歌とホクロと男と女




姿月あさとさんの芸能生活20周年を記念した「シンフォニック・コンサート」を観に行った。サントリーホールでたった一日だけ2回の公演。初日でもって楽日なので、昼と夜どっちも観た。昼は1階のほぼセンターだけど後ろの方の席で、夜は脇に張り出した位置にある2階席で。2回観て正解だった。昼より夜の方が歌声がだんぜん良かった。で、感想を。


姿月さんが生きて来た中で耳にしたヒット歌謡曲をフルオーケストラにアレンジして歌うという今回の公演。「シンフォニック・コンサート」という名前だけ見た当初は、またクラッシックの名曲に歌詞をつけて歌うのかな〜?と思ってたから、ちょっと意外だった。で、実は、チケットを買うときにちょっと悩んだりもしたんですね。はたして同じものを2回観るだけの価値はあるだろうか、と。。。いやー、ごめんなさい、価値ありました。おいら、
アレンジというものをなめまくってました、はい。平伏であります。なんたって今回のコンサートで最も強烈な印象として残ったのが、編曲ってすげーっ!ってことだったから。伴奏ってあるじゃないですか、演奏じゃなくて伴奏。その、歌に寄り添う演奏をフルオーケストラ用に仕上げて、それをバックに歌うのかな〜?ぐらいにしか思ってなかったので、丸々つくりかえるとは!に度肝を抜かれましたよ。あの歌がこーんなになっちゃうんだー!ってのを、まざまざと見せつけてくれたとゆーか聴かせてくれちゃったわけで。。。改めて編曲という文字を見れば「曲を編む」なので、文字通り曲を編み直したということになるんでしょうけども、ほんとーに目からウロコでした。
でもって、その原曲から大きく離れちゃったかもしんない曲をも含む20曲を、つくった先生達が見守る前で、
おそらく譜面通りにキッチリ堂々と歌い上げた姿月さんもすげー! 「卒業写真」 赤い彗星も真っ青な”通常の3倍”はあろうかという早さ。早口言葉を歌い上げてるようなもんですよねぇ。カエルぴょこぴょみぴょこぴょこ(笑)それ以上に変態曲だったのが「どんなときも」。あれってシンコペーションの多用なんすかね? 専門的なことはよくわからんのですが、歌の区切り部分?が異様に多くて、それも変なとこで区切られているから拍子がうまくとれなくて、頭の中で原曲に重ねあわせると「あにゃにゃ!?」となる。3日間何とか歌おうと試みたけど歌えなくて困った姿月さんが、つくった先生に歌ってみてくださいよーとお願いしたら、つくった本人も歌えなかったとゆー裏話が紹介されてましたが、紹介してもらわなければ「何コレ? 姿月あさとって歌ヘタ?」と思われかねない編曲でしたね〜ぃ。姿月さん、公演が終わったら殺す!と言ったそうですが(笑)結局は歌いきったわけでしょう? ほんとよく歌ったよ、姿月さんスゲー!と思いました。
そういう変態ブチコロス曲も含めていろいろ歌った中で、おいらの印象に残ったのは、まず
「翼をください」。この曲は、いっときサッカー日本代表の応援歌レパートリーとしてサポーターが歌ってたこともありますが、おいら自身すごーく好きだから。姿月さんも丁寧に歌っていて、コンサート2曲目にして涙がこぼれました。ほんと、いい歌や〜! 続いては「秋桜」。三枝氏は「極寒のロシア赤の広場」、服部克久氏は「これから戦争に赴くみたい」てな印象を述べてましたが、確かに歌詞にある「そんな小春日和の穏やかな日」とは大きくかけ離れた陰鬱なイメージをも聴く者に抱かせる重厚な曲。編曲にあわせて姿月さんの声も骨太で、なんとも言えん凄みすら感じられて。。。歌詞の内容無視っちゃあ無視なんすけども、ものすごーく「好きだなコレ!」と思いました。「大都会」は最初のパートのキーの高さで有名な曲なので、イントロ部分からドキドキしながら聴いたのですが、もうバッチリ! 夜の部の方が全体的に潔い歌い上げっぷりで「ブラボー!」の声がかかってましたね。そして「地上の星」。これは原曲も骨太なんですが、それに輪を何重にもかけた感じに仕上げてあって感動しました。「島唄」〜「地上の星」へとつながる構成もよかったのかもしれませんが、どわーっと涙が流れました。中島みゆきさんも好きですが、姿月さんの歌声で聴く「地上の星」は最高だなぁ。姿月さんの低音が好きだからってのもあるんでしょう、ドスがきいた歌声が素敵でした。もう何度でも聴きたい。DVDが出るのであれば絶対に買ってリピートするだろうな。
アンコール曲は姿月さんの持ち歌から
「祈り」「愛と死の輪舞」。素晴らしかったのは言うまでもありません。

