ふなべんけい
船弁慶【見どころ】
静と動の対比が面白い舞台です。
前シテの優雅な静御前と後シテの妖気漂う知盛の怨霊という、
性根の異なる男女をひとりで踊り分けるというのが見どころなんですが、
知盛の怨霊になってからの踊りが、とにかくスゴイ!のひと言です。
特に、なぎなたを首にかけて、ぐるぐる回転しながらの幕外の引込みは圧巻。
潮に巻き込まれるようにして消えていく感じが、凄いフリで表現されています。
だから、三頭身がちょい笑える(失礼!)前シテの静御前の踊りで
どんなに眠くなっても(苦笑)眠りこけてはいけません!
とか言いながら、わっちゃぁ、しっかり静では爆睡しておったけどね(自爆)
それも、いちばん前のど真ん中の席で(演じてた役者さん、ごめんちゃい。ぺこり)。
ところがですよ、あ〜た、知盛の怨霊に変わって出てきたとたん、
さっきまでの眠気もビュンッとブッ飛んだ。そりゃぁ、もう凄かったんだからぁ!
眠気覚ましには「ブラックガムより知盛が怨霊」でござんすよ。
【あらすじ】
兄の頼朝の討手から逃れる旅を続ける義経一行が大物浦にたどり着いた。
人目をはばからなくてはいけない旅だから、と、ここまで伴ってきた静御前を
都へ帰すことにする義経。静自身も足手まといになってはいけないと、
都に戻ることを承知し、別れの悲しみをこらえながら舞いを踊る。
やがて船の用意ができ、いよいよ出航。祝いにと、舟長が住吉踊りを披露する。
そして船は瀬戸内の海へと漕ぎ出された。が、しばらくすると
空に黒雲、風向きが変わり、船はいっこうに進まなくなる。
と、あら不思議、海上に西国で滅びた平家一門の公達の怨霊が浮かび上がった。
中でも、平知盛の怨霊はなぎなたを小脇に抱え、凄まじい形相で、
義経一行に向かって襲いかかってきたではないか。
が、“そのとき義経少しも騒がず”、大刀を抜いて立ち向かう。
弁慶も数珠をもみながら、一心不乱に天に祈った。その祈りが通じたのか、
やがて知盛の怨霊は潮に巻かれながら遠ざかっていった。
【うんちく】
明治十八年(1885年)、九代目市川團十郎によって初演。作者は河竹黙阿弥。
能の「船弁慶」を題材にした松羽目物の代表作で、新歌舞伎十八番のひとつ。
九代目に次いで六代目尾上菊五郎が名舞台を残し、現在に至っている演目とのこと。
知盛の怨霊は、出端に、海上をすべってくるような特殊な足運びを見せる。
これは“波乗り”と呼ばれているそうだ。こんど、ちゃんと見てみよう(苦笑)
あと、知盛の怨霊と義経一行との激しい対立は
“ハタラキ”とも呼ばれるみたいだが、なぜそう言うのかは分かりまへん。