映画の感想
戦争作品編
(海外編)
「フューリー」
(2014アメリカ、デヴィット・エアー監督)
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欧州戦線末期のM4中戦車「フューリー」号と、ブラッド・ピット演じる車長たちの人間模様を描いた作品。
戦場は既にフランスからドイツ本国へ移っており、残敵掃討の段階。SS隊員は降伏を許されずにその場で殺害されたりするところはなかなかリアルだし、戦場の人間模様も「コンバット」を彷彿とさせてそれなりに面白い。
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「実物のティーガーTが登場する」のは公開当時話題を呼び、確かに見応えがあるのだけど、わざと背面装甲を向けて「撃って下さい」と言わんばかりの行動を
取るのはちょっと興醒めしてしまう。M4の主砲では零距離射撃でも正面装甲を貫通できないというのは分かるが、それなら何か別のオチにすればよかったの
に・・・。
しかし、それにもまして興醒めなのは終盤のSS部隊との戦闘場面。もうこれは漫画以下というか、無双ゲームの世界に行ってしまっており、従って
そこから繋がるラストには感動も何もないのだ。
中盤まで割と見れただけに、終盤のこの崩壊ぶりが残念である(平成28年3月鑑賞)。
「スターリングラード」
(2001米英独愛合作、ジャン=ジャック・アノー監督)
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スターリングラード戦を舞台にしたロシア軍スナイパーの話ということで、どうも地味な内容を連想してあまり期待せずに見たのだが・・・・いや、これは実に面白かった。
主演は「A.I」」の男娼ロボット役の熱演で有名な(?)ジュード・ロウ。
実際、彼が演じた伝説の狙撃兵ヴァシリ・ザイチェフというのは実在の軍人らしい(私は知らなかったけど)。ス
トーリーは実にテンポよく進み、また狙撃場面でのカメラワークや演出が本当によくできていて見ている方を退屈させない。そして何より、ザイチェフの好敵手
であるドイツ軍少佐を演じるエド・ハリスの渋〜い演技がこれまた素晴らしい。こんな魅力的な敵役を見たのは「ブレードランナー」のルトガー・ハウアー以来
ではなかろうか(最初軍用列車に乗っているシーンを見た時は「何や、この老けたおっさんは?パウルス将軍か?」と思ったけど)。
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ス
ターリングラードを巡る両軍の戦闘も、時間は短いながらもそれなりに出てくるし(個人的には冒頭のシュトゥーカの爆撃シーンがなかなかよかった)、ソ連軍
が行った幾多の非人道的な戦闘(督戦隊が退却する味方を射殺していく場面とか)もちゃんと描かれているし、また、ガレキの山と化した当時のスターリング
ラードの街並みも雰囲気たっぷりに再現されていて、これだったら数年遅れのビデオ鑑賞ではなく、封切り時に映画館のスクリーンで見ておけば良かったと少し
後悔。
「ウインドトーカーズ」
(2002アメリカ、ジョン・ウー監督)
第二次大戦のサイパン戦を舞台に、ニコラス・ケイジの演じる海兵隊員と、アメリカ先住民であるナヴァホ族(本人曰く、インディアンとは違うらしい)の暗号兵との友情を描いた作品。
彼ら自身の言語で交信することができ、傍受されても解読が困難なナヴァホの暗号兵というのは実際に活躍したそうな。
さて、この作品、ドラマとしてはそれなりによく出来ているとは思う。荒んでいた主人公が、最初は冷たく当たっていたナヴァホ族の戦友に対し次第に友情を感
じるようになっていくところとかね。また、とにかく火薬を派手に使いまくっている戦闘シーンもそれなりに見ごたえあり。
が、もうこれは外国映画では常識なのかもしれないけど、日本軍の描写がやっぱり「ずれている」。
特に、ナヴァホの戦友に「お前は容姿が日本人に似ているから」(ほんまかいな・・・)と日本軍兵士に変装させ、滅茶苦茶な発音の日本語で「ホリョダ」とか言わせるシーンは爆笑もの(それを信じる日本軍もどうかと思うが)。
終盤付近で突如現れてシャーマンを片っ端から吹っ飛ばしていく日本軍の巨大砲もやたらと凄かった・・・。
「ヒトラー最期の12日間」
(2004独墺伊、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督)
