ウーンの法則

グルメブームを斬る

 

 テレビの料理番組などを見ていると、食べた料理の感想を述べるとき最初に出てくるのは常に ”うーん” という言葉。言葉と言うより唸り声。短い時もあれば長い時もある。

 一概には言えないが、この 「ウーン」 の長さによってその料理の味を判断できそうだ。又、料理の専門家ほど、この唸り声を発することは少なく、素人に近い人の常用語のようだ。

 駆け出しの女性アナウンサーに至っては、美味しかろうが、美味しくなかろうが一口食べたらとにかく 「ウーーーン」。視聴者にとって何の参考にもならない。

 料理番組の堺正章さんは、美味しいときは 「美味い」 「ウン美味い」 まずい時は 「マズイ」 と簡潔でわかりやすく、参考になる。

 「ウーン」は料理のまずさ加減を表しているように思えるのだが、どうか。

 しからば、どうしてまずい時のウーンなのか。それはまずいとは言えないので、頭の中で「まずい」に変わる言葉を探している時間であろう。それゆえ、まずければまずい程「ウーン」が長くなる。

 そこから導かれる言葉は「まろやかです」「歯ごたえが良い」「シャキシャキ感がある」「喉ごしが良い」「さっぱりしている」さらには「ジューシィ」「マイルド」など意味の無いことを言い出し、その料理の特徴のうまさとは直接関係ない言葉が考え出される。さらに、まずい程連発される。これを「ウーンの法則」という。

 シャキシャキ感がいいのなら生キャベツを食べろ、歯ごたえを求めるならスルメをかじれ、喉ごしを欲するならビールを浴びるほど飲め、視聴者が聞きたいのは味がどうかということだ、中途半端なジューシイとかマイルドとか訳のわからん言葉を使わずに日本語で言え!
 挙句の果てに「ぜんぜん美味しい」とのたまう。「ぜんぜん」と言ったなら続く言葉は「美味しくない」を期待するではないか(注 この手の言いまわしは最近よく聞きますが、これで合っているのかな、自信がなくなってきた)

 少々、興奮したみたいです。反省

 この「ウーンの法則」は食べ歩き番組などで、素人が作った料理の感想などで遺憾無く発揮される。絶対にまずいとか、美味しくないとは言えないのです。
 美味しくないので美味しいとは言いずらいし、何とか料理人が満足するような、美味しいと感じられるようなニュアンスを持つ言葉を考え出そうと頭の中はぐるぐる回っている。
 また、大物芸能人の作った料理に対しても「ウーン」の法則」が適用されるのである。

 しかし、この「ウーンの法則」が崩壊する時があります。お笑い芸能人や新人の芸能人が作った料理の場合、もはや「うーんの法則」は無視され、まずければ「まずい」とはっきり宣言されます。極端な場合は美味しくても何か粗を探して文句を言われるのです。

 料理人が誰であれ美味しいのか美味しくないのかは、適切にはっきり言わなくては、公共の電波を使って嘘の情報を国民に流していることになるのでは。

 昨今のグルメブームからその手の番組が増え、俄か食通が雨後の竹の子のように蔓延し、ウーンの法則が鉄壁の橋頭堡を築いています。

 庶民がめったに口にすることが出来ない食材を無造作に食べて「ウーン」と唸っている芸能人を見ていて不思議に思うのは私だけでしょうか。
 

2003/11/2