しゅんきょうかがみじし
春興鏡獅子

【別の名前】
かがみじし
鏡獅子  というのが通称。

【見どころ】
可憐な娘が勇壮な獅子に変わる変化の妙。その一連。
まずは弥生引込み。ほら、手にした獅子頭が勝手に動いてるのよ、
それに引っ張られてるのよ、と見せる芸。すばらしー。パチパチ(拍手)
ほんで、着替えてからの、獅子の精出端いよっ、待ってましたぁ!
わっちゃぁ、ここが大好き。もう鳥肌立っちゃうくらい(爆)
花道をしずしずと進んできたと思ったら、途中でピタと立ち止まって、
前を向いたそのままの姿勢で、今度はもの凄い早さで後ずさりして揚幕の中へ。
で、再び悠然と出てくる。百獣の王の貫録で。あぁ、堪えられねぇ!
なんつーか、劇場に漂う空気からして違うのよ。いいっ!(笑)
(途中の胡蝶の舞はちょっとかったるいけど、着替え中だからしゃーないか。苦笑)
もちろん、獅子つったら豪快な毛振りも見ものざんす。

【あらすじ】
江戸城内の鏡開きに先立って行われる行事で
技芸を披露する役に選ばれた弥生が、老女と局に連れ出されてくる。
最初は恥じらっていたが、観念して美しく可憐に舞う。
しだいに舞に没頭していく弥生。
祭壇に置いてあった手獅子を取って舞いはじめると、
手にした獅子頭は弥生の意志とは関係なく勝手に動き出してしまい、
弥生が袖で押さえようとしても止まらない。それどころか、
獅子頭は強引に弥生を引きずったまま、いずこかへ消え去ってしまった。
そのあとに胡蝶の精があらわれて、牡丹の花と戯れるように舞う。
やがて静けさが戻り、張りつめた空気の中に、勇壮な獅子の精があらわれる。
獅子の精は、長い毛を豪快に振り立て舞い狂うのだった。

【うんちく】
明治二十六年(1893年)初演。福地桜痴の作詞。
九代目團十郎が自ら振付けして演じ、市川家の新しい芸として
新歌舞伎十八番のひとつに選んだ作品。
能の「石橋」に題材を求めた石橋物の代表作である。