ホクロ
おいら、ずーっと
姿月さんの骨が好き!(笑)と言い続けてきましたが、今回もたっぷりと拝ませていただきましたよ、鎖骨と肩甲骨! いやはや、なーんであんなに美しい骨をもって生まれてきた人がいるんでしょうねぃ。。。うっとり。と骨フェチにとってはたまらん姿月さんですが、今回、新たな魅力としてホクロ!追加(爆)
観に行かれた方は、たぶんみなさんお気づきになったとは思うのですが、背骨の真ん中あたりにいっこ、ぽつんとホクロがございました。見つけたのは客席の方にまで降りて来て「ああ無情」を歌ったときのことです。おいらの席は1階席の後ろの方だったんですが裸眼でもくっきりとわかりました。背中がくりぬかれたお衣装の、ほぼ真ん中ぐらいの位置にぽつんと黒い点を見つけたときは
「うきゃー!」(笑)なめらかな陶器のごとき白き肌理にぽつりと落ちたる墨色の。。。生まれてはじめて、ときめくホクロに出会い、鑑賞せずにはいられませんでした。裸眼で追える限りは、ただ一点集中。ピンポイントでホクロだけをじっと見つめ続けていたおいら・・・そう間違いなく変態です(大笑)でも、同じようにホクロに釘付けになった方はきっといらっしゃるはず。手を伸ばしたら触れるくらいのところに座ってた人がうらやましーと思ったおいらであった。それにしても、ほんと陶器みたいだよね、あのお背中は。眼福眼福。。。

男と女
今回の姿月さんは、まず燕尾服で登場。これが
実にカッコよかった! 手足の長い方はカッコいいですね。で、その男装?で「魅せられて」を歌ったときは「エロい!」(あ、表現悪いかな〜?)と思っちゃいました。一緒に並べて比べられないから確信は持てないけど、女が女のままで女をさらすよりも、女が男を借りて女を表現する方がエロくないっすか? 姿月さんの歌い方がこれまで聴いた中で最も艶っぽかったせいかもしれないですけども。。。「はぁぁ〜」の吐息部分ですね、すげー色気がありました。それにしても、そのあとのドレス姿よりも燕尾服の方が色っぽく感じられるって、どゆこと?(苦笑)ドレス姿は美しい鎖骨や肩甲骨が堪能できていいんですけども、カラダの細さ薄さが際立って、さほど色っぽいとは思えないんですよね。むしろ燕尾服で男のなりをして女を歌った方が色っぽい。ギャップから生じる魅力なんでしょうかねぃ。。。ちょっと面白いなーと思いました。
あ、そうだ。色っぽいと言えば、バックのスクリーンに映し出された写真。人体、特に唇の抽出アップはマン・レイあたりからはじまって広告写真なんかでもよく使われる手法で、性的イメージを付与する記号とか言われるものですが、そんな理屈は関係なくキレイなものはキレイで、
骨フェチには手がたまりませんでした。手の甲の骨の感じとか指の長さとか間接とか全体をひっくるめての表情とか。ただ、バックスクリーンを観てると、目の前にいる生の姿月さん本人から目を離すことにもなり、どこ観りゃいいんじゃー!な感じもありました。これから大阪公演に行かれる方は、カメレオンになってください。片目で姿月さんを追いかけ、もう一方の片目でバックスクリーンを見つめる。。。無理だ、ちゅうの(笑)
男と女に関して感じたもうひとつは、作曲家の中で
唯一の女性が最も骨太な曲をつくられたということ。これ、いちばん興味深かったことでもあります。今回の歌の中で、おいらが最も好きだー!と思ったのが「秋桜」「地上の星」で、どちらも書上さんという女性作曲家の手によるもの。男性作曲家がつくった他の曲に比べ、より重厚で骨太で厳しさのある曲に聴こえたんですよねぃ。。。原曲のイメージをどれだけ踏襲するかの程度の差もあるかとは思いますし、聴き手の趣味による感じ方の差もデカイわけですが、それにしてもズシン!と腹にくる重さでした。どちらも世界と決別してはいないけれども一線を画した孤高な印象が感じられて好きなんだよなぁ。。。
男性作曲家陣の中でけっこう好きかも〜?とゆーか、盛り上げどころを知ってらっしゃる〜!と思ったのは千住明さん。担当したのが
「昴」「涙そうそう」だから尚更かもしれませんが、オーケストラだけの聴かせどころもキッチリつくってらして、次第次第に盛り上がって行って感極まる感じが良かったです。ツボを押さえるのが巧いな〜という感じ。「作曲家界の指圧師」の称号を勝手に差し上げることに(笑)
でも、やっぱ書上さんの曲がいちばんかな、おいら的には。名前を忘れんようにしとこ!と思ったぐらいですし。で、書上さんのつくった楽曲が試聴できるサイトを紹介してくださった方がいたので聴いてみたら、曲調や打ち込みの入れ方がビョークを彷彿とさせるものでした。アーティストにとって誰かに似てると言われるのは最も忌み嫌うところではあるとは思うけど、似てると思っちゃったんだから仕方がない。ソロの曲を聴くと、骨太と言うよりも女性ならではの繊細さの方が上回ってる感じがありましたが、独特の冷めた温度とゆーか孤高な印象は変わらずで、けっこう好きだな〜と思いました。ただ難を言わせてもらうなら歌声が弱い。吠えるような唸るような野性を感じさせる歌声があった方が、おいらは好き。静謐なばかりでなく心のままに疾走していくような曲があったら、さらにベストと言ったところでしょうか。アルバム全部を聴いたら、そういう曲もあったりすんのかな? それにしても、こーゆー曲をつくる人が日本にもいたのね、ということで、すごい収穫でした。
姿月さんにはまた書上さんと組んでいただいて、新しいステージを見せてほしいものだなぁ。。。そのときは「眠らない音」の小林さんにも構成または作詞で参加してほしいな。希有なる才能をもった女たちで創り出す世界はどんなものだろう? それが観てみたい、と思ってしまったおいらでした。

2007.03.31




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