なるかみ
鳴神

【見どころ】
歌舞伎十八番というからには格調高いのかなぁ・・・
なんて思って見たのに、椅子からズッコケそうになるくらい(笑)
いい意味で大外しに外してくれた演目ざんす。
これが歌舞伎か、と目からウロコがボロっと落ちた。そんな感じ。
で、なんちゅーても、おおらかなお色気ってゆ〜んですかねぇ、これの魅力は。
鳴神上人雲の絶間姫とのやりとりが、あっけらかんとエッチぃで面白い。
急に差し込みの来た絶間姫を介抱してやろうと懐に手を入れた鳴神上人、
「あじなものが手にさわった。・・・ありゃなんじゃ」
「お師匠様としたことが、ありゃ乳でござんすわいなぁ」(爆笑)
その後のやりとりも、実は、かなりキワドイんですわ。
えらい上人の弟子のわりにはデキの悪そうな(笑)白雲坊黒雲坊
かけあいもかなり下世話だし(あぁ、もっと言葉が分かればなぁ〜。ため息)
この芝居、下品にならない手前のあたりで止めるのが難しいとこらしいんですが、
けど、江戸人は案外、下世話で際どいのを、うひゃひゃなんて
喜んで見ていたんぢゃねーか、などと思うんですけどねぇ・・・。
さて。で、あとの見どころは、最後に鳴神上人が怒りまくる荒事の演技ですね。
隈取りをして、髪型も怒髪天をつくって感じに替わってるし、
衣裳もぶっかえり柱巻きの見得とか不動の見得とかと名前のついた、
いくつかの見得をするのも見ものでやんす。

【あらすじ】
朝廷に恨みを持つ鳴神上人が雨を降らせる竜神を滝壷に封じ込めてしまったため、
雨が一滴も降らず、井戸の水も枯れ果てている。困った朝廷は、
なんと色仕掛けで上人の法力を破ろうとするというお話なんですね〜。
上人がこもる北山の岩窟につかわされてきたのは雲の絶間姫という絶世の美女
夫の形見の薄衣を洗いたくても井戸の水も干上がっているから難儀して、
おなごの身で山登り、とかゆ〜て来るんですが、なんで怪しいと思わんのか(笑)
そのうえ、鳴神上人は話し好き。亡くなった夫と絶間姫のイチャイチャ話
身を入れて聞いてるうちに、檀上から転がり落ちて失神(爆)
すかさず絶間姫が口移しで水を飲ませると気がついた。
そこで、上人さん、むかし一角仙人が色仕掛けに引っ掛かった話を思い出し、
絶間姫を疑う(お〜、やっと気がつきましたな。笑)のですが、
疑われては生きていられない、ほんとは弟子になりたくて来たのにぃ!
と滝壷に身を投げようとする絶間姫。
それを押しとどめて、ならば弟子にしてやろう、と鳴神上人。
弟子の白雲坊黒雲坊に剃刀と袈裟を取りに行かせることに(おやおや)
これで、やっとふたりきり。そしたら、突然、絶間姫に差し込みが・・・(笑)
上人さん、やさしいから、介抱してやろうと絶間姫の懐に手を入れた。
生まれてはじめて女体に触れて、色香に迷った上人さん、
夫婦になろうと迫るわ迫るわ(笑)。それじゃ誓いの杯を交わしましょ、と
軽くいなされ、勧められるまま酒を飲み、なんと不覚にも寝込んでしまった。
そのスキに、絶間姫が竜神を封じ込めていたしめ縄を切ると、とたんの大雨。
お役御免の絶間姫が逃げ去ったあとで、やっと事の次第を知った鳴神上人、
怒りまくって絶間姫のあとを追いかけるのであった。

【うんちく】
初演は寛保二年(1742年)。のちに七代目市川団十郎によって
歌舞伎十八番に制定された後、しばらく上演が途絶えていたのを、
明治四十三年(1910年)に復活上演され、以来、人気演目になっている。
ところで、これ、「雷神不動北山桜(なるかみふどうきたやまざくら)」という
外題で上演された、五段にわたる時代物狂言のうちの一部分が、
一幕ものとして独立し、現在のカタチで残ったものなんだそうでありんすよ。
ともに歌舞伎十八番の「毛抜」「不動」も、同じ狂言から分離独立したんだそうな。
「毛抜」が三段目、「鳴神」が四段目、「不動」が五段目の大切だって。
はぁ〜。・・・ってことは、むかしの人は、
一度で何度もおいしい思いが味わえたってことかいな???