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Q0 エアコンの効きを良くするには  XJ6・Sr3

   日本の夏にエアコンが効かないのは地獄ですね、でもその昔はとてもエアコン付きの車など望める
  訳もなく、三角窓を開けて精一杯外気を入れて走ってましたが今時はエアコンのない車が珍しくなって
  しまいました。
   ここでは私が経験したことや色々調べた結果を纏めてみました、あくまで素人の話ですのでそれを
  ご理解頂いた上で御覧下さい。

  (項目)
   1.冷房の原理
   2.カーエアコンの構成機器
   3.各機器の説明
   4.エアコンの主な故障
   5.エアコンの効きを良くするには

 1.冷房の原理

  • カーエアコンや家庭用のエアコン(エアーコンディショナー)は一般的にフロンガス(R12,R22、R134a)と言う冷媒を使い、フロンが液体の状態から気体の状態に変化するときの気化熱を利用して冷却を行います。
  • 分かりやすく言えば注射をするときに消毒のためにアルコールを肌に塗りますがス〜ッと冷えるのを感じます、エアコンはこうした液体が気体に変化する時に熱を奪う性質が利用されています。

 2.カーエアコンの構成機器
  • カーエアコンを構成している機器は、次の鳥瞰図に書かれているような部品を使いフロンの液化と気化を繰り返して熱の移動を行う熱交換器です。
エアコンシステム鳥瞰図   (Jaguar XJ6 Series3)
クリックすると別画面で大きな画像が見られます
1. Compressor
2. Evaporator
3. Expansion valve
4. Vacuum valve
5. In-car sensor
6. Ambient tenperature sensor
7. Water contorol valve
8. Vacuum reservoir
9. Non-retrn valve
10. Water valve temperature switch
11. Condenser
12. Receiver-drier
13. High pressure schrader valve
14. Low pressure schrader valve
15. Heater matrix

  • その内の主要機器は次のとおりです。

    1. コンプレッサー      (圧縮器)
    2. コンデンサー       (凝縮器)
    3. レシーバー&ドライヤー (貯蔵&乾燥器)
    4. エキスパンションバルブ (膨張弁)
    5. エバポレーター      (蒸発器)

    そしてこれらの中を

    • フロンガス(冷媒、XJ6 Sr3の場合はR12)

    がぐるぐると循環しながら室内の熱を吸収してコンデンサーから大気に放出して熱の移動、つまり冷却をしてくれます。
     従ってフロンガスの量が不足しているか有っても流れていない場合にエアコンの効きが悪くなるかまたは効かないのは当然だと言うことがお分かり頂けると思います。

     フロンガスが流れる順番は上記の機器構成の順番でエバポレーターまで来たガスは再びコンプレッサーに戻って循環します、次にその系統図を示します。

エアコン系統図


 3.各機器の説明
  • コンプレッサー(圧縮器)
    • エンジンからベルトで駆動され、エバポレーターで気化してガス状になったフロンを液化させるため圧縮してコンデンサーに送ります。
    • エンジンで駆動されているので当然エンジンをかけないとエアコンは作動しません、またエアコンを動かすことによりかなりのパワーが必要で聞くところによると5馬力ほど有るのだとか、道理でエアコンを掛けると出足が重くなりますね。
    • XJ6 Sr3についているハリソンのコンプレッサーはエンジンのようにピストンが6個付いた斜板式です、エンジンと同じく6気筒です! それでフロンガスを圧縮します、ピストンタイプ以外ではベーンタイプの物もあります。
    • コンプレッサーには潤滑のためエンジンオイルと同じくフロンガスに合った専用のコンプレッサーオイルが必要です、フロンガスと共に系統内を循環しています。
    • 系統内には規定量のオイルが必要ですがガス漏れなどしているとほとんどの場合オイルも一緒に漏れていますので補充が必要です、しかしどれだけ漏れているのかというのが判らないので補充する量も判らないのが現実です。
    • マニュアルには各構成機器を取り替えた場合それぞれに補充する量が記載されています、オイルが不足するとコンプレッサーの焼き付きにつながりますがオイルを入れすぎても下記の弊害があります。

      コンプレッサーオイルが規定量より多い場合の弊害(量に応じて下記の可能性が高まる)

      • 冷房能力が低下する
      • 液圧縮によりコンプレッサーが故障する

      (トラブル事例)

