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Q1-1 エンジンが掛からないのは?(混合気編) SerV・XJ6・DD6

  • エンジンが掛かるには次の3要素が必要です。

    1. 良い混合気
    2. 良い点火火花
    3. 良い圧縮

  • これらのどれが欠けてもエンジンは掛かりません、以下項目別に要因を検討してみます。

  • まず良い混合気と言うことで空気系統も関係しますがトラブルの事例を見聞きしたことが有りません、エアーフィルターの詰まりと言っても完全に詰まることは考えにくくエンジンが掛かる程度の吸い込みは可能と思われます。

  • もし空気系統で何かご経験された方がおられましたらお教え頂ければ幸いです。

  • 従ってここでは燃料系統について検討してみます。

    1. まず燃料圧力が低いかもしくはゼロの場合。

      1. 燃料ポンプ不良

        • 燃料ポンプはポンプとモーターが一体になっておりポンプ軸受けの潤滑とモーターの冷却にガソリンそのものを使っています、つまりポンプの内部をガソリンが流れて潤滑と冷却をしながら送り出しています。

        • 特にガソリンタンクが空になっているのにポンプを回し続けると軸受けの潤滑が出来なくなりメタルを損傷します、そのため軸受けの咬み込みなどで正常に回らなくなり突然停止します、ポンプにショックを与えて回り出すような場合はほぼこの原因と思われます。

        • またモーターは単なる直流モーターでブラシとコミュテーターがあると思います、使用年数が多い場合これらの摩耗による不動作も考えられます。

        • これらの不具合の場合一般的には分解修理できませんので対策としてはポンプの取替しか有りません、取替の時はタンクからガソリンが流れてくるのでゴムホースに木栓などを入れて止めてから作業してください、また電源は+−の極性があるので注意してください。

        • 作業に当たって火気は厳禁です、静電気等による僅かな火花でも引火爆発しますのでくれぐれもご注意下さい、具体的なやりかたは燃料ポンプの取替を参照してください。

      2. 燃料フィルター詰まり

        • 燃料フィルターはガソリンそのものに混じって入り込む異物とタンク内の錆などを濾過しますが当然ゴミが詰まってくると流れが悪くなり燃料圧力が下がります。

        • 詰まりの程度により燃圧が下がりアクセルのレスポンス悪化やガス欠のような症状など色々あります、完全に目詰まりするまでに気がつくと思いますがこれも取替しか対応できません。

        • キャブ車の場合は燃圧も低いのでガラスボールに入ったフィルターを取り出して洗浄してまた取り付けると言ったことが可能ですがインジェクション車の場合はキャブ車と違って約 2.0〜2.5Kg/cm2 の高い圧力になっています。

        • そのため金属容器で密閉されており汚れ具合が判りませんのでマニュアルに従って定期取替をしましょう。

        • これもポンプと同じですが作業に当たって火気は厳禁です、静電気等による僅かな火花でも引火爆発しますのでくれぐれもご注意下さい、具体的なやりかたは燃料フィルターの取替を参照してください。

      3. 燃圧レギュレーター不良

        • 燃圧レギュレーターは燃料ヘッダーに付いておりインマニのバキュームを検知して燃料ヘッダーとインマニ間の圧力が下記の値となるようにコントロールしています。
          • XJ6 : 2.55±0.05Kg/cm2 ( 2.5〜2.6Kg/cm2 )
          • DD6 : 2.1±0.1Kg/cm2 ( 2.0〜2.2Kg/cm2 )

        • インジェクターは単なる電磁弁ですが原理的に燃圧が変わってくるとガソリンの噴射量が変わります、つまり噴射量は下記3項目に影響されます。
          • 前後の差圧
          • 口径
          • 開弁時間

