勝手にマイベスト<慕情編> 思いつくまま好きな本を並べてみました

<慕情>という言葉を聞くとなんだか切ないような泣きたいような気持ちになります。これはサザンの「慕情」という曲のイメージが強いからなのかもしれませんが。好きでたまらない本たちを思い浮かべるとき、嬉しさと幸せを覚えると同時に、少しだけ切なさも感じて、慕情という言葉を聞いたときと同じような気分になります。
そんなわけで(どんな訳だってつっこんじゃいけません(^^;;)<慕情編>では、思いつくまま好きな本を並べてランキングしてみました。「慕情」というタイトルにしたのはかなりのこじつけかな、という気もしていますが(爆)、<慕情><旅情>の響きがいいのでつい名づけてしまいました、、、同名の素敵な映画もあることだし(苦しい言い訳だわ)

では、好きな本を勝手にランキングした<慕情編>です。(旅情編はこちら)

 

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読めて良かった!そう思える本があるこの幸せ   とにかく好きでたまらない本たち
蒼穹の昴 浅田次郎 講談社
バガージマヌパナス 池上永一 新潮社
OUT 桐野夏生 講談社
奪取 真保裕一 講談社
少年時代 R・R・マキャモン 文藝春秋社
パラレルワールド・ラブストーリー 東野圭吾 中央公論社
ターン 北村 薫 新潮社
青春デンデケデケデケ 芦原すなお 河出書房新社
永遠も半ばを過ぎて 中島らも 文藝春秋社
いつか森の中で 草薙 渉 読売新聞社

今まで読んできた本を全部ひっくるめて好きな本を10冊選ぶとしたら、、、ミステリを中心に本を読んできたとはいえ、何でもありの雑読派なのでジャンルもまちまちだし、ミステリと恋愛小説とを並べて、どっちが好き?と順位をつけることがそもそもナンセンスなのかもしれません。それでもあえて、あーでもないこーでもないと悩みながらベスト10を挙げてみました。読めて良かった、と喜びをかみしめることができる本にこれからも出会えることを祈りつつ、2000年現時点でのマイベスト10です。

今まで読んだ本のなかで一番感動したのが『蒼穹の昴』です。電車の中で読んでいて泣くに泣けず、家に帰ってもう一度読み直して思う存分泣いたものでした。「この本を書くために私は作家になった」と作者の浅田次郎に言わしめたというこの小説ですが、この本に出会えて良かった。浅田さん、作家になってくれてありがとう。
主人公の春雲より、文秀と科挙試験に同期で受かった王逸に思い入れたっぷりで読んでいました。王逸が耳の聞こえない少女に「宇宙」の意味を教える場面で大号泣(ちょっと大袈裟か(笑))。浅田次郎の小説に登場する人物はどこか不器用で、でもまっすぐ芯の通ったキャラクターだからこそ読んでいて胸を打つのでしょう。

読んでいて元気になる本。主人公・綾乃のパワーを分けてもらっているような気持ちになれる、『バガージマヌパナス』(沖縄の言葉で「私たちの島」という意味)。高校卒業後ぶらぶらとしていた綾乃が、神のお告げで駆け出しのユタ(沖縄での巫女)になるまでの物語。絶対であるはずの神のお告げを拒否するという一筋縄ではいかない性格、毎日楽しく遊んで暮らせればそれでいいというぐうたらさといい、物語のヒロインとしてはあるまじき姿(マリファナもやってるし(爆))なのに、いつの間にか綾乃を応援している自分に気づきます。綾乃のパワーに引きずり回されつつ、でも最後にほろりとさせられました。

オンナのオンナによるオンナのための物語、とそんなコピーをつけたくなる『OUT』。主婦による遺体解体業、という凄惨なシーンが話題になっていた気がしますが、『OUT』は女性のためのファンタジーだと私は思います。男のひとには分かってもらえないかもしれないけれど、主人公の雅子がとった行動は女性ならみんなうなずけるものではないかと思う。たぶん私も雅子と同じような行動をとるだろうな。