      • オイル漏れによる潤滑不足で焼き付き
      • 軸シールからのガス漏れ
      • 高低圧配管継ぎ手部、圧力スイッチなどのOリングよりのガス漏れ
  • コンデンサー(凝縮器)
    • コンプレッサで圧縮されたフロンガスは高温高圧(約70〜80℃、15Kg/cm2位)のガスになっています。 コンデンサーはラジエターと同じような構造で放熱フィンがあり圧縮され熱くなった冷媒を空気で冷やして液化します。
    • この液化が重要です、このあとのエキスパンションバルブで膨張、気化させることにより冷えるのですが、冷却が不十分で液化せずガスのまま流れていった場合気化に伴う蒸発熱の吸収が無い、つまり冷えないことになります。
    • コンデンサーの一般的な取付位置は通常ラジエターの前側に置かれています、一番冷たい空気が当たるようになっています。
    • そのためコンデンサを冷却して暖まった空気がラジエターを冷却することになるので条件の厳しい夏場にはエンジンオーバーヒートの要因になったりします。

      (トラブル事例)

      • 飛び石などによるコアー損傷(ガス漏れ)
      • 継ぎ手のOリングよりのガス漏れ
      • 埃などによるコアーの目詰まり(能力低下)

  • レシーバー&ドライヤー(貯蔵&乾燥器)
    • コンデンサで液化した冷媒を一時的に貯めておくと同時に乾燥剤でフロン中の水分を除去します、また大きなゴミを取るフィルターも付いています。
    • 出口側にはサイトグラスと呼ばれる透明なのぞき窓がありフロンガスの量が確認出来ます、コンプレッサーが回っている状態で覗くと無色透明の液体が流れています。
    • 液体中の気泡の量により大雑把なフロンガス量の過不足が判断できます。

      (トラブル事例)

      • ストレーナー破損による乾燥剤の飛び出し(高圧ライン目詰まり)

  • エキスパンションバルブ(膨張弁)
    • エアコンシステムの要ともいえるのがこのエキスパンションバルブで一種の絞り弁です。
    • ここで高圧の液化フロンを狭いノズルから噴射させると液化フロンが蒸発してフロンガスとなり蒸発熱を奪います。
    • また、エバポレーター出口の温度により噴出量を自動調節します、これはエバポレーター出口の温度をキャピラリーチューブで検出してエキスパンションバルブの開度をコントロールするようになってますがこのキャピラリーチューブの封入液が漏れて働かなくなることもあります。
    • このエキスパンションバルブの入り口部にゴミが詰まらないように目の細かいステンレスの小さなストレーナーが入っています、年数が経ってくるとどうしても系統内の汚れや錆などによりこのストレーナーが詰まることがあります、こうなるとガスが流れなくなるので冷えなくなります。
    • この事例は結構多いと思います、ショップによっては安易にエキスパンションバルブを交換して一件落着とするケースが多いと思いますがエキスパンションバルブの構造から見るとそう簡単に痛むとは思えません、ストレーナーの掃除をすれば簡単に治ります。
    • またフロンガス中にはほとんど水分がないのですが不適切な作業、つまり真空引きをせずにガスを補充したり、真空引きをしても不十分だったりして系統内に水分が残っているとこの水分のせいでバルブが氷結する事があります、この場合も使いはじめはエアコンが効いているのだけれどだんだんとフロンガスが流れなくなり冷えなくなります。
    • 一旦エアコンの使用を止めて暫く置いた後再使用するとまた効くと言うのは多分ストレーナーの一時的な詰まりやこの氷結が原因でしょう。

      (トラブル事例)

      • 入り口ストレーナー詰まり
      • キャピラリーチューブ封入液漏れ
      • ゴミ等によるニードル弁固着

  • エバポレーター(蒸発器)
    • 文字どおり液化フロンが蒸発するところでラジエターのような構造をしています。
    • 銅製の太いパイプの中をフロンガスが通りその周りをエアコンファンにより送られてきた室内の空気が通って熱交換、つまり冷やされます。
    • XJ6 Sr3の場合エアコンの室内ユニットの中にはこのエバポレーターとヒーターコアーが入っています。
    • 室温センサーとアンプによってサーボモーターを回し冷風と温風のフラップを動かしてミキシングし吹き出し温度をコントロールしています。

      (トラブル事例)

      • 配管、コアー等の半田割れ(ガス漏れ)
      • エバポレーターサーモスタット不良
         (コンプレッサー連続動作による氷結)
         (コンプレッサー不動作)

  • フロンガス(冷媒)
    • フロンガスはこういった用途に適し常圧下では沸点が約-30℃で(液体から気体に変わる温度のこと、水だと100℃)加圧すると液体となる性質を持っています。
    • また、フロンガスは化学的に安定で、耐熱性に優れ、引火性、腐食性、毒性がないなど、冷媒としてはうってつけの物質ですがXJ6 Sr3などに使用されているR12はオゾン層を破壊するとかで今後はR134aなど他の冷媒へ移行をせざるを得ないようです。


