再生医療

細胞株の樹立


卵巣から排卵された卵は輪卵管内で受精する。受精卵は卵割をくりかえしながら移動し、受精後7日目には胞胚となり、子宮に達して子宮内壁に付着、着床する。

 

 

卵管で受精卵と呼ばれる1個の細胞が出来ると細胞分裂(卵割)をはじめ、細胞の数が増えて行く。受精から1週間で子宮の壁に着床する。そのときの細胞の数は約100個ほどで胚盤胞とよばれる状態にあり、その内部には内部細胞塊と呼ばれる細胞群がある。

内部細胞塊から胎児の体をつくるすべての種類の組織や器官ができあがる。このとき、内部細胞塊の細胞は分化しておらず、将来、どの組織や器官にでもなることができる。内部細胞塊の細胞は、数日間だけ存在し、そのあと体のさまざまな組織へと分化を進めていく。

この内部細胞塊の細胞を取り出して、ある特殊な方法で培養すると、未分化の状態を保ったまま細胞分裂をくりかえして増殖できる細胞が得られる。これがES細胞である。このように、同じ種類の細胞を継続して培養できるようにすることを「 細胞株を樹立する」という。

ES細胞はがん化などの異常をおこすことなく、正常な状態を保ったまま無限に増殖しつづけることができる。さらにES細胞は特定の分化因子を加えることで、内部細胞塊と同じようにあらゆる種類の組織細胞に分化することができる。

 

 

クローン技術を用いて、卵子提供者の核を取り除いた卵子に、患者から採取した体細胞の核を移植して「ヒトクローン胚」をつくる。
その胚を培養して、胚盤胞の内部細胞塊を取り出す。内部細胞塊を培養して免疫拒絶反応をおこさないES細胞を得る。
ES細胞に特定の分化因子を加えることで、必要な細胞や組織をつくりだしたあと、患者本人に移植する。

 

 

すでに、カニクイザルのES細胞から神経組織、軟骨、骨、筋肉、毛包、上皮組織への分化が確認されているという。
パーキンソン病治療のドーパミン産生細胞、糖尿病治療のインスリン産生細胞、脊髄損傷の治療に役立つ運動ニューロン、肝硬変治療の肝細胞、心筋梗塞治療の心筋細胞、白血病治療の造血幹細胞などをつくことができると考えられている。

さらには、軟骨、骨、筋肉、脂肪細胞、などの間葉系細胞は、骨や関節を修復できると期待されている。また、網膜再生による視力機能回復も見えてきた。

 

 

 

 

 

資料 
Newton 2003/2月号
フォトサイエンス生物図録(数研出版)