わくわく・どきどき・ハラハラの三拍子揃った『奪取』。この本を読めることが楽しくて嬉しくて仕方がなかった。ニセ札つくりに心血を注ぐ主人公たち、犯罪に手を染める<悪>であるはずの彼らを応援したくなるのだから、いかにそのキャラクターが魅力的かということなのでしょう。普段、何気なく手にしている紙幣ができるまでを知ることができる、ニセ札作りの過程がまた面白かった。みんな読み終わってから、きっとしげしげと一万円札を眺めるはず(笑)。

古き良き時代、という言葉が思い浮かぶ『少年時代』。夢の中で「これは夢だ」と知りながら夢見ている時のような感覚を味わいながら読みました。自分が幼い頃の色褪せた写真を見ているような、切なくて幻想的な(不思議と、子供のころ縁日で綺麗だなと思ってぼんやり眺めていた走馬灯が思い出された)ファンタジーです。

私がいちばん好きな東野さんの小説、『パラレルワールド・ラブストーリー』。自分が決して強い人間じゃなく、弱いことを嫌になるくらい分かっているから、最後に主人公がつぶやいた一言が痛くて痛くて胸に刺さりました。

北村薫は『スキップ』より『ターン』だ!と私は固く信じています。『スキップ』の、どんなことがあっても前向きに生きていこう、という優等生的なところが鼻について好きじゃないのですが(意地悪な受け止め方だとは自分でも承知しているんですけどね(^^;;))、『ターン』の世界は胸にすっーと沁み入りました。奇跡のようなラブストーリー、でも小説なんだからこんなはなしがあってもいいじゃないかと素直に思える。
主人公が<リターン>を決意してからの描写は、落ちていく砂時計の砂の、一粒一粒の流れを目を凝らして見つめようとするような、一瞬のきらめきに溢れていた。

小説が先か、映画が先か。友達に誘われて見に行った映画『青春デンデケデケデケ』。原作もいいから絶対に読んでね、と言われて読むことにしたのですが、映画・小説を教えてくれた友達に感謝の気持ちでいっぱいです。こんな高校生活を送ってみたかった、と願うような、まぶしくてきらきら輝いている世界が書かれています。作者の芦原すなおさんが「自分が高校生だった時は主人公(ちっくん)と違って地味な学校生活を過ごしていた」と語っているように、誰もが憧れるような高校生活がこの小説に投影されているのだと思う。書かれているのは理想の世界でも、ちっくん達と自分が過ごしてきた時間とにシンクロする部分がどこかにあって、読んでいて知らず知らず気持ちが高校生のときにタイムトリップしていることに気づくのでした。

ずっと物語が終わらなければいい、と読み終わるのがもったいなかった『永遠も半ばを過ぎて』。無茶苦茶なストーリーだなとは思いながらも夢中で読み、読み終わったあとしばらく余韻が残って、本を閉じることが残念に思えました。

『いつか森の中で』―――ネアンデルタール人とクロマニョン人の恋愛がテーマ。と、こう書くとギャグかと思われそう(^^;;)ですが、これがいたって真面目な、そして素敵なラブストーリーです。見てきたような嘘をつく、というのが小説家の仕事のひとつだと思うのですが、誰も行ったことのない想像でしか語ることのできない遥か昔の世界を、まるでその世界にいるかのように感じさせてくれる、古代の風景描写が見事で美しい。地味なストーリーだな、とは思うんだけどなぜか好き。ラスト一文の情景が目に浮かぶようで、すごく印象に残っている。

 

いとしのミステリー   マイベスト・ミステリ10
Yの悲劇 エラリィ・クイーン ハヤカワ文庫 ほか
乱れからくり 泡坂妻夫 創元推理文庫 ほか
ぼくのミステリな日常 若竹七海 東京創元社
そして誰もいなくなった アガサ・クリスティ 新潮文庫 ほか
キャッツアイころがった 黒川博行 文藝春秋社
十角館の殺人 綾辻行人 講談社
密閉教室 法月綸太郎 講談社
孤島パズル 有栖川有栖 東京創元社
象と耳鳴り 恩田 陸 祥伝社
放課後 東野圭吾 講談社