        • このインジェクター前後の差圧と言うのは燃料ヘッダー側の燃料圧力(燃圧)とインマニの真空との圧力差を意味します。

        • インマニの真空はスロットル開度で時々刻々変化しますので燃圧レギュレーターでインマニの真空分を補正し、インジェクターの前後に掛かる圧力が常に一定となるように制御しています。

        • こうするとインジェクターの口径は一定なので開弁時間の制御のみでガソリン噴射量を制御できるのです。

        • 通常の運転時に燃料ヘッダーの圧力を測るとXJ6で2キロちょっと、DD6で1.5キロほどの圧力しかありませんがゲージは大気と燃料圧力の差を測っているためです、実際にインジェクターの前後に掛かっている燃料圧力は規定の圧力が掛かっています。

        • 従って前記要因により燃圧が低いかゼロの場合必要量のガソリンが噴射されず適切な空燃比にならないため点火できません。

        • 燃圧レギュレーターのトラブルとしてはインマニのバキュームを受けるダイヤフラムの損傷で圧力のコントロールが出来なくなります、これも取替しか有りません。

        • なお、燃圧を見るのにあるメンテ雑誌ではホースを押さえてその張り具合から判断するようなことを書いてますが感覚に頼る話で判りにくいのと、ジャガーの場合燃料ホースは結構固いのでこれまた判りにくいのです。

        • 緊急時に燃料ラインにゲージを付けて測ると言うことなどは出来ませんが正確に測るには圧力ゲージを付けて測ってください、私は常設しています。

        • なお、燃圧のチェックをするためにホースなどを外す場合はガソリンをこぼさないようにウェスやペットボトルで受けるなりしてそこらに飛び散らないように注意します、静電気による火花でも十分引火爆発します。

        • ガソリンに火が点けば一瞬にして火災になります、火傷など怪我をしないように、また大事なジャガーをそんなことで無くさないようにくれぐれもご注意下さい。

      4. ガソリンが無い(ガス欠)

        • 最後のガス欠ですが早め早めの補給をしましょう、出掛ける前には必ず残量を確認する癖を付けておけばJAFなどのお世話にならなくて済みます。

        • それ以外に燃料ゲージの不良のため気がつかない場合もあります、普段給油量と走行距離などを注意深く見ておればゲージの不具合も早期に発見できるかと思います。

        • ガソリンタンクのレベル発信器(センダーと言います)は満タンレベルで約20オーム、空のレベルで約220オーム有ります、レベルがおかしいと感じたときはテスターで当たってみるとはっきりすると思います。

        • 普通はこの抵抗線が摩擦ですり減って断線という故障が多いようです、もっともその場合ガソリンは有っても空の表示なので給油しようとして気がつくはずです、断線の修理は出来ませんので取り替えてください。

        • またまれにですがレベル指示計自体が駄目になった事例もあります、この場合は取替しか有りません、部品取り車などから予備の指示計をストックしておくのが良いでしょう。


    2. コールドスタート系パーツの不良

      1. サーモタイムスイッチの不良

        • インジェクション仕様の場合、冷機での起動時には数秒間濃い混合気となるようにキャブ車のチョークに相当するコールドスタート回路と言う特別な制御回路があります。

        • XJ6(配置図-1,6)の場合エンジンヘッドカバー右にあるウォーターレールの一番前に付いているサーモタイムスイッチとコールドスタートインジェクターで初爆の燃料制御を行っています。

        • DD6(配置図-G,J)の場合Aバンク(右)インテークマニホールドの前に付いているサーモタイムスイッチとABバンクインテークマニホールドの中程にそれぞれ付いているコールドスタートインジェクターで初爆の燃料制御を行っています。(年式により違いがあるかも知れません)

        • エンジンスタート時にスターターリレーでスターターモーターを回しますがサーモタイムスイッチはスターターリレー(DD6の場合+コールドスタートリレー)からスタータリレーが動作している間だけ12Vがかかり動作します、動作前には接点は閉じており(ON)電圧が掛かるとその時の水温に応じた時限後接点を開きます(OFF)。

