牛歩戦術

4年ほど前の冬、夜勤を終えての帰宅途上の話です。

その朝はかなり冷えこみ小雪が舞っていました。いつもと同じように国道171号線に入り京都方面に向かってバイクを走らせていましたが、進むにつれて渋滞してきました。
道路には雪が積もりはじめており、京都に近づくほどひどくなってきます。しかしバイクにはあまり影響はありません、すり抜けでスイスイ前に行けます。

島本町あたりから車の流れはますます悪くなり、少し進むと停止し以前国会で見られた牛歩戦術のような状態です。
車の運転手がすり抜けする私をうらめしそうに見ているような気がしたので、胸を張ってカッコよくすり抜けしていると、見事に転倒してしまった。 カッコ悪る
それでも懲りずにすり抜けしながら前進したが(人は痛い目にあわないと懲りないと言いますが、私は痛い目にあっても懲りないようだ)、車の列は完全牛歩になり、私も牛歩気味に進む。

山崎付近では何故か車間距離が開いてきたのですり抜けしゃすく調子に乗っていると上り坂にかかる手前で再度転倒する。後続のバイクも転倒、その後ろのバイクも転倒、まさに連鎖反応。もちろん私に原因があったと思われるが、そんなことには構っていられない。
バイクを起こしながら坂の上方を見ると、上り切る寸前の車が車輪をスリップさせていた。回転を止めると徐々に下がり始める。車輪を空転させると車は下がりはしないが動かない。止めると下がる。この繰り返し。この時道路上のすべての車両は停止状態、スリップして喘いでいる車を除いて。
注目を一身に集めるスリップ中のドライバー、まさに時の人
結局、坂の中ほどで横を向いた状態で止まった。

私はこの坂を歩道上とは言え上る気にはならない。撤退した方がよさそうだ。方向を転換したところ、後ろの2台は早々と引き返している。よく見ると二人とも両足を地面に下ろしている。
なるほど、これは安定性がある。マネをしてもバチは当たるまい。
3台のバイクが両足着地すり足牛歩で撤収を敢行する。
安定性はあるのだが両足がずぶ濡れ状態で気持ちが悪いが、そんなことは言ってはいられない。

しばらく進むと裏道に抜ける路地があったので前を行く2台と別れを告げる。路地は凍結していなかったものの、裏道に入ると両足着地すり足やや牛歩戦術を取らざるを得ない。
我が家へはあと少し、がんばるオジサン。

大山崎郵便局から先は最後の難関の坂道になる。なだらかな上りとわりと急な下りが待っている。坂の上まで行った後、いったん待機する。右方向に曲がりながら下っているこの坂を降りるのは勇気がいる。
しばらくすると後続の車がやってきたが、上手にタイヤの跡を通っていく。なるほどその場所は摩擦熱のためか解けきる前のかき氷状態になっている。そこを通れば良いのかも思案のしどころだ。
タイヤの跡以外の場所は解け始めたソフトクリーム状態、ソフトが良いのかかき氷が良いのか、私はどちらかといえばソフトクリームの方が好きだ。好みでいこう。
ブレーキを前後とも利かしながら両足着地すり足ほぼ牛歩体制でゆっくりと下って行く。曲がりきった所で転倒して滑り落ちるも、通行量の極端に少ない道でもあり、この時点では最早たいしたことではない。むしろ、かき氷を選べばもっと悲惨な事になっていたかも知れない。

我が家にたどり着いた時には昼になっていた。歩いて帰ったほうが早かったかも知れない。みなさん、道路の凍結にはご注意を。