魔王が圧巻

日生劇場にて上演された音楽ドラマ『シューベルト』〜音楽に生きる〜。
姿月さんがシューベルトを演じるというので観に行ったのですが、結論から言いますと、この芝居では、姿月さんの歌った『魔王』が圧巻。ほんと、この1曲を聴くためだけに金を払っても惜しくはない!と思いました。

『魔王』は音楽の教科書にも載ってて、1回は無理やり聴かされた曲だから、みなさんもご存知だと思いますが、ひとり四役で歌う歌曲。印象的な前奏と衝撃的な歌詞で、一度聴けば心に残る歌です。記憶力の悪いおいらでも「おとーさん、おとうさん、聞こえないのー?」ってとこは覚えてましたもん。で、今回改めて聴いて、すげー歌だな。。。と思いました。

ちなみに、『魔王』はこちらで聴けます。
http://www.ongakushitsu.net/NENPYO/04/SCHUBERT/TUNES/erlkonig.html
イラストのぼうやの表情が変化していくのが何とも。。。最後なんか、、、泣ける(笑)・・・って、どっちやねん!(大笑)
おいらがこどもの頃に聴かされたのはこれだった気がしますが、姿月さんが歌ってたのは口語訳だったような?(1回だけしか観てないし聴いてないから自信はないけど・・・)
あ、『魔王』のアニメーションもありますよ。個人の手づくりってのがスゴイです。
http://yatu.main.jp/maou.swf
ついでにゲーテの詩の対訳ってのを探したところ、こちらにありました。
http://www.damo-net.com/uebersetzung/schubert/d328.htm
大筋は同じだけど細部が違うんですね、、、なんか、この魔王って○リ○ョタ?(爆)いやー、もう、びっくりじゃ・・・などというのは横道邪道ですね。すみません。

邪道には堕ちずに(笑)話を元に戻しますが、『魔王』はすげー歌です。
それを、ひとり四役で歌い分けていた姿月さんもスゲーーー!と思いました。
スゲーーー!と思いつつ、声優さんがひとり何役も演じ分けるがごとしの
某アニメを思い出していたおいらってば、いったい・・・(苦笑)
たぶんですねぇ、目をつぶって聴いても同様の感動を覚えただろうな、と感じたんですね。座ってた席からは裸眼では姿月さんの微細な表情まではわからなかったので、、、でも、姿月さんのお顔の表情が歌の役にあわせて変化しているのだろうなということは容易に想像できました。グワシ!と心をわしづかみされるような歌いっぷりでしたから。それで、声だけで演じる声優さんの仕事がオーバーラップしたのかもしれません。
やっぱり姿月さんは歌がいいですねーーー。ほんと、スンバらしいです。芝居部分も悪くなかったんですけど、歌になった方がより感情が乗るんだろうな。。。
だから、物語が歌で展開されていく『エリザベート』が、そして姿月さんが自ら創作した『THE PRAYER(輪舞編)』が素晴らしかったんでしょうね。

ところで、今回の舞台は「国際ファミリーフェスティバル2004」と銘打たれたイベントの一環だったわけですが、会場は、おいらを含め、大きなおともだち(笑)の姿が目立ちました。数えるほどしかいなかった小さなおともだちは、このお芝居をどう感じたのかなぁ?ってのが、いちばん興味があるところだな。。。

シューベルトが実際に無垢なる魂の人物であったかどうかまでは知らないのですが、今回のお芝居は姿月さんのニンを考慮してのキャラ設定であり脚本だったのだろうな、と推察します。昔の歌舞伎の戯作者もやってたアテ書きってヤツですね。だから、純真無垢なるシューベルトは姿月さんによく似合っていたと思います。
けど、それだけでいいのか?ってのが今回の疑問符でした。
特に、あの幕切れは切なすぎるんでないかい・・・?と思ひました。
音楽だけでなく芸術に生きようとすると貧乏は覚悟しなきゃいけなくて、才能に惚れ込んだ友人達がいることは救いでも、ほとんど世の中からは理解されなくて、好きな人とも結婚できず、純粋(世間知らず、ともゆー)なばかりにサギにあって、病魔におかされた揚げ句に、若くして死んじゃうなんて、つまんねーじゃんか!と思う子もいるかもしれんな。。。などと思ったら寂しくなりました。やっぱさー、安定がいちばんだよねー、なんて、、、それじゃ切ないっすよ、ねぃ?

「それでも、決して、人生の夢をあきらめるべきではないと僕は信じています」というリーフレットにあった作者のお言葉が何やら虚しいっす。「おかあさん、フォローをお願いします」としか読めないじゃあねーですか、、、
会場ではハンカチで涙をぬぐう大きなおともだちの姿が目立ちましたが、切なくさせること、泣かすことが制作者の意図だったのかなぁ・・・泣くことが即ち「感動」なのか?と『セカチュウ』や『冬ソナ』ブームを横目に見ている天の邪鬼なおいらは思うのであった、、、
確かに、感動して泣くことはありますけど、今回は深い感動にまでは至らなかったです。姿月さんの『魔王』の歌いっぷりには感動しましたけど。。。
伝えたいことがあるのなら、そのすべてを舞台に込めろ、というのが制作者の使命では?

ものづくりをすることが好きな人は、おそらく誰でもそうだろうと思うのだけれど、富や名声はあとからついてくるオマケみたいなものだと考えているのではないでせうか。何よりも、つくってるときが楽しくてたまらないし、それこそ寝食を忘れるほど夢中になっちゃたりもするわけで、その瞬間にこそ生きていて、とても幸福だと感じる。
それは何もシューベルトやモーツァルトのような天賦の才に限った話ではなくて、ちょっとしたことでも好きだと思う気持ちがあれば、誰もが味わえるものだと思うのですね。
シューベルトの場合は病魔との苦闘でかなり精神的にも疲れた最期だったみたいですが、それだけに、時空を超えて“瞬間を生きることの悦びや希望”につながる何らかの仕掛けやひと工夫が欲しかった、、、と思ったのはおいらだけでせうか? 姿月さんをはじめ出演者が頑張ってただけに、ちょびっつ残念でありました。。。

あ、そうそう。
姿月さんは、今回、胸が真っ平ら!だったんですけど、サラシでも巻いてたんでしょうか? これは、やっぱ男役に徹するということで、意識してやってるわけですよね? 友人役の男優さんたちと並んでも違和感のないように。
必要とあらば男役に徹するという姿勢に、新たな光を見いだした気がしました。姿月さんには男も女も関係ない、そういう路線を突き進んでいただきたい、と思いました。
で、あわよくばトート閣下を生で拝見したい、なんて・・・ね。
ご都合主義もはなはだしいな。。。それでも望む、むふふのふ、なのだー(笑)

2004.08.03

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