どんなジャンルが好き?と聞かれたら、ミステリが好きと答えると思います。私に本を読む楽しさを教えてくれたのがミステリだったから。ミステリ・ファンと名乗れるほど古今東西の名作を全然読んでいませんが、わくわくするミステリに出会うと、やっぱり私はミステリが好きなんだなー、としみじみ思います。
読んだミステリの数はきっと少ないだろうけど、それでも悩んで選んだマイベスト10です。だいたい想像がつくかと思いますが(^^;;)、「いとしのミステリー」は「いとしのエリー」からちょうだい致しました。

たぶんこれから先『Yの悲劇』以上に驚きを受けるミステリには出会えないんじゃないかな、という予感がしている。読んだ当時は衝撃以外の言葉がなかったように思う。読んだときの年齢(小学校6年生)も大いに関係しているとは思うんだけど。普通だとそこでクイーンにどっぷりハマるらしいのだけど、どうもその頃から片仮名アレルギーの片鱗が見えたらしく(^^;;)読んだことのあるクイーンはこの一冊きり。『Yの悲劇』の後じゃ他の本を読んでも印象が薄れてしまう、という思いもあったのかもしれない。自分でも海外ものを1位にするのは意外なのだけど、永遠にマイベスト1なミステリだと思う。

国内もので一番好きなミステリは?と聞かれたら悩んだ挙げ句、泡坂妻夫の『乱れからくり』を選びます。読後の第一印象は「大人の世界だ〜」というものでした。いわゆる新本格にハマって通勤の電車の中で本を読み出したので、その当時本屋にずらずらっと並んでいた新本格の講談社文庫を片っ端から夢中で読みはじめました。文庫の解説で新本格が読書人の間で賛否両論の物議をかもしていたらしい(文庫落ちしてから読んだからリアルタイムで新本格の出現は体験していないのです)ことを知り、新本格に心酔していたその頃の私は「そんなの面白ければいいじゃない」と反対派の人って頭が固いのね、と思っていました。新本格に対して一番よく見られた批判は<人間が書けていない>というもので、じゃあ一体どのような小説をもってして<人間が書けている>と言うのか不思議でなりませんでした。私が読みたいのはミステリであって人間描写がメインの小説ではなかったから。だいたい<人間が書けていない>ってもっともらしい批判に聞こえるけど、言ってる方もあまりよく分かっていないような言葉の気がして。
が、何冊か新本格を読んでさすがに熱が冷めたというのか、目が覚めたというのか(^^;;)、これでお金を取っちゃいかんだろう、という小説を読むに至って、何となく人間が書けていないと言いたくなる人の気持ちも分かってきました。拷問だと思えるような本も読んだ中にはあったから。
そんな新本格熱が冷めた頃に読んだ『乱れからくり』、ああきっとこういう小説が人間が書けているっていうんだ、と実感しました。大人の「男」と「女」の世界がそこには書かれていました。読んでいる間じゅう体のまわりに「水」を感じるような、しっとりとした色気のあるミステリでした。

今までで一番多く読み返しているだろう本、『ぼくのミステリな日常』。何故か分からないけれど、この本には妙に惹かれてしまう。殺人が起こるわけでもなく地味なんだけど、読み出すと止められないんだなあ。時々ふっと読み返したくなるんだなあ。『十角館の殺人』『密閉教室』『孤島パズル』にも共通して言えることだけれど、どの本も読んでいて「これは作者がとても楽しみながら書いていたのだろうな」というのが伝わってくる。『孤島パズル』以外はみんなデビュー作だし、商売としてじゃなく、いちミステリファンとして楽しんで書いた作品なのじゃないかと思う。作者本人が楽しんで書いたんだもの(産みの苦しみ、ってのはもちろんあるだろうけど、それ以上に生き生きと目を輝かせて書いたんじゃないかな、と思えるんですよね)、読んでて楽しくない訳がない。
個人的には、若竹七海も法月綸太郎もデビュー作を超えたと思える本に出会っていないので、頑張ってほしいなという思いが強い。