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ベルリン陥落直前のヒトラーとその側近達の姿を、女性秘書の目を通して描いたドキュメンタリータッチの作品。
かなり長くて、派手な戦闘シーンなどは殆どないけど、これは面白い。追い詰められた者たちが、地下壕の中という閉鎖空間で織りなす狂想曲。
ヒムラーのように連合軍への投降を目論む者もいれば、投げやりになってしまう者もおり、一方で最後まで帝国に忠誠を尽くす者もいる。
あえて製作サイドの主観を交えずに淡々と史実を再現しているところが良い。
フリードリヒ大王の肖像画が壁に飾ってあったり、ハンナ・ライチュのベルリン強行着陸場面が出てきたりと、細かいところに凝っている所もポイント高し。
自分が一番印象的だったのは、ゲッベルス夫妻が子供たちに服毒を促す場面。あれは悲惨すぎる・・・・。
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「砂漠の鬼将軍」
(1951アメリカ、ヘンリー・ハサウェイ監督)
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500円シリーズDVDとして発売されている、「水野晴郎のDVDで観る世界名作映画」シリーズの一つ(^^;。
一昔前、映画のビデオが一本1万数千円もした時代と比べると、随分といい時代になったもんだと実感。これはタイトルを見れば分かるとおり、ドイツのロンメル元帥を描いた作品。ちなみに原題はそのまんま「ザ・デザート・フォックス」。この邦題、果たしてセンスがあるのかないのか・・・・。
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イ
ギリス軍捕虜の視点から見たロンメルの姿を描く、という手法をとっているのだが、実際には北アフリカ戦の場面はあまり出てこない。話が始まるのもDAK
(ドイツアフリカ軍団)の攻勢終末点にして北アフリカ戦線のターニング・ポイントとなったエル・アラメインから(ロンメルが最も活躍したトブルク攻略等は
出てこない)。
メインとなるのは連合軍のノルマンディー上陸と、B軍集団司令官としてそれを迎撃するロンメルの、家族との交流や、ヒトラーへのクーデター計画に巻き込まれて(?)いく過程、ヒトラーやルントシュテットとの確執、等々。
この作品でのロンメルは、あくまでも「人間味に溢れた、悲劇の将軍」という描かれ方がなされており、第二次大戦終結から6年後に作られた作品であることを考えると、アメリカ人のロンメル観という意味ではなかなか興味深いものがある。
いずれにせよ、「鬼将軍」という邦題は羊頭狗肉であろう(昭和期の外国戦争映画の邦題はこんなのばっかりだが)。
戦闘シーンは、全くと言っていいほどなし。
ナレーションが流れる中、実際の第二次大戦の記録映像が映し出されるだけなのだが、元々がモノクロ映画なのでほとんどギャップを感じることなく見れてしまうのは不思議。
「U-571」
(2000アメリカ、ジョナサン・モストウ監督)
エニグマ暗号器を巡り、米海軍の軍人たちが奪取したUボートを操艦して戦うお話。
自分は実際に鑑賞するまではドイツ海軍のUボートの話だと思い込んでいたので、このストーリーには意表を付かれた。
さて、潜水艦映画の魅力といえば何といっても、密閉された狭い艦内で展開される漢達のドラマというやつだろう。あるいは「眼下の敵」や漫画「沈黙の艦隊」で描かれたような、「切れ者艦長同士の一対一の知恵比べ」が見所になっている作品も多い。
この作品には後者の要素は皆無だが(はっきりいって、ドイツ海軍の軍人たちは単なるやられ役)、前者に関しては充分に堪能させてくれる。
特に、マシュー・マコノヒーの演じる主人公の大尉が歴戦の艦長でも何でもなく、等身大の悩みや不安を抱えた青年士官として描かれているところがいい。
また、危機的な場面に際してやたらと画面の切り替えが加速し、BGMが盛り上げてくれるのもなかなかよく出来ている。言うなれば、「静」の部分と「動」の部分との組み合わせが上手いということだろう。
潜水艦映画にはおなじみの「Uボート」「眼下の敵」「深く静かに潜航せよ」等、素晴らしい先行作品が数多くあり、それらと比べて画期的なほど面白い!とまでは言えないのだが、平均以上の水準にあることは間違いない。
あと、どうでもいいけど、海上戦闘シーンの配色センスが一昔前の海洋映画みたいな感じで懐かしさを感じさせるのであるが、これってわざとやってるの??
