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 普段起こらないことが、ある時突然身体に起こると、誰でも不安になります。
心配で病院に行き診察を受けられると思いますが、検査をしてもどこも異常が見られない場合も多くあります。
 身体的異常がないのになぜこういうことが起こるのか?という、新たな心配が生まれることもよく分ります。
 しかし、まずは重い病気ではないことで、ひと安心されていいのではないでしょうか。

 では、なぜ検査で異常が見つからないのにこんなことが起こったのか?
 身体には生命のバランスを維持する自律神経系、内分泌系というシステムがあります。
 自律神経は、たとえば目の前に外敵が現れて緊張すると(ストレス状態)、交感神経が興奮し身体は自動的に心拍数や呼吸数・血圧を上昇させ、血流をコントロールしてすぐに戦える体制をつくります。
 敵が去れば(ストレス状態が解除されると)今度は副交感神経が作用し、心拍・血圧を下げ平常時に戻します。
 今の世の中ではこのような生命を脅かす身体的な危機状態は少ないわけですが、代わりに目に見えない精神的なストレスが常に身体を脅かしていると言えます。
 そのため、慢性的な不安や緊張・恐れや怒りといった情動反応がこのシステムの働きを乱してしまいがちになります。
 このように身体の調整機能が不安定になると、検査で目に見える変化や数値の異常がなくても、身体にさまざまな症状が表れることがあります。
 それは決して気のせいではなく、検査では説明できないだけで実際にこういった原因があり、現実に身体に起きている生理的現象なのです。

 不安・恐れ・怒りなどの感情はそれが不快であるために無意識の領域に抑圧されます。
 無意識下に押さえ込まれた感情は意識のコントロールがきかない形で活動します。
 つまり自分の意志とは関係のないところで自律神経や内分泌系が異常な働きをして、身体に様々な症状を出します。

 検査で異常のないこと、そして異常が無くても身体の変調は起こること、また不安は誰にでもあるごく自然な感情であることをまず受け入れることが大切です。人間の心身の状態は常に変化しているのが普通なのです。
 不安を取り除く必要はありません。気にしないでおこうと思えば思うほど、そのことにとらわれてしまいます。眠ろうと努力すればするほど眠れないのと同じです。
 症状にとらわれてばかりいると、貴重な現実の時間を無駄にしてしまいますし、不安があるのは自然なことと認めるほうが気持ちが楽になります。

 また、身体に関する不安以外にも日常的なストレスは誰にでもたくさんあると思います。
 ストレスは誰でも抱えるものですし、自分を責める必要はありません
 身体の疲労が「安め」のサインであるのと同様に、心の疲れにも休息が必要なのです。
 もしストレスによる身体症状が自覚できずに、これまでと同じように「一生懸命の生活」を続けていれば、もっと重い病気になっていたかもしれません。
 「原因不明の身体症状」はそのような最悪の事態を防ぐためのサインでもあるのです。
 ですから、ストレスやそれに伴う身体の症状はつらいでしょうが、それをただ悪いものというとらえかたではなく、これまでの「生活習慣」や「パターン化した考え方」を見直すチャンスとでも思ってください。

 検査をしてもどこにも異常が無いとすれば、そのことに安心し、症状に振り回されない生活をしたほうが有意義でしょう。
 症状にとらわれすぎてそれを理由に苦しいからと現実の生活から逃避するか、苦しくてもその苦悩を受け入れたうえで「いま」「ここ」という大切な時間・空間に自分の本当の目的を実現するために行動するか。
 あなたにはどちらを選ぶかという選択の自由があります。
 あせらずに、できることからいっしょにやっていきましょう。


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