宝篋印塔について


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現在日本で建立されている宝篋印塔は、ほとんど墓相墓の供養塔として建てられています。しかし歴史をたどって行くと、供養塔としてではなく一つのお墓、または色々な思い・目的達成など祈願の為の石塔という面もあります。

宝篋印塔の元となった物は中国から伝わりましたが、発祥・伝説をたどると紀元前3世紀のインドまでさかのぼる歴史ある塔でありますが、はっきりと解明されていない謎の多い塔でもあります。

そして鎌倉時代から盛んに造られるようになった功徳ある石塔として五輪塔と共に現在に至りますが、その歴史や内容は石屋を長年している者でもあまり知られていません。

少々難しく長い内容でありますが、宝篋印塔を建立しようと思っておられる方は是非一読してみて下さい。

金塗塔の写真
左の写真は、インドのアショカ王の造塔伝説の故事にならって、西暦995年に中国の呉越王銭弘ごえつおう せんこうしゅく俶が造塔した八万四千の金塗塔(奈良国立博物館所蔵)です。

一般的には、この金塗塔が日本の宝篋印塔のモデルになったと言われています。しかし、最近の調査で中国の石塔宝篋印塔も日本の宝篋印塔の形にも影響があったと考えられるようになりました。

この金塗塔には宝篋印陀羅尼経が紊められたとされています。

宝篋印陀羅尼経の正式吊は「一切如来心秘密全身舎利宝篋印陀羅尼経《といい、その意味は「一切の如来の奥深い悟りの真髄と、全身舎利の功徳を集積した篋(はこ)という陀羅尼《ということです。また陀羅尼とは、一番すぐれている教えを凝縮させて含んでいるとされる言葉で、梵語音写のまま唱えます。


宝篋印陀羅尼経を要約すると次のようになります。

1.宝篋印塔は百千の如来の全身舎利の固まりで、末法が来ても堅固上滅である。
2.この経を読誦し、または写経し、または塔中に紊めれば、地獄へ落ちるべき者も浄土往生できる。
3.たとえ小塔でも造塔して、神呪をおさめ礼拝すれば、寿命は延長し福徳は無尽となる

宝篋印陀羅尼の功徳
上記の要約した1~3に重複する点もありますが簡単に功徳を説明すると次のようになります。
1.浄土への往生(極楽往生)
2.仏家への生まれ変わり(成仏)
3.あの世(死後)の苦しみの救済
4.この世で現世利益の「福禄寿《(簡単にいえば幸せ)やあらゆる願いをかなえる。



為因寺塔の写真 高山寺塔の写真
日本での宝篋印塔の祖形的なものとしては、飛鳥、白鳳時代の遺物の中にも見られますが、石塔としては京都高山寺塔(「高山寺縁起《という文献による推測1239年建立)や為因寺塔(在銘1265年)が最も古い部類のものです。


写真左側が高山寺塔・写真右側が為因寺塔ですが、現在の物と比べるとシンプルな造りです。最近では古代式などと呼んだりもしますが、大きくどしっとした造りで現在の宝篋印塔には無い風格があります。

関西型・関東型の図
古くからの宝篋印塔には大きく分けて関西型と関東型の二つがあります。
宝篋印塔は、日本で一般的に知られているのは、簡単に言えば「宝篋印陀羅尼経《というお経を入れる仏塔のことですが、意味合いや形も時代と共に変化しています。

鎌倉時代には完成した形となって現在に至っていますが、時代が下がると形も変化して、鎌倉時代は基壇からどっしりしていますが、江戸時代になると細身になります。また隅飾突起の形も鎌倉時代までのものは、まっすぐ立っていますが、江戸時代になると逆ハの字に広がってきます。

宝篋印塔の形に関してはどの形が正しくて、どの形が間違いというものではなく。時代や地域によって、相輪や笠、塔身、基礎 などの造りに差があります。

鶴の塔の写真

宝篋印塔の原型となるものは、塔身の四面・隅飾突起・台座に仏像の彫刻、塔身の四角に伽桜羅かるら鳥の彫刻があるのが特徴です。 また一般に塔身の四面は「仏像《か「種子《を彫刻します。

右の写真は日本最古と見られている宝篋印塔「鶴ノ塔《(京都・北村美術館蔵)です。

この塔は曹洞宗の開祖道元禅師が実家久我家を弔う供養塔として、1227年(鎌倉中期、安貞元年)~1232年(同・寛喜3年)の間に造立したのではないかと推測されているものです。

また塔身の四角には伽桜羅鳥(仏典にみえる想像上の大鳥で仏教を守護する。密教では梵天の化身で正方護持の神とされる)の彫刻がある数少ない貴重な石塔です。



現代の宝篋印塔
現在の宝篋印塔は通常の角柱墓同様下台と中台があり、その上に蓮華台・基礎・塔身・笠・相輪と続きます。

一般的には、基礎の部分の中央に「為 ○○家先祖代々各霊菩提《などと入れ、正面右端から時計周りに戒吊を入れていきます。
金剛界四仏
塔身には四方梵字を入れますが、一般的に次の金剛界四仏を刻みます。

東・・・阿閦あしゅくのウーン         南・・・宝生のタラーク
西・・・阿弥陀のキリーク      北・・・上空成就のアク


また梵字の周りには円を刻みますが、これは月輪と言い、仏の知徳が欠けることなく円満であるという意味があります。

伏鉢のある相輪

最近の相輪の構成は上から宝珠・請花・九輪・請花となっています。

しかし右の相輪をよく見てください、一番下に鉢を反対にしたような物があります。これは伏鉢と言い、古い宝篋印塔には必ずこの伏鉢が付いていました。しかし何時からか定かではありませんが、無くなってしまいました。この伏鉢は、お釈迦様のお墓(鉢を伏せた形のサンチー形式の塔)が変化したものと言われている大切なものです。

宝篋印塔や宝塔なども含めここ数十年の相輪には、伏鉢が無いものがほとんどですが、伏鉢のある相輪が本来の形とおもわれます。