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 もうひとつのストレス対策は、「いま・ここ」に集中することと「ゆっくり行動すること」ではないかと思います。
 じつは、人はほとんどの時間を自分の頭の中での空想に費やしているのです。例え誰かと話をしているときでも、相手の話を聞いているようで聞いていない。その間も自分の頭の中にどんどん考えが湧き起こり、判断したり評価したりと忙しいのです。そうなると、頭はもう「いま・ここ」ではなく、別のところ、遠い過去や未来に飛んでいってしまいます。ただひたすら聴くということはとても難しいことです。
 まして独りでいるときは、考えは自由にどこへでも飛び回れますから、ますますその傾向が強いものです。無意識にからだを動かしてはいても頭は別のことを考えているということがありませんか。だから気がついたら、うっかりミスをしてしまっている。それだけ「いま・ここ」に集中するということは難しいことなのです。
 でも、もし「いま・ここ」に集中することができれば、ストレスは減ると思います。いまやっていることが苦痛なのは、なぜこんなしんどいことをしなければならないんだとか、こんなことをしてこの先どうなるのだ、と頭が考えてしまうから「苦」が生まれてしまうのです。
 たとえば、健康にいいからとウォーキングを始めたとします。ところがなかなか効果がみえてこない。人からは続けなければだめ、と云われる。すると益々がんばって歩く。それでも効果がないと、もう歩くことが面倒で苦痛になってくる。これがストレスです。なぜそうなるのかと云えば、歩くことを楽しんでいないからです。結果ばかりにこころを奪われずに歩くこと自体を楽しめば、ストレスは発生しないのです。結果を求めず、「いま・ここ」で歩くことを楽しみ集中すると、そこにはストレスは生まれません。夢中で楽しんでいるときは、誰でも「もう少し今ここにとどまりたい」と思うものです。そして先のことなど考えません。楽しんでいれば、結果は後から付いてくるものなのです。

 もうひとつの「ゆっくり行動すること」。これは今盛んに「スローライフ」ということがいわれていますが、社会全体のスピード化によって人々がなにかに追い立てられるように急ぎ足で歩いていることへの警告から生まれた言葉です。
 子供の頃から親の決めたレールに沿って大人のリズムで走り続けさせられる。そしてすぐに結果を求められる。となりの子に遅れをとったり、よそのこと違っていることを許されない。そんな育ち方をすれば、その習慣は大人になっても急には変わらない。かくして親となった人は自分の子供も同じ価値観で育てる、という悪循環に陥るわけです。
 この悪循環を断ち切るには、一度歩みを止め、本当に自分は生きる喜びを味わいながら生きているのかを、ゆっくりと自分自身に問いかけてみる余裕が必要です。
 それにはまず、習慣的にあわててしている行動のすべてを、スピードダウンすることから始めなければなりません。人間が一日にできることなど所詮たいしたことではなく、どの人にも大きな差などありません。あせったところでそんなに変わらないのです。むしろゆっくり行動することで今まで気がつかなかった多くのことを発見するでしょう。一体これまで何に追い立てられてきたのかというと、自分自身の習慣だったということがわかるでしょう。そしてゆっくり行動することが生きているという実感を伴うことや、ゆっくりでも得られることはたくさんあることに気づくでしょう。

 「いま・ここ」に集中するコツは、「動作をゆっくりすること」。そして「いま・ここ」で「ゆっくり動いている」からだの感覚を感じ味わい、楽しむことなのです。




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