そなたは何処へ

姿月あさとさんの新譜「sonata」、遅ればせながら購入して聴きました。
ファンサイトの掲示板等では絶賛されているんですが、わっちゃ絶賛できないなぁ〜・・・。いや、確かにいいんですよ。これまでのアルバムに比べたら
100倍はいい でもな〜・・・って感じなんですよね。喉に小骨が刺さったまま抜けないみたいな(何じゃそりゃ?・笑)

なんちゅうか「きれいすぎる」んですね、このアルバムは。優雅だなぁ、歌がうまいなぁ、気持ちいいなぁ、、、だけでは、わたしは感動できないタチでして。。。
どっかのWeb新聞の記事に姿月さんのインタビューがのっていて、そこに「癒しの音楽として聴いていただけると嬉しい」というような言葉があったんだけど、わたしは姿月さんに「癒しの音」を求めてはいないんですよねー。だいたい、もともとの音楽的嗜好が癒し系とは正反対だし(UKパンク大好き人間だった・笑)、また何かによって癒されたいとも思わない人間だからかもしれないけど、もっと強烈な激しいモノが欲しいわけですわ。こう、ぐわっと肩をわしづかみにされて、ぐいぐい揺さぶられるみたいな、変な言い方だけど、張り倒されたい、みたいな・・・(マゾか、わたしは・大笑)

元米米の石井さんとのコラボレーション・コンサート「MOON」では男装の麗人という役どころもあってか、ソロになってからの代表曲「月の雫」を宝塚時代の男声に近い声で歌っていたのですが、それに、わたしゃ感動したんですね。あれを期待していたんで余計にガッカリしちゃったのかもしれないですけど。。。
UKの女性シンガーにアニー・レノックス(Annie Lennox)っちゅう人がおりますが、彼女はユーリズミックス(Eurythmics)とゆーユニットでは男装の麗人をやってました。えらいカッコよかったです。男性でも女性でもなく、時に力強く、時にセクシーな、魅力あふれるミューズでした。そういう線はないんですかねぇ・・・?

姿月さんて、お真面目さんなんでしょうね。舞台では役柄にあわせて男声も出すけど、自身のアルバムは姿月あさととして歌う、って感じなんでしょうかねぇ。頑固者でもありますね(笑)宝塚時代の男役としての力強い男声も、女性シンガーとしてのやさしい女神のような歌声も、どれも姿月あさとなんだっての、わかってくれないっすかねぇ? わかっていてもシレッとやっちゃうのは、あまりに厚顔で嫌なのかもしれないけど。。。
Web記事の中には「宝塚を退団して2年。独自の世界観を築きたくて」という言葉があったので、
男役からの脱皮をはかっているのかもしれませんね。蝶でも蛇でも脱皮する時期がいちばん無防備なんですよね。死の危険と隣り合わせなわけで。そういう意味では、石井さんや金子さんという良きスタッフに恵まれてラッキーだし、いい仕事はしてると思うんですよ。してるとは思うんだけど、でもねぇ・・・(どうしても「でも」という言葉が出て来ちゃうなぁ・苦笑)

姿月あさとのファンの多くは宝塚時代からのファンなんでしょ?
わたしは遅れて来たファンだけど、好きになったのは宝塚のビデオからだからなぁ・・・。だから、もいちど、あの張りのある男声の圧倒的な歌唱で魅了されたいと思ってしまふのですね。あの強烈な歌声は、何も宝塚ファンじゃなくても魅了されると思うのに。。。と思うところもあって、あれを封印しちゃうのは残念このうえないのであります。今の姿月あさとは、宝塚の姿月あさとからはじまっているのだし。。。違いますかね?

せやけど、本人が今のじぶんを素直に表現したいと思い、じぶんが気持ちいいと思うことをしてんのに、何ぐだぐだ言うてんねん?!とゆー話もあります(笑)
表現者ってエゴイストなんですよね、究極の。じぶんが面白い、楽しいと思えることしかしない。そげなこたぁ百も二百も承知のうえの残念無念リトマネンなんですよねぇ・・・。アーティストなんだから自己の表現欲求ってのに突き動かされてしまうのは当然のことだな、と思うし。ただ、なんとゆーか、、、それが「癒し系」なんですか?・・・と。
はて・・・。姿月さんは、いったいどちらに行かれるおつもりでせうか?

ま、それでも新しい扉を開いた感はありますので、今後に期待いたします。
やはり同じWeb記事からになりますが「声だけで表現できて、それで感じてもらえるようになりたい」という言葉に可能性を感じるので。実は「sonata」も歌詞がのってる部分以外の声だけの表現が、わたし的には面白かったから。

あと、細かいことを言えば、もうちょっと音を厚くしてもよかったかな?と。
以前のアルバムに比べたら十分に厚いんですけども、ね。J-POPは昔からメロディーを立たせすぎて、スカスカした音が多いから。バックの音だけじゃなくて、主旋律にかぶせていく歌声(専門用語では何て言うんだっけ?)なんかも含めての総合的な音の厚さのことですが。
たまたま今聴いているんで、それを例に出しますが、UKの男性シンガーなんすけどリチャード・アシュクロフト(Richard Ashcroft)という人がいて、元ヴァーヴ(Verve)のヴォーカルの人ですけど、この人のソロアルバムみたいに声が重なって重なって重なってる音づくりがいいな、と。(ちなみにアルバムタイトルは「Alone With Everybody」@東芝EMI)
姿月あさとさんの歌唱力ならできると思います。

(2002/11/17)

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