「女番長」だなんてあだ名もあるし、クラスの子たちは子供っぽすぎると正直思うし、だけど、だからこそ、 このことはみんなに知られたくない。お人形さんと一緒じゃないと眠れないこと。私がずーっとちっちゃかったとき、 おばあちゃまが買ってくれたお人形。おかあさんは「もう汚いから捨てなさい」って言うの、ちっとも汚くなんかないのに。
誰しも経験があると思うのです。特別なお人形やぬいぐるみ。タオルや毛布かもしれません。 それと一緒だと落ち着けて、それと一緒じゃないと嫌なんです。
私は「赤いクマちゃん」でした。もう何度も腕がもげて、目はとれて、そのたびに母が繕って。
手垢やよだれで真っ黒になっているからと母が洗うと、バケツをひっくり返したように泣き叫んで。
新しいおもちゃをもらっても、赤いクマちゃんを抱っこしたまま遊んでみたり。叱られたときは、
赤いクマちゃん相手に愚痴ってみたり。
親友のような恋人のような。初めて「執着」する対象。
その行事はなんと呼ぶのでしょうか。メインは雛人形だと思うのですが、人形を供養するというお祭りがあります。 「赤いクマちゃん」との別れの朝。私はどれだけ駄々をこねたのでしょう。 今晩からもう一生眠らない、と誓った記憶があります。だってクマちゃんがいなかったら眠れないもの。 ま、実際はなんてことなく寝ましたけどね。(笑)
初めて恋心を抱き、初めて別離を経験する。
想っている相手と長く時間を過ごせるということは、相手からも強く想われているからだそうです。
「人形へのセレナーデ(恋歌)」を歌った少女には、きっと、人形からの恋歌も聞こえているのだと思います。 彼女にだけ、ね。