 4.エアコンの主な故障
  • エアコンサイクル系
    • フロンガス漏れ
      • 継ぎ手(Oリング劣化、損傷)
      • ホース(カシメ劣化)
      • コンプレッサー軸シール(シール面、Oリング、の劣化損傷)
      • コンデンサー(外傷、ろう付け亀裂)
      • エバポレーター(配管、半田付け亀裂)
    • 詰まり
      • レシーバー&ドライヤー
      • エキスパンションバルブ入口ストレーナー
      • エキスパンションバルブ
      • コンプレッサー入口ストレーナー
    • 作動異常
      • エキスパンションバルブ開きっぱなし(固着)
      • エキスパンションバルブ閉まりっぱなし(キャピラリーチューブ封入液漏れ)

  • 電気系
    • 制御アンプ(自作可能です、H29/1のメンテ日記をご覧下さい)
    • サーボコントロールユニット
    • エバポレーター用サーモスタット(コンプレッサー制御用)
    • マグネットクラッチ(本体、サーマル)
    • 空調ファン
      • レジスター(速度切り替え用抵抗器)
      • ファン速度ハイロー切替リレー
      • ファン速度自動制御用パワートランジスター(エアコンリレー)
    • ヒューズ切れ
    • コネクター等接触不良
    • 温度センサー

  • 機械系
    • コンプレッサー
      • コンプレッサードライブベルトの緩み
      • マグネットクラッチ
      • ベアリング
      • 潤滑不足によるコンプレッサー焼き付き
      • 潤滑不足によるコンプレッサー内部リーク
    • 空調ファン
      • ベアリング
    • フラップ制御
      • バキューム低下
      • フラップ引っかかり
      • バキュームバルブ
      • バキュームアクチュエーター
      • リンク外れ
      • シール用スポンジ劣化によるフラップ固着
    • その他
      • ダクト外れ
      • ドレンパイプ詰まり(ドレンが室内に溢れる)

 5.エアコンの効きを良くするには
  • さて、やっと本題です。
  • 以上でエアコンの動作原理がお判りかと思いますがエアコンが冷えるにはまずフロンガスが必要でこれが抜けておれば当然駄目ですね。
  • ガスがちゃんと入っている場合はコンデンサーでしっかり冷やすことですが夏場の渋滞にはメカファンの車は最悪です。
  • でも最悪でも冷えて欲しいですね、そこで下記の対策をしてみて下さい、必ず何らかの効果は出てくると思います。
  • 要は出来るだけ沢山の空気をコンデンサーに通して出来るだけ沢山「熱交換」、つまり冷やすことです。
  • コンデンサーの項に書いておりますがフロンガスの液化がポイントです、これが出来ないとエアコンは冷えません。

  • コンデンサー回り
    • コンデンサー冷却フィンの汚れ
      • 長年の砂、ゴミなどがフィンの間に結構入り込んでいます。
      • そのため風の通りが悪くなり、また熱交換が悪くなって冷えにくくなります。
      • 高速では良いがとろとろ走りや渋滞では効かない場合一番可能性が高いです。
      • 蛇足ですが、私の車のコンデンサーとラジエターのフィンを掃除した時です、始めはエアーで吹かせただけでしたがそれでももうもうたる砂埃が出てきました。
      • その後ラジエターを外す事になり外してビックリです、ラジエターの前には枯れ草がからみついていました、コンデンサーとの隙間から入り込んだのでしょう、ここに付いている分はエアーで吹かしても絶対に取れません。
      • おまけにフィンを水洗したところエアーで吹かして綺麗になっているはずが真っ黒な水が出てきました、それだけ汚れていたのです。
      • もう一つおまけです、エンジンオーバーホール時にラジエターとコンデンサーを外しましたがもう一度水洗しました、前回に綺麗にしていましたがまた汚れが溜まっていたようです。
      • 水洗後アルミフィン用のクリーナーをスプレーしたところまたまた真っ黒な液が流れ出てきました、排気ガスなどの油分が付着していたようで水では落ちなかった物がクリーナーで綺麗になりました。
      • 皆さんも是非大掃除してみて下さい、コンデンサーとラジエターの冷却効果が良くなるはずですよ。

    • コンデンサーを通過しないエアー
      • 冷却ファンがラジエターの後に付いているタイプの場合、走行中冷却エアーは一応コンデンサー&ラジエターを通過してきますが走行風が入らない、つまり停車しているときなどはラジエターの冷却ファンのみが頼りです。
      • この場合大抵の車にはコンデンサーとラジエターとの間に隙間があり、空気抵抗の大きいコンデンサーを通らずにその隙間からラジエター側に流れるエアーがバカになりません、ちなみに私の車は20ミリくらいの隙間が空いていました。
      • 隙間テープ、スポンジその他で隙間を埋めてやるとラジエターを通るエアーは必ずコンデンサーを通過しますのでよく冷えるようになります。

