京都新聞 平成19年10月11日(月)の記事
         

命の大切さ、等身大で感じて
遺品・パネル展、湖国開催実る


 交通事故やいじめなどで亡くなった人の遺品や写真を等身大パネルとともに展示する「生命(いのち)のメッセージ展」が11月16日から滋賀県近江八幡市で開かれる。実行委員長は息子を交通事故で失った竜王町の男性。「息子に命の大切さを訴えてほしい」と地元開催を働きかけた。10月20日にはプレイベントがある。

 男性は竜王町橋本の会社員田中博司さん(57)。2004年9月、長男の幹弘さん=当時(23)=を長男の友人の居眠り運転で亡くした。

 「息子はなぜ亡くならなくてはならなかったのか」。刑事裁判を通じても疑問は解けず、悲しみは深まるばかりだった。

 苦しむ中、05年に三重県津市で開催されていた同展を知った。飲酒運転事故で息子を亡くした神奈川県の鈴木共子さんらが01年から全国各地で開いており、同じ悲しみを抱く人たちが胸のうちを展示に託していた。

 以来2年間。幹弘さんのパネルも加わった同展が開かれるたびに会場へ足を運んだ。茨城、広島、宮崎…。その数は約20カ所に上った。

 「息子に会いたい一心だった」。悲しみを共有できる場でもあった。

 近江八幡市では幹弘さんをはじめ約130人のパネルを展示する。不自由な右手で生きる希望を絵と詩で表現し続ける河村武明さんの作品を展示するほか、講演もある。

 プレイベントでは鈴木さんが危険運転致死傷罪を設ける運動をし、息子の人生まで生きようと大学に入学するまでを描いた映画「ゼロからの風」を1日3回上映する。

 田中さんは「息子が地元に帰ってくる。命の大切さを訴えるパネルのメッセンジャーと対話してほしい」と話している。

 プレイベント(有料)、メッセージ展(無料、11月18日まで)は、いずれも近江八幡市鷹飼町の県立男女共同参画センターで開かれる。問い合わせは田中さんTEL0748(58)0373。



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