「フルメタル・ジャケット」
(1987アメリカ、スタンリー・キューブリック監督)
キューブリック監督のベトナム戦争映画。
前半は海兵隊員の新兵訓練の場面、後半はベトナムの戦場場面という構成。
で、前半の新兵訓練の場面、ここがとにかく凄い。卑猥なスラングを連発するハートマン軍曹のキャラがとにかく強烈で、今でも時折パロディのネタにされているのを見かける(これって絶対に日本語吹き替え版は作れないだろうなぁ・・・)。
後半は、北ベトナム軍とNLF(解放戦線)によるテト攻勢の場面から始まるのだが、他のベトナム戦争映画とは違い、ドキュメンタリータッチで淡々としていて、リアルといえばリアルだけど、退屈といえば退屈。
そんでもって、ラストでミッキーマウス・マーチを歌いながら行軍する海兵隊員達の姿・・・・本来ならギャグとしか思えないシーンだけど、映画の内容が内容だけに笑えない・・・。
ダ
イレクトな反戦映画ではなく、かといってよくある「アメリカ万歳」の戦争映画でも勿論なく、何の意味があるのかよく分からないけど、捉えどころのない面白
さがあって・・・という、いかにもこの監督らしい味に満ちた作品。自分は世間の評価ほど凄いとは思わないけど、まあいろんな意味で印象に残っている作品で
はあります。
「バルジ大作戦」
(1965アメリカ、ケン・アナキン監督)
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第二次大戦における「ドイツ軍最後の反撃」として知られるバルジの戦いをテーマにした作品。 パッケージには載っていないが、ドイツ軍の前線指揮官として登場する、ロバート・ショウの演じるヘスラー大佐が非常に渋くて格好良い。
また、ヘスラーを前に整列した年少の戦車兵達が「パンツァー・リート」を合唱する場面は、戦争映画史に残る屈指の名場面だろう(YouTube等で視聴で
きるので未見の方は是非。ちなみに、自分がこの作品を初めて見たのはTV放送時であったが、そのシーンはカットされていた!)。
米独双方の視点から描かれ、ドイツ軍特殊部隊の暗躍(グライフ作戦)やマルメディの虐殺等も描かれているのであるが、全体的にはバルジの戦いそのものを正面から取り上げた作品ではなく、「史実のバルジの戦いをモチーフにしたオリジナル映画」といった趣となっている。
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惜しむらくは、ラストの戦車戦の場面。元々は雪の中の戦いだったはずが、何故か砂漠のような荒野に場面が変わるのである(撮影がスペインで行われた所為らしい)。戦車戦自体は良くできているだけに、これは残念。
また自分としては、冷徹な歴戦の戦車部隊指揮官として描写されていたヘスラー大佐が、後半から戦争の狂気に取りつかれたような発言を繰り返して従兵に愛想を尽かされ、あっけない最後を遂げるところは「う〜ん」と思ってしまうのだが・・・。
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