    • ホットエアーの還流
      • コンデンサー&ラジエターを通過したエアーはエンジンルームから車外へ流れて行きますが、ラジエター上部とボンネットの隙間やラジエター&コンデンサーの左右のボディーとの間に隙間がある場合は要注意です。
      • 渋滞などで走行風が期待出来ない場合、ファンから出たホットエアーは抵抗の多いエンジンルームから外に行かずにその隙間から熱風がコンデンサーの前に還流してきます、こうなると当然冷えなくなります。
      • ボンネットを閉めた状態でラジエターの後部から前に抜けることの無いようにラジエターの上部とボンネットの間はゴムパッキンやスポンジでシールされていますがここのシールが悪くなっていないか、脱落していないかチェックして下さい。
      • またコンデンサー&ラジエターと左右のボディーとの隙間も同じ事ですので隙間がないようにスポンジなどでシールするとよく冷えるようになります。

  • エバポレーター回り
    • 外気導入モードになっている
      • 通常は外気導入モードになっています、これは室内の汚れた空気を新鮮な外気で置換するのが目的かと思われます、しかし日本の夏場にはこれでは冷えが悪いです。
      • XJ6 Sr3などでは温度調整ダイヤルを一番低い温度にセットすると室内ユニットの左後ろにある電磁弁が働きバキュームアクチュエーターを動作させてファンの上下に付いているフラップを動かして内気循環モードになります。
      • XJ6 Sr3の場合はこの電磁弁に行っている+側のターミナル(ピンク色)を引き抜き、別回路で+12Vを供給してやると電磁弁が動作しますので、任意で入り切りが可能となります。(ピンクの線を引き抜く弊害はありません)
      • この改造は非常に簡単なので皆さんにお奨めです、詳しくは下記を御覧下さい。

        【エアコン室内循環回路の取付】

    • エバポレーター内で温風が漏れ込んでいる(零和元年5月17日 追加)
      • Sr3のエアコン室内ユニットは6気筒用モデル(MK-U?)と12気筒用モデル(MK-U?&MK-V)と言えば良いのでしょうか2種類有ります。
      • 温度調整をアナログモジュールで行っているタイプ(MK-U?)と室内ユニット(エバポレーター)の右側にディジタルコンピューターが付いているタイプ(MK-V)です。
      • 制御システムの違いや室内ユニットの構造が異なります。
      • MK-U?モデルの場合温風と冷風用の平板フラップがありその時の温度設定や室内温度などによりサーボモーターでフラップの開度を変えて温度コントロールしています。
      • MK-Vモデルの場合は平板フラップではなく半円形で筒状のロータリーフラップが開度を変えてコントロールしています、フラップの詳しい構造や動作はマニュアルをご覧下さい。

         

      • このMK-U?モデルの場合冷房時に最低温度にしているにもかかわらず冷たい風が出ずに生暖かい風が出るのは温風用のフラップのシール不良で温風が漏れ込むため生暖かくなります。
      • その証拠ですがフラップを動かしているリンケージのネジを調整してフラップが目一杯クール側になるように、つまり温風を遮断する方向に持って行くと冷たい空気が出るようになりました、もっともリンケージは元に戻さないと途中開度での温度調整が正常に出来なくなりますのでご注意下さい。
      • MK-Vの場合内部構造を見たことはありますがシール部の構造は覚えておらず多分同じような症状が起きるかと思われます。
      • 私の車(MK-U?)でエアコンのファンを強にしている時にセンターコンソールの吹き出し部などからスポンジの欠片が出てきたことがありますがフラップのシール用のスポンジが劣化して出てきたと思われます。
      • 室内ユニットを取り外してシールの修理をすれば良いのでしょうがこれは大仕事です、計器盤からセンターコンソール回り1式を取り外さないと室内ユニットは取り出せません。
      • 費用も推して知るべしでウン十万かかるそうです、そこまでしてでもと仰る方は頑張ってやってください、そうでない方は次の方法をお勧めします。
      • エアコンを使用するとファンスイッチに連動してバルクヘッドに取り付けられているバキューム駆動の温水弁が開きます、エアコンは温風と冷風をミックスして温度制御しているので当然なのですがこの温水を通らないようにシャットオフしてしまうのです。
      • 元から付いている温水弁は構造的にいまいちで完全にシャットオフ出来ずに温水が漏れ込みます、これを取り外しバキュームラインにはメクラを、温水弁はホームセンターで売っている水道用13ミリのボールコック弁に付け替えて手動で開閉するのです。
      • これでエアコンはエアーコンディショナーではなくエアークーラーになりますが温風のフラップが漏れていても温水は流れないの温風は出ずでよく冷えるようになります。
      • 温水弁取替の詳細はH28/7のメンテ日記をご覧下さい。
   最後まで御覧頂き有り難うございます、これを良く読んで頂いて何時も快適な車となるようしっかり
  メンテして下さい、これらの対策を実施したお陰で私の車のエアコンは快調です。