        • 動作原理はヒーター付きのサーモスタットで通電後ヒーターの加熱により動作します、接点が開くまでの時間は水温が低いときは長く、水温が高いときは短く動作し、水温が35度以上になると動作しません。

        • マニュアルによる動作時間は下記の左と中の2つの表ですが値が微妙に違います、動作温度幅と時間幅は同じなので多分温度と時間の関係は同じでリニアーの特性だと思い右表のように修正して見ました。
           (まああまり細かいところまで出しても実際の運用では全く関係有りませんが・・・・)

          (XJ6のデータ)
          水温(℃) 噴射時間(秒)
          -208.0
          ±04.5
          10 3.5
          35 0.0
           
          (DD6のデータ)
          水温(℃) 噴射時間(秒)
          -208.0
          -106.5
          ±05.0
          10 3.5
          15 2.7
          20 2.0
          30 0.5
          35 0.0 
           
          (修正データ)
          水温(℃) 噴射時間(秒)
          -208.00
          -157.27
          -106.55
          -5 5.82
          ±05.09
          5 4.36
          10 3.64
          15 2.91
          20 2.18
          25 1.45
          30 0.73
          35 0.00

      2. コールドスタートインジェクターの不良

        • コールドスタートインジェクターもスターターリレーが動作している間だけ12Vがかかりサーモタイムスイッチの接点が動作している間インテークマニホールドのチャンバー内に初爆に必要なガソリンを噴射しています。

        • 従って必要量のガソリンが噴射されないと初爆が得られずスターターモーターは回れどもエンジンは掛からずと言うことになります。

        • この場合何度もスターターモーターを回している内にインマニ内に噴射されたガソリン濃度が高くなりエンジンが掛かる場合があります。


    3. その他の要因

      1. ガソリンの吸い込みすぎ(過濃、プラグかぶり)

        • 何らかの要因でガソリンを吸い込みすぎた場合プラグが湿ってしまい漏電してスパークしなくなります。

        • プラグを外して電極部の手入れをするのがベターですがDD6などはプラグを外すのも一仕事なのでその場合はアクセルペダルを一杯に踏み込んでスターターモーターを回すとエンジンが掛かる場合があります。

      2. 燃料タンクがオーバーフローしてベーパーラインよりガソリンが流入

        • これは私が経験したことですが他にも可成りの方が経験されておられるようです。

        • 原因は燃料タンク切替電磁弁の不具合によるもので、たとえば右タンクを使用中はエンジンルームからの燃料リターンは右タンクに戻るようになっています。

        • ところが電磁弁の切替が上手く行かずに左タンクに戻ってしまう場合があります、左タンクがオーバーフローするとガソリンの行き先が無くなりベーパーラインから右フェンダー内にあるチャコールキャニスターに流れてきます。

        • エンジン停止時ベーパー成分は活性炭に吸着され大気に放出されますがエンジンが動いているときはインマニのバキュームで切替弁が動作し燃料タンクとチャコールキャニスターのベーパーをエンジンで吸引燃焼するようになっています。

        • そのため生ガソリンが流れてきた場合これがエンジンに吸い込まれ非常に濃い混合気となってしまい不完全燃焼によるカーボンでプラグがかぶりエンストします。

        • その時注意深く観察すれば右フェンダーのチャコールキャニスターのところからガソリンがこぼれている場合がありますし、凄いガソリンの臭いがします。

        • このことからあるHPでは「ガソリンタンクは左から使わないといけない」と言う神話が生まれたのだと思います、左タンク使用の場合タンク切替&左右の燃料戻り電磁弁は全て無励磁の状態です、長年の使用により電磁弁が励磁された場合の切替動作が不完全なためだと思われます。

        • まあ古くなってきた場合はこの方法も仕方がありません、電磁弁は結構なお値段しますのでこう言ったことを承知の上で使いこなしてください。