画像提供 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

地球接近型小惑星「イトカワ」(地球からの距離約3億キロメートル)の観測と 表面の岩石標本を採取し地球に持ち帰る世界初のサンプル・リターン・ミッションを行うことを目的に、宇宙航空研究開発機構科学研究所の探査船「はやぶさ」(重量は約500kg)が2003年5月9日鹿児島県内之浦からM−V型ロケット5号機によって打ち上げられました。

「はやぶさ」の使命
1、低燃費のイオンエンジンでの長距離航行
2、惑星の重力を利用しての加速(スウィングバイ)
3、探査機自らの判断で(人口頭脳)、小惑星に接近着陸
4、小惑星での試料採取し離陸する
5、地球へ帰還し試料を回収する
 

2005年夏に小惑星に到着し、約3か月間、小惑星付近に滞在して科学観測や表面からのサンプル採取を行なった後、小惑星から離脱、2007年夏に地球に帰還する予定。
高性能なイオンエンジン(マイクロ波によって、 推進剤のキセノンをイオンに電離し生成したイオンを強力な電場で加速、高速で噴射させ、その反動を 利用して推進力を獲得する)を使用し出発から帰還まで約4年の旅となる。
 探査機は高い自律機能(人工頭脳)を持ち、カメラの撮像やレーザー高度計等により距離や形をとらえ、探査機自身がその場でとるべき行動を考えます。航法用カメラ、レーザ高度計、近距離センサ、衝突防止センサー等を組み合わせて使用する。

画像提供 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 

 

探査機は、小惑星の近傍に到着後、しばらくの間、高度10km程度の上空から小惑星のデータを収集する。
「いとかわ」に「はやぶさ」の影とターゲットマーカ

推進エンジンを調節しながら降下し、十分降下した後、推進エンジンを停止し自由落下に入る。探査機から目印となる低反発性ターゲットマーカ(149ヶ国88万人分の署名入り)を投下し。それを目標にして着地(数秒間)する

サンプル収集の方法は、まず、重さが数グラムの金属球を秒速300m位の速度で打ち出す。金属球は、小惑星の表面を破砕し、その結果、かけらが飛び散りる。 小惑星の重力はとても小さいため、飛び散った破片は、サンプラー・ホーンに 導かれ、探査機内の収集箱へとのぼっていき収集を終える。

資料提供 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

「はやぶさ」は11月19日と25日にイトカワ表面で岩が比較的少ない「ミューゼスの海」の中に着陸しサンプル採取の予定で、その前に宇宙航空研究開発機構では着陸地点の名称をインターネットで募集を始めた。

2005年7月と10月に3つの姿勢制御装置のうち2つが故障する。

 

探査ロボット「ミネルバ」

 

ターゲットマーカ

 

資料提供 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

重力の少ない小惑星に投下するターゲットマーカはバウンドしないよう特別な工夫がなされていたり、極度に薄いアルミ球など日本の宇宙技術の多数が町工場からの技術です。

 

2005年11月12日午後3時半探査船「はやぶさ」は小型探査ロボット「ミネルバ」をイトカワ表面に向けて投下するがイトカワには到達せず、行方不明になる。
 ミネルバ自体の機能は正常に維持されており、貴重なデータを収集し送信を続けている。

2005年11月20日1回目の着陸を試みる。
地上からの指令により高度 40m の地点で、探査機自身が毎秒 9cm の減速を行って、ターゲットマーカを切り離し、それを目印にして降下着地に成功する。「はやぶさ」はその後ゆるやかな2回のバウンドを経て、およそ30分間にわたりイトカワ表面に接着陸状態を継続していたことが確認されています。しかし、障害物を感知し危険と判断した為、試料採取を行わずに離陸する。月以外の天体で離陸に成功した世界最初の探査機となる。

2005年11月25日午後10時「いとかわ」に向けて2度目の降下をはじめる。1度目に投下した目印を目標とするため、新たなターゲットマーカは使用せず26日午前7時前、高度54メートルで地表表面にあったマーカを認識、レーザ光で高度を測定しながら午前7時頃着陸を果たす。
午前7時過ぎ、試料採取装置を表面に接触させ金属玉撃ち込んだことが確認される。数ミリグラムの資料採取に成功し離陸したものと思われる。
小惑星は太陽系誕生当時の状態を残している可能性が高く、サンプル試料は太陽系誕生の起源を探る貴重な標本となり、アポロ宇宙船が持ち帰った月の石に匹敵する成果といえる。

 はやぶさミッションのうち1〜4までが達成され最終段階にはいる。ただトラブル続きで燃料も減っており、帰路はかなり厳しい状況となるだろう。

「はやぶさ」は12月上旬に「いとかわ」を離れ、2007年6月帰還の予定でオーストラリアの砂漠地帯に試料を投下する。 

資料提供 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

 

地球帰還から再突入へ

MUSES−C計画の最終フェーズでは、小惑星のサンプルを搭載した直径40cmの小型の回収カプセルが惑星間軌道から秒速12kmを超える速度で直接地球大気圏に再突入します。
再突入中にカプセルの受ける最大空力加熱量はスペースシャトルの場合より何十倍も大きく、月から戻ってきたアポロの場合よりも数倍大きい過酷な環境です。
耐熱材料の開発は、世界的にも最先端の技術です。カプセルは大気による十分な減速後、パラシュートを放出して地上に軟着陸します。その際、カプセルからのビーコン信号によって地上で位置を割り出し回収します。

資料提供 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

  「はやぶさミッション」にかかったコストは約127億円です。

 

2005年12月7日 JAXAは11月26日の着陸時に「いとかわ」表面の試料採取が出来なかった可能性が高いと発表した。
得られたデータの分析から、金属玉を発射させるための火薬爆発を示すデータの記録が確認されなかったからだ。JAXAでは誤射を防ぐために発射機構を止める指令が何らかの理由で着陸前に実行されていた可能性が高いとしている。しかし、着陸時に舞い上がった細かい砂が採取装置に入っている可能性も考えられるという。
JAXAは「はやぶさ」を「いとかわ」から離れさせ、地球へ向かわせる方針だが、依然として姿勢制御が難しい状況が続いている。
                        2005年12月9日朝日新聞より

 

  資料提供     宇宙航空研究開発機構(JAXA)
朝日新聞社