滋賀報知新聞 平成19年9月7日(月)の記事
         

息子の命をつなぐ母の道
映画「0(ゼロ)からの風


10月20日 近江八幡市で上映会
=鑑賞券発売中=


◆東近江・近江八幡市 竜王町◆
 飲酒・無免許の暴走ドライバーに一人息子の命を奪われ、心の支えを失った母の生きる姿を描いた映画「0(ゼロ)からの風」(国土交通省後援、文部科学省選定)の上映会が、十月二十日に近江八幡市鷹飼町にある男女共同参画センターで開かれる。現在、上映会主催者の近江八幡上映実行委員会が鑑賞券を発売している。

   映画のモデルとなったのは、最愛の夫に病で先立たれ、早稲田大学入学間もない一人息子・零さん(当時19歳)を、泥酔ドライバーに殺された鈴木共子さん=神奈川県=。

 同じ悲しみを背負う被害者を増やさない・生まれない社会にしなければと、鈴木さんは被害者遺族とともに刑法の厳罰化を成し遂げた。零さんが残した参考書などを使って受験勉強し早稲田大学にも入学、息子の分まで生きる決心をした。

 また、造形作家でもあることから、理不尽に命を絶たれた犠牲者たちを等身大パネルのメッセンジャーとしてよみがえらせ、命の重みを伝える展示会「生命のメッセージ展」も考案。

 塩屋俊監督は、鈴木さんに関するニュース映像を見て「この人の挑戦を映画化しなくてはならない」との衝動にかられ、製作費すべてを二百社以上の法人・個人からの寄付金で賄い、四年の歳月をかけて渾身(こんしん)の一作を完成させた。

 七月二十八日には、近江八幡上映会に先がけて竜王町立図書館で「試写会」が開かれた。子を持つ母親ら地域住民約四十人を前に、エグゼクティブプロデューサーの土屋哲男さんは「一人の女性の生きる姿を映画に残したいと、いろいろな方の思いがつながって完成した映画である。一人ひとりが感じてほしい」とあいさつ。

 参加者は、被害者・加害者・周囲の人々の心の動きが細かく描かれた作品を鑑賞し、自らの家族と重ね合わせかけがえのない日常の幸せを噛み締めた。

 山口喜代治竜王町長は、突然わが子を病で亡くした自らの体験に触れ「二十年経った今でも息子のことを考えると言葉にならない思いがこみあげてくる。命そして家族の大切さをもっと日頃から徹底して教育することが大切。この映画をこぞって鑑賞していただき、その思いを十分知ってほしい」と呼び掛けた。

 近江八幡市での上映会は、誰もが被害者・加害者になり得る社会だからこそ命を尊ぶ心を一人でも多くの人に取り戻してほしいと、長男を交通事故で亡くした竜王町橋本の田中博司・とし子さん夫妻が中心となって企画した。

 上映時間は、午前十時十五分と午後二時十五分、同五時十五分からの三回で、各上映前後に塩屋監督が舞台あいさつする予定。鑑賞券は一千円。チケット希望者は、近江八幡上映実行委員会事務局・田中さん(0748―58―0373、Eメールinochim2007@yahoo.co.jp)に問い合わせる。

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