えのきどさんと山本氏の間で交わされた会話は、おおよそ以下の通り(かいつまんで抜粋)
<W杯の値段>
えのきど:いくら?
山本 氏:それはちょっと言えない。すみません。
えのきど:だいたいで。
山本氏 :新聞に出てるのがそんなに違ってないって感じかな、ってことも
本当は言っちゃいけない、っていう感じで・・・(苦笑)
えのきど:100何十億って出てましたかねぇ。
山本氏 :出てましたかねぇ。
<W杯の買い方>
えのきど:それはどーやって買うんですか?
ワールドカップ屋とかってないじゃないですか。
「すみませーん、W杯ください」ってできないでしょ?
山本氏 :まぁ、放映権を持っている組織があって。
えのきど:FIFAじゃなくて?
山本氏 :もともとはFIFAが持っていて、買った当時はつぶれてしまったISL、
正確に言うと、その持ち株会社のISMMってところが法律的には持っているんですが、
ビジネス上はISLが持っている。
それの日本でエージェントになっているところがあって、そこを通じて。
<W杯についてくる>
山本氏 :U-17はWカップについてくる。もれなくついてくる。いいものがついてくる。
えのきど:あー、そうなんですか?
そういうの、僕たち、ぜんぜん知らないから。
山本氏 :ついてくるのは、U-17、ワールドユース、コンフェデレーションズカップ、
フットサル世界選手権なんかの他にも、あれやこれや。
えのきど:お楽しみセットみたいな?
山本氏 :お楽しみセットみたいについてくる。そういうもんなんです。
<体力勝負だっ!>
山本氏は、1998年に、ワールドカップの映像はいっさい使わずに、
TVを見ている人だけを延々映す「ワールドカップだけの500時間」という、
語り草になってる番組を制作したという伝説の持ち主だとか。
えのきど:僕と倉敷さんと粕谷さんでやった「12時間TV」の、
あの体力勝負みたいな感じってのは、あきらかに「500時間」の流れを汲むでしょ?
山本氏 :DNAがね(笑)
えのきど:地上波じゃ絶対できようのない、セリエA全試合とか、
500時間サッカーの話みっちりするとか、
12時間、倉敷さんがスイッチングしながら神懸かりのように実況するとか、
そういった体力勝負であり物量作戦であるといった、
「やってるな、スカパー」みたいな伝統をつくったのは、あなたですね?
山本氏 :いや〜、ん、ま、そうかもしれない(笑)
<放映権高騰の裏側>
えのきど:サッカーにおけるテレビマネーとサッカーの質の変化ってのが言われてますが、
そのひとつの部分みたいなものは、山本さんなりスカパーなりが触ってますよね?
山本氏 :結果としてそうなって行ったけど、最初は、それは海の向こうの出来事だし、
本場はそうなんだ、なるほどねぇって感じでいて、
ハッと気がついたら「あ、俺達もじゃん」っていう感じになった。
えのきど:最初の頃、セリエAをWOWOWと競った当時の放映権って、
今の感覚で考えると、ぜんぜん小さかったでしょ?
山本氏 :日本で競ったからあがったわけじゃなくてね、ヨーロッパサッカーの放映権が、
昔チームにあったものをリーグでまとめた方がいいぞってなってたのが、
もう一回チームに戻りはじめて、ヨーロッパでものすごい金額が動き始めたって状況で。
放映権て複数年契約なんですよ。だから、その複数年契約があけたら
俺達も行くぜ、ってとこで並んでたわけですよ。
それで、たまたまイタリアがそのときに当たって。各チームにばらされた。
その各チームにばらされたものを、またまとめる人間がいて。
海外の権利は俺にまとめさせた方がいいよ、って。
えのきど:それは、いい人ですか、悪い人ですか?
山本氏 :いい人か悪い人か、ちょっとわからない。ま、悪い人かな(笑)ほめ言葉として、悪いヤツ。
えのきど:ほぅ、実力者。
山本氏 :まとめたりして。それで放映権があがって。
日本だけじゃなくて、全世界みんなケタが違う。それがイタリアの番で。
その次にフランスの番が来て、その次にどこの番でって・・・。
えのきど:その都度、買っちゃったんですね、番が来る度に(大笑)
<W杯は大丈夫か?>
えのきど:僕はかなり踏み込んだ話も聞きたいんですが、言えないことが多いですよね?
言えることってあるんですか?
山本氏 :あんまりないんですよね。たいへん申し訳ないけど。
なぜ言えないかというと、契約書に書いてあるから。言っちゃいけない、と。
それ破ると、お金は持ってかれるわ、権利はなくなるわ・・・。
えのきど:契約って言えば、ワールドカップがなくなったらどうするって検討は?
山本氏 :してません(苦笑)しなきゃマズイですよね。
えのきど:それこそ中止の場合、戦争条項で、お金が返るか返んないかってあるでしょ?
山本氏 :そうなんだけど、
いままでの契約の中に書いてある条項ではとらえられない事態ですね、これ。
たとえば戦争なの?っていうことがある。
仮に、戦争またはそれに類することであったとしても、日本はそうなの?とか。
これ、どういうケースにあたるの?っていうむずかしいところがある。
でも、むずかしかろうが、なかったらどうにもなんないですけどね(苦笑)
<多いことがいいのか?>
えのきど:TVのサッカー文化の金字塔を打ち立てたと言っていい「ダイヤモンドサッカー」の
金子さんと岡野さんのコンビを、この夏、復活させたのは、
すごくいい企画だったなぁと思ったんですが。
山本氏 :あそこからすべてがはじまってますからね。僕もそうですし、みんな、あれ見て、
あぁこういう風になってやがるんだ、本場のサッカーってものは、って。
えのきど:言ったら、スカパーは「ダイヤモンドサッカー」のこどもみたいなもんですか?
というのは、「ダイヤモンドサッカー」がかつてあったように、
今のこどもたちはスカパーを見て、たとえば倉敷さんの非常に美しい実況とかが
テンポとして組み込まれて、自分史ってものがつくられていくかもしれない。
じゃあ、スカパーは何をしたいのか、ってことなんですけど。
山本氏 :むずかしい・・・いや、むずかしくはないんだ(笑)
僕らが心待ちにしていた「ダイヤモンドサッカー」は1週間に45分だった。
前半見たら、後半は来週で。1週間に、もっと見られればいいな、
2試合あればもっといいな、あしたもあればもっといいな、
再放送もあればもっといいな、と。
えのきど:以前この番組に風間さんがゲストでいらしたとき
“ボーイ・ミーツ・ワールド”って話が出て、「ダイヤモンドサッカー」とか、
俺なんかは「モンティパイソン」も“世界が見られる窓”だった。
だから、スカパーも窓だといいね、って。
山本氏 :うん。
・・・ただね、自分でやってて何だけど、多いことが本当にいいのか、と。
えのきど:自分でそんだけ買ったくせに?!
山本氏 :すごく根源的にある。
えのきど:ひっどい話だな、あーた!(爆)
山本氏 :うーん、、、ま、辞めるから(言っても)いいか。
やっぱ「ダイヤモンドサッカー」の凝縮感っていったらない。
えのきど:こっちが飢えてる状態ですからね。
山本氏 :うん、砂に水がしみ込むように。絶対に見逃さないもんね。
ビデオなんてないから、1週間それだけを心待ちにして、それだけを見る。
ものすごい集中力で。だから、どのコメントもみんな覚えてる。
それを、こんなにやるとどうなのかなぁ、と。
えのきど:あ、あんたなぁ〜!(大笑)