プラスチックを畑で収穫し温暖化防止へ

トウモロコシ、サトウキビ、サツマイモなどの成分を科学合成した植物プラスチックで、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を放出せず、最終的には土に分解する新素材です。強度や価格的に難点はあるものの、徐々に浸透していくものと思われます。

トウモロコシの糖質だら採りだした乳酸(PLA)は従来のプラスチックのように硬く成形できる。
米カーギルダウ社が2002年に年産14万トンのPLA樹脂の製造施設を造り、供給を始めた。日本の化学メーカがフィルムに加工、NTTドコモが請求書の封筒に採用した。トウモロコシ10粒でA4のフィルム1枚になる。PLAを使った植物プラスチックは、高温・高湿の特殊な条件下でしか分解しない。石油系プラスチックに置き換わる素材としての製品開発が急速に進み始めた。

ユニチカが焼く60度で変形する耐熱性の低さを克服して、電子レンジ加熱ができる食品容器を開発した。食べ残しごと捨てても堆肥にできる、というのが売りだ。
トヨタ自動車はトランク内のスペアタイヤ収納カバーと床マットに導入、内装の樹脂部品を可能な部分から置き換えていくという。
富士通は、植物プラスチックを外装に使ったノートパソコンを売り出す予定
三洋電機はCDを商品化した

日本で使われる石油系プラスチックは年約1500万トン、植物プラスチックは約6千トン(02年推計)だが、業界では15年には総量の1割が取って代わると試算する。

植物プラスチックは分解性を持つが、土に戻ることが主目的ではない。
80年代、大量消費の世の中で捨てても腐らない石油系プラスチックをどう消すかが新しいプラスチック開発の目的だった。原料も分解が早い石油系のものが主流だったが、90年代に地球温暖化防止と循環型社会形成が大きな課題になり、植物系に関心が移った。いずれ枯渇する石油を原料にしないこと、カーボン・ニュートラルで温暖化につながらないことが最大の眼目である。

カーボン・ニュートラルとは
植物は光合成によって大気中のCO2を吸収して育つため、プラスチックにして使用後に仮に燃やしても、もともと生態系に存在したもので排出増にはならないという考え方。京都議定書でもこうしたCO2は排出にカウントされない。

 

2003/10/13付け朝日新聞から転載