW SSB CW SSB CW FM AM SSB CW
10 183 213 146 0 198 11 1,734 164 116 31 241 1 49 1 76 7 3,181

 T88DXのQSLカード