『そして誰もいなくなった』は不思議と夏が来ると読みたくなる。私はこの本、ホラーだと思います。孤島に集った10人が1人ずつ順番に殺されていくという筋書きがとてつもなく怖い。次は自分の番なのだろうかと思うと早く殺してとさえ願うだろうし、でもやっぱり死にたくないし、精神がどうにかなっちゃいそうな恐怖に違いない。初めて読んだ中学生の時、夏なのに毛布をかぶって読んだ記憶があります。クリスティはポアロのシリーズは割と読んだほう。『ABC殺人事件』も面白かった(『アクロイド殺し』は許せないけど(^^;;)。

高校生の時に図書館で借りた『キャッツアイころがった』。当時ジャンプで連載中だった『CAT'S EYE』が好きだったので題名にひかれて借りた(笑)のだけど、こんなに面白いミステリがあるのか!と興奮しながら読んだ覚えがあります。今となってはもう、ほとんどストーリー覚えてないけど(^^;;)。読み返してもきっと新鮮で面白く読めるんじゃないのかなと思う。

ここから新本格3タテです。今ではそれほど新本格に思い入れはないとはいえ、夢中で読んだいくつかの本はやっぱり忘れ難い。選んだ3作品とも名作だと思います。綾辻さんの館シリーズで一番好きなのは『迷路館の殺人』ですが、ミステリのベストとしてあげるなら『十角館の殺人』の方でしょうか。読後にひとこと、「やられた!」とつぶやいてしまいました。清々しいほど見事に騙されました。『そして誰もいなくなった』を読んでいないと面白さが半減してしまうけど、読んだことのある人には、辛抱たまらん(笑)って感じの一冊です。

青春学園ミステリと呼びたい『密閉教室』。青いなー、と思うんだけどその青さがまた魅力的。高校生だった頃のことを思い出しながら読んでいました。これほど法月さんが楽しんで書いたんだろうなって伝わってくる本はないと思う。読んでいて私も楽しかった。物語全体がきらきら光っているような、そんな印象を受けた。法月さんの本はほとんど読んでいるけれど、名探偵・法月綸太郎の呪縛から解放されるともっと楽になるのにと思ってしまう。『密閉教室』以外では法月綸太郎の登場しない(申し訳ないけど)『パズル崩壊』が良かった。

『密閉教室』とおなじく若さがとてもまぶしい『孤島パズル』。これも私としては珍しく再読した本です。孤島での宝捜し、という設定が、これまたもう辛抱たまらん(笑)って感じ。島の地図がついてたり、こだわりも嬉しい。とかく読んでいる間わくわくしっぱなしでしたね。夜の海にアリスとマリアが小船で漕ぎ出すシーンが大好きです。私としては学生アリス(というか江神先輩ね)のファンなのでぜひアリスのシリーズを書いて欲しいんだけど。。。

最近読んだので印象の強い『象と耳鳴り』。<珠玉の>と形容していい短編集だと思います。読み終わるのが惜しくてたまらなかった。もっと小説の世界に留まっていたかった。収録作の『曜変天目の夜』鳥肌モノでした。ミステリを読む楽しみ<愉悦>という言葉を久しぶりに思い出させてくれた本。

東野さんの本の中で一番好きなのは『パラレルワールド・ラブストーリー』。今ではSF色の強い作品などミステリ作家で括れない小説を書いている東野さんですが、デビュー当時はたくさんの本格ミステリを世に送り出していました。その中でベストを選ぶとしたら『放課後』になります。何と言っても殺人の動機が秀逸。他にその動機で殺人を犯した、という小説は知りません。でも、たしかに人を殺しても無理はないな、とそう納得できる動機です。私も人を殺めてしまうかもしれない。今思い返してみてもすごい動機だな、とつくづく思う。

 


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