石材業界の現状


日本各地には古い石塔が数多く残っているように、石屋という職業は数百年前から存在していますが、 現在の日本で公的な職業の分類に「石材業」というものはありません。分類的には建設業の中の一部ということになっています。

石材の業界としては各都道府県に石材組合や石材関係の任意団体等たくさんありますが、業界としての問題等を 解決する為の公的な受け口が有りません。

そして、石材施工や石貼り等の国家検定試験や技能オリンピックなどはありますが、それを取得しなくても、誰もが出来る仕事になっています。

昭和30年代までは石の加工は、ほとんど人の手でコツコツと仕上げていました。そういった時代には手に職があるものだけが 出来る仕事であったのが、現在のような機械化が進み、採石・加工・施工と分業化された現在では、誰もが出来る職業になってしまいました。

分業が悪いとは言いませんが、経営者自身は加工や施工には一切関知せず、仕入れた石を下請け業者に丸投げというブローカー的な石材店も多くなってきました。

最近よく墓地で見かけるのは、現場に箱詰された(中国からの輸入されたままの状態)製品を検品もせず、 石屋の店名も無いトラックに積まれて下請け業者が施工している様子です。

中国からの輸入された墓石が悪いわけではありません。現在の世界中にあらゆる中国製品が出回っている中、石材製品もたくさん輸入されています。 中国の石材製品が出回るようになって十数年経ちますが、当初は粗悪品もあり問題もありましたが、現在は技術的にもかなり良くなっています。
しかし残念ながら、日本では使用しないような問題のある石を、薬品や小細工で一見判らないようにした製品が今も無くならないのも事実です。

現在中国の石を使わないという石材店は皆無です。人件費の安い中国の石を使用する事で、昔から高価な墓石価格も抑える事が出来ます。 しかし、墓石に向かない石もあり、原石を吟味し信頼のおける輸入ルートで仕入れ、細部の検品や丁寧な文字彫刻、そして永年経っても不具合の出ない施工法など、 確かな仕事をすると、一部の安売り業者のような価格では販売できません。
また国内産の人気のある石を原石で中国に送り、それを向こうで加工再度輸入するといった製品もあり、国産材でもどこの丁場か判らない不安の残る製品もあります。

丁場・・・同じ銘柄の石でも採石場所(丁場)で、等級(石目・色・硬度等)があり、丁場名は重要項目です。


施主様から御注文頂いたお墓を、私達ほとんどの石材業者は心を込めて建立していますが、お墓の石は自然の産物であり、 年数が経つと不具合が発生する場合もあり、経年保証も大切な点です。

お墓は消耗品ではありません。一時の利益に走る薄利多売にも限界があり良い仕事は出来ません。
50年、100年と長い年月御祀りする大切なお墓に携わっているという心を持てる業界に成ってほしいと思います。