さぎむすめ
鷺娘
【見どころ】
まずは、幕開きの詩的な美しさですね。冷たい雪の降り続く中に、
白無垢、白い綿帽子姿の花嫁がポツンと立っているという、しんとした寂しさ。
で、鷺の羽ばたきなんかを見せる振りをまじえながらの、
恋する女の苦しい心を表現する踊りが、なんとも言えず美しいんですねぇ。
白無垢を引く抜くと町娘に変わり、最後はぶっ返りになって
再び鷺の精を暗示するというのも見どころでやんす。
あと、役者さんによって、出と幕切れの演出がいろいろあるみたいなので、
何度か見る機会があったら、その辺を比べてみるのも面白いかも。
【あらすじ】
雪がしんしんと降り続く、一面の銀世界。川のほとりの柳の木のそばに、
蛇の目傘をさした花嫁姿の娘がしょんぼりとたたずんでいる。
この娘、実は鷺の化身。
恋に悩む女の苦しい胸のうち、男への恨みを踊りはじめる。
やがて町娘の姿で華やかな恋心を表現していたが、恋に迷った娘は
いつしか白鷺となり、地獄の責めの苦しさに羽をはばたかせ・・・。
【うんちく】
宝暦十二年(1762年)初演。バレエの「瀕死の白鳥」と似た部分もあるが、
初演は「鷺娘」の方がはるかに早い、とか。
女形舞踊の代表作品なんだが、これ、初演以後、永らく埋もれていたらしい。
それを、明治二十五年に九代目市川團十郎が復活上演してくれたから
今の舞台がある、ということだ。
なるほど。九代目が歌舞伎の神様みたいに言われるのには、
こうした大きな貢献があるからなんですねぇ。