即興曲 Op.90-4 - シューベルト

いっそのこと降るなら降ってくれたほうがすっきりする。厚い雲に覆われてた空を彼は長い間睨んでいた。 空気はよどみ、しかし緊張を強いられ、心をもくすませてゆく。
天の神様がいるのかもしれない。黒い固体かと思われた雲はみるみるうちに姿を変え、光がさしてくる。安堵。そして、希望。 しかし、空にはまた暗雲がたちこめる。落胆。

厚い雲からこぼれる光 この曲は、次々に表情を変える冬の雲、をイメージさせます。 押さえにくい黒鍵がある上、ppを保とうとすると音が飛んでしまったり‥ いちばん弾きにくいところかもしれません。 弾き手も緊張を強いられています。(笑)

小鳥のさえずり、木の上だろうか。見つけたのは小鳥ではなく、木の影。 見ないようにしていた空を見上げると、どこまでも高く、どこまでも青く。 あ々、そういえばずいぶん前から背中がポカポカしていたように思う。 トンビの声が透き通って響きます。
音が安定して、しだいに力強くなってゆくところです。最初から明るい音ですが、小さい音で弾いて、 聞き手に「さらなる転調を期待」させたいところ。あとから気づく「あの時の背中のポカポカ」のつもりです。
右手の動きが変わらず、左手に深いメロディーになるところ。遠くのものが近づいてくるように聞かせたいんです。 全体はppのまま、右手はだんだん小さく、左手をだんだん大きく。聞き手に「え?こんなメロディー流れてた?」って 思わせるような。でも現実はppが保てず cresc.しちゃうんですよね〜。

大雨の日に飛行機に乗ったことがありますか。飛行機からその雲を見たことがありますか。 綿菓子のようにフワフワな雲が桃色の陽の光に照らされて、 天国があるならきっとあんなところ‥と私が思っている風景が広がります。
音がどんどん下降して、ドーンと打って、3連符のやわらかなフレーズに変わるところ。 地上の雷雨から飛び立って、雲の上へ視点を移したように感じています。

降りしきる雨。何日も続いている。雨になる前、この森は火で覆われていた。山火事が起きたのだった。 動物たちは焼け出され、木々は燃え尽くされてしまった。 真っ黒に朽ちて横たわる大木に、雨は冷たい仕打ちをするのであった。
中間部、切ないメロディーですね、泣きたくなっちゃいますよね。 私はここ、なかなか譜読みが進まなくて、本当に泣きたくなっちゃいました。(笑)  伴奏の和音連打は目立たせずおきたいですが、左手の低音はゴーン♪と響かせてしまったほうがバランスがいいように感じます。 どう思われますか。

緑の森では見逃してしまうであろう小さな小さな芽が輝く。森は、山は死んでいなかった。 芽は葉をつけ、木へと育っていくだろう。虫たちも動物たちも戻ってくるだろう。かならず。
音をずらしただけで、どうしてこんなに穏やかな響きになるんでしょう。 この部分、頭の音は先の悲しいフレーズと同じなんです。だから音をなぞるだけでは2打目を待たないと転調は わかりません。でも、どうしても、最初の音から転調を聞かせたいものです。

この曲は8分20秒あります。私の録音の中ではいちばん長いものです。中間部だけを練習しているときは思いっきり 弾けたのですが、後半に体力を残しておこうとすると、身体が小さくしか動けないのかしょぼ〜くなってしまいます。 長い曲をどう弾いていくかは今後の課題です。