滋賀報知新聞 平成19年11月11日(日)の記事
         

被害者を生まない社会へ
近江八幡市で 「生命のメッセージ展」
=16〜18日=


多くの来場者の心を揺さぶった映画 「0からの風」 の上映会

◆東近江・近江八幡市/竜王町◆
 人の気持ちに委ねるしかない----。一人息子を飲酒・無免許の暴走ドライバーに奪われた母の生きる姿と深き愛を描いた映画「0(ゼロ)からの風」(国土交通省後援、文部科学省選定)の県内初となる上映会が、近江八幡市鷹飼町にある県立男女共同参画センターでこのほど開かれ、映像に込められた塩屋俊監督そして被害者遺族の思いを来場者約400人が感じ取った。

 映画製作のきっかけは、塩屋監督が造形作家・鈴木共子さん=神奈川県=に関するニュースを見たこと。最愛の夫に病で先立たれた鈴木さんは、早稲田大学入学を喜び、夢と希望にあふれ、何の罪もない一人息子・零さん(当時19歳)を泥酔ドライバーに奪われた。

 同じ悲しみを背負う被害者を生まない社会にするため、被害者遺族と刑法の厳罰化に立ち上がり、理不尽に命を絶たれた犠牲者たちが命の重みを伝える展示会「生命のメッセージ展」も考案。

 舞台あいさつに駆け付けた塩屋監督は「愛する人を失ったという遺族が抱える現実は重く、映画で表現するのにたじろいだこともあった」と明かし、「しかし 『作らなくてはいけない』 という直感を信じ、誇れる仕事になった。人間は愚かなことを繰り返してしまうからこそ、映像が抑止効果になればと思う。そして、映画を見たみなさんが大事な人に伝えてほしい」と願う。

 映画には、わが子の死を受け入れられないまま遺体安置所で現実と向き合う母の苦しみや憎き加害者との対面などが、生々しく描かれている。 近江八幡上映会では、悲しみの中から息子の命をつなぐため、必死に生きる道を探す母の姿に、来場者の心が震え、何度も涙が頬をつたっていた。

 現在、全国各地に自主上映の輪が広がり、社員教育の一環で上映している企業もあるという。来年1月6日には大津市生涯学習センターでも上映される予定。

◆命を尊ぶ心を!
 誰もが被害者・加害者になり得る社会だからこそ、いのちを尊ぶ心を取り戻してほしいと、 「生命のメッセージ展in滋賀2007〜今 そして未来を生きる〜」 (後援=滋賀県、県教育委員会、県警察本部、滋賀報知新聞社など) が16〜18日、近江八幡市鷹飼町にある県立男女共同参画センター大ホールで開かれる。開催時間は、午前9時半から午後6時まで (18日のみ午後5時まで)。入場無料。

 滋賀県内での開催は平成15年に続いて2回目で、長男を交通事故で亡くした竜王町橋本の田中博司・とし子さん夫妻が中心となって、実行委員会形式で準備を進めてきた。

 会場には、殺人事件や交通犯罪、医療過誤、いじめ自殺などで命を絶たれた100人以上が、等身大の真っ白なパネルとなって蘇る。遺族が作った人型パネルの足元には必ず愛用の靴が置かれ、無言のメッセンジャーとなって命の重みを伝える。

 開催期間中は、メッセンジャー家族のミニスピーチや脳硬塞による後遺症と闘いながら創作活動を続ける河村武明さんの 「たけ無口な講演」、シングルマザーの大学生・小島有美子さんによる講演 「娘の命」 のほか、竜王町オカリナ同好会ドレ美と三重県を中心に活動しているザ・サークルによる生演奏もある。

 また、生命のメッセージ展参加家族である井上保孝・郁美さん夫妻が、17日午後1時半からアクティ近江八幡で開催される 「第10回おうみ犯罪被害者支援フォーラム2007」 で、東名高速道路で酒酔い運転の大型トラックに追突され、当時3歳と1歳のわが子が焼死し、被害者遺族となって感じたことを語る。

 生命のメッセージ展in滋賀2007実行委員会では、現在、ボランティアを募っている。

 詳しくは、田中さん(58−0373、ホームページ http://www.eonet.ne.jp/~inochim2007/")へ。



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