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 残念ながら、こうすればストレスがたまらない、ストレスが解消できるというひとつの答えはありません。それは例えば、私はカラオケに行って大声で歌えば日頃のうっぷんが晴れてすっきりする、という人がいるかと思えば、私はカラオケなんて歌は下手だし、人の歌っているのを聞くのも面白くないから大嫌いだという人もいます。また、別の例では、交通事故を起こして足を骨折したとします。その時、ある人はなぜ私がこんな目にあわなければならないんだ、とひどく落ち込みますが、事故を起こして痛いしつらいけれど、骨折だけで済み命を落とさずに済んだことを喜ばしいことだと考える人もいるのです。
 同じ出来事が起こっても、人によって受け止め方や考え方が大きく違うのです。ですから、ストレスの対処法も人によってそれぞれ違って当然なのですが、いわゆるストレスをためやすい人というのは、共通して出来事を否定的に考えたり、先のことを悲観的に考えるクセがあります。実際に先の交通事故の場合でも、それをただ否定的に捉える人よりも、肯定的に捉える人の方が、気が楽だし傷の治りも早いわけです。もうひとつは、いつまでも過去の出来事にこだわり続けるクセです。起きてしまった事実は、どうがんばっても変えることはできません。しかし、忘れることや考え方を変えることはできます。

 つまり、ものごとをコントロールしようとすることが「苦」を生むのです。人は過去も未来も完璧にコントロールなどできないのです。相手や状況は自分の思い通りにはならないのです。能力以上のことをしようとするところに「苦」が生まれるのです。いつまでも過ぎてしまったことにこだわって悔やんだり悲しんだりする。どうなるかわからない先のことを必要以上に心配する。そういったエネルギーを、今・現在に注いだほうがエネルギーの有効利用なのです。今・ここという、その時その場を楽しむことにエネルギーを使ったほうが、身体の潜在能力が存分に発揮できるのです。「もしかしたら・・・」とか「いざという時」に備えるのではなく、「今」という足場にしっかり立つことなのです。将来訪れるかもしれない「いざという時」も、その時点では「今」なのです。今のあなたなら、その「いざという時」になったら、もう次の「いざという時」のことに思いは飛んでいることでしょう。これでは「今」を楽しむゆとりもエネルギーもなくなってしまいます。

 私はそんなふうに考え方を変えるようになってから、とても気持ちが楽になり、今を楽しく過ごせるようになりました。こういう考え方、暮らし方を人に押し付けるつもりは毛頭ありませんが、同じ生きるなら楽に楽しく、と思うのは誰も同じじゃないでしょうか。 人生楽しいことばかりではありませんが、つらいことばかりでもないのです。つらい時こそ、そういう発想の転換ができるようになれば、苦しみを乗り越える力となり、乗り越えられたことが、人間としての大きな力になるのだと思います。
 苦しみの渦中に、余裕を持ってこんな考え方をすることは難しいことのように思えますが、冷静にさまざまな角度からものごとを捉えることができるようになると、徐々にその出来事の意味が理解できるようになり、楽に生きられるようになります。例えその理解が唯一の正解ではなくても、少しは気が楽になります。
 答えはひとつだけではありません。あなたにはいろんな考え方、やり方を選ぶ自由があるのです。その自由を、自分自身で縛ってしまわないようにしてください。ストレスをただ悪いものとして捉えるのでなく、そこに様々な意味が隠されているということに気づいて、ストレスに気楽に向き合うことです。なにか出来事が起こった時、ストレスを感じた時、これまでのクセに気づいて、もっと別の見方や考え方が出来ることがわかると、そこから予期せぬチャンスが生まれたり、いろんなことを教えられたりするものです。
 クセは変えられるものです。人も含めて、自然界のものはすべて、常に変化し続けるのです。楽を味あうために、今に没頭し今を楽しみながら、少しずつでもいいですから変わっていってください。



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