朝日知新聞 平成19年11月17日(土)の記事
         

命の叫び 届け
犯罪・事故被害者のオブジェ展示


あすまで近江八幡 遺族の思いも
 殺人事件や交通事故など理不尽に命を奪われた人たちの等身大のオブジェなどを展示し、命の尊さを伝える「生命のメッセージ展in滋賀2007」が16日から、近江八幡市鷹飼町の県立男女共同参画センターではじまった。同展は全国を巡回しており、県内では03年に続き2回目。同実行委は「不条理な死を迎えた人たちが語りかけてくる思いを感じてほしい」としている。18日まで。入場無料。

 会場には、生前の元気な顔の写真が張られたオブジェ128体が展示されている。足元には日頃はいていた靴が置かれているほか、オブジェの胴体部分には、遺族や本人の思いが書き込まれている。
 「命を奪った相手を許さない」「生まれ変わる時もお母さんの可愛い息子であってね」という悲痛な遺族の声。「わたしは今7歳です。01年のわたしはどんなひとになってるかな。たのしみです」と、亡くなった子どもが未来に希望をふくらませ、友達とタイムカプセルに埋めた言葉なども。思い思いの言葉がつづられ、失われた命の大きさが痛切に伝わる。  また、入学式、部活動での写真や、友達との笑顔のプリクラなど、それぞれの人生の一瞬の表情が4枚一組で飾られている。
 県内からは、4人の被害者のオブジェが千羽鶴や寄せ書きなどとともに飾られている。「滋賀2007」実行委員長を務める田中博司さん(57)の長男幹弘さん(当時23)もその一人だ。04年9月に交通事故で幹弘さんを亡くした博司さんは、05年3月に津市で開催されたこの展覧会を見に行き、参加を決めた。スタッフとしてボランティアら約30人と準備を進めてきた。
 幹弘さんを亡くして3年たった今、博司さんは少しずつ心境が変わってきたという。「最初の1年は、父の日なら、去年は幹弘がプレゼントをくれたな、など前年のことを思い出してずっと悲しんでいた。今は、息子にしてやれることがなくなってしまった分、この展覧会に打ち込んでいます」
 会場を訪れた野洲市高木の辻めぐみさん(52)は、「大事な人の命が奪われると話すことも嫌になるはず。そんな苦しみのなか、声をあげているのだから、絶対行かなくちゃと思い、来ました。涙が出て仕方ありません」と話した。



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