かいだんぼたんどうろう
怪談牡丹燈籠

【見どころ】
牡丹燈籠といえば「下駄の音がカラ〜ンコロン」ていうのが有名で、
わっちも実はそこしか知らなかったんだけど、お話のごくごく一部だったんですよ。
全体を通せば、怪談というより人間の業を描いた作品って感じ。
色に眩んだお国源次郎が身の破滅も省みず突っ走って行くところや、
金に目が眩んで世話になった新三郎を取り殺すのに手をかした
伴蔵お峰の夫婦は、結局は因果応報で死んでしまうわけだけど、
勧善懲悪を諭す雰囲気でもないのが好感が持てた。
この芝居の中でしどころが多そうなのも、やはり上記の四名。
お露さんには悪いけど、ね。特に伴蔵とお峰の夫婦は可笑しくて、こわい。

【あらすじ】
旗本の飯島平左衛門の娘お露は、一目惚れした相手の
萩原新三郎に恋い焦がれ死にし、乳母のお米もあとを追って死んでしまった。
それを聞いて以来、新三郎は念仏三昧の日々を送っていたのだった。
お盆の十三夜。新三郎の家に、なんと、お米に伴われてお露が訪ねてきた。
その手には牡丹燈籠が下げられている。
死んだと聞かされたふたりの訪れにビックリする新三郎だったが、
久しぶりの再会を喜び、睦みあうふたり。それを下男の伴蔵が覗いていた。
蛍が飛び交う蚊帳の中をよく見れば、新三郎が抱いているのは骸骨・・・。

平左衛門の後添えのお国は隣家の次男源次郎と実はいい仲。
浮気現場を平左衛門に見つかっても悪びれず、源次郎をけしかけて
平左衛門を斬り殺させる。そのふたりのそばに蛍が飛び交う・・・。

伴蔵の様子がどうもおかしい。蚊帳の中で誰かと話しているようなので、
女房のお峰は蚊帳を取っ払うと、伴蔵はひとりで、汗びっしょり。
新三郎を守るために貼ったお札をはがし、新三郎に持たせた死霊除けの尊像
取り上げてくれないか、とお米頼みに来たのだと言う。
それを聞いた女房のお峰は、突飛なことを言い出した。
百両持ってきておくんなさりゃぁ、お札をはがして差し上げます、と言え」
やがてあらわれたお米に話をすると、金は明晩と約束。
これで貧乏暮らしとはおさらばだ、と夫婦は笑いが止まらない。

翌日、夫婦ふたりで新三郎を見舞う伴蔵お峰
金無垢の尊像をすり替えて、幽霊を待っていると、空から小判が降ってくる。
お札もはがすと、お露お米は礼を言って家の中に。
結局、幽霊に手招きされて、新三郎はあの世へと旅立った。

それから一年。伴蔵お峰の夫婦は幽霊からもらった百両を懐に故郷に帰り、
今では関口屋という荒物商いの店を構え、たいそう繁盛していた。
一方、源次郎お国は平左衛門を殺したあと、有り金を奪って逃げたのだが、
途中で源次郎の足が萎え、身ぐるみもすっかり盗まれて哀れな暮らし。
お国が料理屋で酌婦として稼ぐうちに、関口屋と知りあい深い仲になっていた。
亭主の浮気を人から聞いて知ったお峰は、帰ってきた伴蔵と一悶着。
頭に血の上ったお峰は、つい幽霊からもらった百両のことを口走ってしまう。

お国は、同僚の姉が平左衛門殺害時にとばっちりで死んだ女中だと知る。
因縁におののいたお国は源次郎にすがりつくが、源次郎は刀を抜いて暗闇に切りかかり、
足をもつれさせ転んだ拍子に自らを突き刺してしまう。
それに抱きついて、お国も果てる。蛍だけが妖しく光っていた・・・。

さて、土手を行くのは伴蔵お峰の夫婦。
悪い噂が広まる前に逃げようと、例の金無垢の尊像を掘り出しに来たのだ。
お峰に見張りをさせて伴蔵が掘り出しにかかったと思いきや、
なんと隠し持った脇差でお峰の横腹を突く伴蔵。
また何かの拍子に旧悪をわめかれてはたまらないと口封じの殺害
帰ろうとすると、川の中から白い手が伸びてきて、伴蔵を引きずり込む。
そして、あとには蛍が飛び交うだけ・・・。

【うんちく】
文久元年(1861年)作の三遊亭円朝の怪談噺がもと。
三世河竹新七が歌舞伎用に脚色し明治二十五年に初演されたものと、
昭和四十九年に文学座のために書き下ろされて初演されたものを
のちに歌舞伎に移植したものと、ふた通りあるらしい。
河竹新七作のものは最近ではあまり舞台にかからないようだ。
わっちが見たのも大西信行脚本の方らしいです。
ところで、歌舞伎で大金というと百両と相場が決まっています(ほんとか?)が、
今のお金に直せば750万円ぐらい(こちらで換算)。
意外と安い気がしますが、江戸時代には、百両あれば大店が持てたんですね。